第1夜〜ロベーヌ村にて〜
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ラビはつまらなそうに、周囲へ目をやりながら歩いていた。
エリーの言わんとすることはわかるが、それでもこの見回りに大した意味があるとは思えない。
イノセンスによる奇怪が起きているというのであれば調査の意義はあるが、アクマが潜んでいるだけだというのなら収穫などはなからゼロだということだ。
ラビは思わず出そうになった欠伸を噛み殺し、それから隣へ目を向けた。
そこには、ウィルと話しながら歩くブックマンの姿がある。
「……と、以上が、この村で起きた、アクマによると思われる失踪案件の全容ですね。」
「ふむ。すまんな、わざわざ説明をさせて。」
「いえ、エクソシスト様のサポートが、我々の仕事ですから。」
そう言ってウィルが笑顔を見せる。
何かあった時の連絡係兼2人のサポート役として同行してくれているわけだが、些か呑気過ぎやしないか。
それだけ「エクソシスト」という存在を信頼しきっているのだろうか。
だとしたらおめでたいことだ。
こちらは実戦経験もない新人エクソシスト。
まともに戦える保証などどこにもないのに。
そう思いつつ、ラビは静かに息を吐く。
と、その時。
「あの……。」
横から小さな声がかかった。
見ると、そこには10歳前後ほどの少女が立っている。
ラビはすぐにへらりと笑って見せると、少女へ問い返す。
「なんさ?」
少女は眉を下げて、困ったような顔をする。
仕方なく、ラビは屈んで目線を合わせた。
「オレらになんか用事さ?」
明らかに他所者であるとわかる自分たちに、わざわざ声をかけてきたのだ。
何か余程伝えたいことでもあるのだろう。
邪険にするのは、さすがに良心が痛む。
数秒の沈黙の後に、少女はようやくおずおずと口を開いた。
「あの……お、お兄さんたちは、いなくなっちゃった人たちを探してるの?」
少女の問いに、ラビは僅かに目を細める。
ブックマンとウィルが、こんな往来で堂々と任務の話をしていたのだ。
聞かれてしまっていたのだろう。
下手に誤魔化すのも不自然だろうと思い、ラビはまたへらりと笑って返す。
「おうさ、オレらはこの事件を解決するためにきたんだぜ。」
ラビの言葉に、少女はまた困ったような顔で黙り込む。
けれど、意を決したようにラビの耳へと顔を寄せてきた。
「あのね、内緒だよ。あのね……わたしね、見たの。……神父さまが、夜中にパン屋のおじさんと教会に入るところ。」
ピクッと、指が強張る。
任務資料を思い返す。
確か1週間前に行方不明になった中年の男は、パン屋を営んでいたはずだ。
「パン屋のおじさんね、その日からいなくなっちゃったの……。でも、神父さまに聞いても何も知らないって言うのよ。」
教団のサポーターであるという神父を疑いたくはないが、サポーターとて人間だ。
なんの弾みで変わってしまうかわからない。
(神父がアクマ……?いや、伯爵のブローカーって線もあるか……。)
ラビは思考を回しつつ、また少女へと笑いかける。
「教えてくれてありがとさ。けど、危ねえから夜に出歩いたらダメだぜ?」
そう言うと、少女は小さく頷いて、それから走って街中へと消えてしまった。
それを見送ったラビは、ブックマンたちを振り返る。
視線で、どうするのかと問い掛ければ、ブックマンはウィルへ目を向けた。
「すまんが、イエーガー殿に連絡を。」
「承知致しました。」
今、教会ではエリーと神父が二人きりの状態だ。
エリーが強いというのは聞いているが、だとしてもこの状況はよろしくない。
言い知れぬ緊張感の中で、ウィルがエリーへと通信を繋いだ。