第2夜〜疑念〜
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警察署にエリーが現れた時、ラビは柄にもなく安堵していた。
初任務でいきなり同行のエクソシストを失うなどという事態は、さすがに勘弁願いたい。
「とりあえず中に入ろうか。……あまり外部に聞かれたくない話なら、資料室とかを人払いして使わせてもらった方がいいだろうし。」
そう言ったエリーに、ラビは少しだけ感心する。
あの短いやり取りだけで、大っぴらには言えない話だと察してくれたようだ。
「今、ジジイとウィルが話つけに行ってる。もうすぐ戻ってくると思うさ。」
そう言ったところで、ちょうど2人が警察署から出てきた。
どうやらうまくまとめてくれたらしい。
ブックマンが頷くのを確認すると、ラビはエリーを伴って署内へと足を踏み入れた。
「なるほど、それは確かにあの場では言えない話だね。」
ラビの説明に、エリーは納得の声を上げる。
「神父が怪しいという証言があった」などと、当の神父がいる場所で話せるはずがない。
通された資料室で、ブックマンを含めた3人は資料に目を通していた。
ウィルは念のためにと、ドアの外で見張りをしてくれている。
事件資料をペラペラと捲りつつ、エリーは何やら考えながら口を開いた。
「……その証言、女の子がしてくれたんだっけ?」
「ああ、10歳そこらくらいの。」
「名前は聞いた?」
「いや?」
何故そんなことを聞くのかと、ラビが暗に問い返す。
するとエリーは、ふっと目をすがめて、コツリと指先で机を叩く。
「ひとつ。その子は何故、神父と男性が教会へ入るところを見ていたの?」
「は?」
これにはラビが眉を寄せる。
何が言いたいのかわからない。
代わりに口を開いたのは、何かに気づいたらしいブックマンだ。
「……"その場にいた"ということか。」
「そう、女の子はその現場をその場で見ていた。」
「それがなんさ?」
「ふたつ。では何故、女の子はそんな場所にいたの?」
無視されたようで腹が立つ。
それを隠しもせずに顔を歪めると、エリーがクスリと笑った。
「ごめんごめん、意地悪したいわけじゃないよ。でもよく考えてごらん?女の子は『いつ』『どこで』その現場を見たんだと思う?」
そう言われて、ラビはムスッとしながらも思考を回す。
『いつ』『どこで』。
そんなのはあの少女が言っていた。
「夜中に教会へ入るところを見た」と。
「……あ。」
「わかった?」
「……なんでガキ1人で、夜中の教会にいたのか……ってことさ?」
「正解。」
言って、エリーはラビの頭をくしゃりと撫でる。
完全に子供扱いをされたことにまた複雑な気持ちになるが、ここで変に反抗するのも余計に子供っぽくなってしまうと思い、ぐっと堪える。
ことの次第を理解したらしいブックマンは、手にしていた資料を机に置きつつため息を吐いた。
「『夜中不自然に出歩いていた少女』と『その少女の証言に上がった神父』……どちらが信用に足るかということか。」
「現状で言えば『どちらも怪しい』が正解でしょうけどね。ただ……。」
と、不意にエリーが立ち上がる。
そして、勝手に棚の資料を漁り始めた。
さすがにそれはどうかと思うが、止める言葉を見つける前に、エリーは一つの資料を探し当ててきた。
「これはおれの仮説だから無視してくれてもいい。けど、ひとつの可能性として、心構えだけしておいて。」
そうして彼が語ったのは、確かな"悲劇"の話だった。