第3話 赤い目
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俺は細く息を吐き、自分の指先を見つつ口を開く。
「……見えてるよ。」
自分の分のコーヒーも淹れればよかった。
そうすれば、少しはこの気まずさも紛れたのかもしれない。
俺は一度目を閉じて無理やり思考を切り替えると、改めて貴志へ視線を戻した。
貴志は少しだけ表情を歪めると、「そうですか」と小さく呟く。
それに俺は苦笑した。
「そのことも、俺は気にしてないよ。まあ、大変なことも多いのは確かだけど……俺はほら、"見分け"がつくから。」
そう言ってみせると、貴志は複雑そうな顔をしつつも僅かに肩の力を抜く。
けれどすぐに、思い出したように口を開いた。
「そういえば、その目の色は……?」
これには一瞬キョトンとした。
何のことかと思ったけど、すぐに言わんとすることを察して「ああ」と納得の声を返す。
「カラコン入れてんの。さすがにあの色だけは目立つからさ……。」
妖怪が見えるようになってから、俺の目は赤い。
それは普通の人にもそう見えているようで、物珍しがられるか気味悪がられるのが常だ。
さすがに教職についた以上、万が一にも生徒に避けられるようなことはあっちゃいけないと思い、今は黒のカラコンを入れている。
それに俺自身、あまり赤い目を人に見られたくはない。
俺の返答に貴志は驚いたような顔をすると、どこか安心したような、呆然とした声で言う。
「そっか……そういうものもあるのか……。」
貴志は聡い。
きっと俺が、目の色を気にしていることにも気付いている。
だからこうして色を誤魔化す手段があることに、少なからずホッとしたのだろう。
俺はその様子に、ふっと表情を緩めた。
「便利なもんでしょ?だから本当に、気にしなくて大丈夫。俺はうまくやれてるよ。」
隣に座っていたら、頭でも撫でてやりたかった。
いや、さすがにもうそんな歳ではないか。
俺は自分の膝に手をつくと立ち上がり、部屋の時計にちらりと目をやる。
もうかれこれ30分以上話し込んでいた。
「そろそろ帰った方がいいか。赴任初日に生徒を長時間拘束してたなんて噂が立ったら、色々厄介だし。」
そう言うと、貴志は思い出したように残りのココアを飲み干した。
急かしてしまったようで、少し申し訳ない。
「また話そう、貴志。」
自分の鞄を持った貴志に、俺はそう声をかける。
貴志はふわっと柔らかく笑うと、「はい」と嬉しそうに言った。
律儀に「失礼しました」と言って退出していく彼に、俺はひらりと手を振り見送る。
途端に室内が静かになった。
窓の外から運動部の声が聞こえる。
ちらりとそちらを見下ろすと、花壇の辺りに珍妙な陰が見える。
黒い着物を着ている、一つ目の爺さんと牛頭の人物。
どちらも妖怪だろう。
この町は、妙にあれらが多い気がする。
気のせいだろうか。
そう思いつつカーテンを閉めようとした時、その妖怪たちへ駆け寄る人影があった。
校舎から出てきた貴志だ。
さすがに驚いた。
昔のあの子は、決して自分から妖怪へ関わっていくようなタイプではなかった。
様子を見るに、あの2匹とか仲が良さげにさえ見える。
「……。」
俺は込み上げてきた漠然とした不安感を飲み下し、今度こそ窓のカーテンを閉めた。
「……見えてるよ。」
自分の分のコーヒーも淹れればよかった。
そうすれば、少しはこの気まずさも紛れたのかもしれない。
俺は一度目を閉じて無理やり思考を切り替えると、改めて貴志へ視線を戻した。
貴志は少しだけ表情を歪めると、「そうですか」と小さく呟く。
それに俺は苦笑した。
「そのことも、俺は気にしてないよ。まあ、大変なことも多いのは確かだけど……俺はほら、"見分け"がつくから。」
そう言ってみせると、貴志は複雑そうな顔をしつつも僅かに肩の力を抜く。
けれどすぐに、思い出したように口を開いた。
「そういえば、その目の色は……?」
これには一瞬キョトンとした。
何のことかと思ったけど、すぐに言わんとすることを察して「ああ」と納得の声を返す。
「カラコン入れてんの。さすがにあの色だけは目立つからさ……。」
妖怪が見えるようになってから、俺の目は赤い。
それは普通の人にもそう見えているようで、物珍しがられるか気味悪がられるのが常だ。
さすがに教職についた以上、万が一にも生徒に避けられるようなことはあっちゃいけないと思い、今は黒のカラコンを入れている。
それに俺自身、あまり赤い目を人に見られたくはない。
俺の返答に貴志は驚いたような顔をすると、どこか安心したような、呆然とした声で言う。
「そっか……そういうものもあるのか……。」
貴志は聡い。
きっと俺が、目の色を気にしていることにも気付いている。
だからこうして色を誤魔化す手段があることに、少なからずホッとしたのだろう。
俺はその様子に、ふっと表情を緩めた。
「便利なもんでしょ?だから本当に、気にしなくて大丈夫。俺はうまくやれてるよ。」
隣に座っていたら、頭でも撫でてやりたかった。
いや、さすがにもうそんな歳ではないか。
俺は自分の膝に手をつくと立ち上がり、部屋の時計にちらりと目をやる。
もうかれこれ30分以上話し込んでいた。
「そろそろ帰った方がいいか。赴任初日に生徒を長時間拘束してたなんて噂が立ったら、色々厄介だし。」
そう言うと、貴志は思い出したように残りのココアを飲み干した。
急かしてしまったようで、少し申し訳ない。
「また話そう、貴志。」
自分の鞄を持った貴志に、俺はそう声をかける。
貴志はふわっと柔らかく笑うと、「はい」と嬉しそうに言った。
律儀に「失礼しました」と言って退出していく彼に、俺はひらりと手を振り見送る。
途端に室内が静かになった。
窓の外から運動部の声が聞こえる。
ちらりとそちらを見下ろすと、花壇の辺りに珍妙な陰が見える。
黒い着物を着ている、一つ目の爺さんと牛頭の人物。
どちらも妖怪だろう。
この町は、妙にあれらが多い気がする。
気のせいだろうか。
そう思いつつカーテンを閉めようとした時、その妖怪たちへ駆け寄る人影があった。
校舎から出てきた貴志だ。
さすがに驚いた。
昔のあの子は、決して自分から妖怪へ関わっていくようなタイプではなかった。
様子を見るに、あの2匹とか仲が良さげにさえ見える。
「……。」
俺は込み上げてきた漠然とした不安感を飲み下し、今度こそ窓のカーテンを閉めた。