第1夜〜ロベーヌ村にて〜
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今回の任務地は、ドイツの田舎村・ロベーヌ。
行方不明者が出始めたのが2週間前。
最初は1,2日に1人だったのが、次第に2人3人と増えていき、ついに合計22人が失踪した。
失踪者は皆衣類だけを残して跡形もなく消えており、人によっては残された衣類に何かで貫かれたような大きな穴が空いていたらしい。
3日前に、この村に出入りしている教団のサポーターから連絡があり、これ以上の被害拡大を防ぐためにおれたちが派遣された。
ことの経緯はそんなところだ。
「まずは、今回報告をくれたサポーターのところへ行ってみましょうか。」
ラビとブックマンにそう言って、おれはウィルさんへ案内を頼む。
もしかしたら事前資料以降にも、新たに被害が出ているかもしれない。
まずは適切な状況把握が必要だろう。
それに話によれば、そのサポーターというのは村外れの教会で神父をしているそうだ。
下手に警察や村民に話を聞くより、教会という不特定多数の出入りがあり、かつ信頼を得やすい神父という肩書の人物に話を聞く方が、情報収集は捗るだろう。
そう当たりをつけて、おれたちは村の教会へと足を向けた。
その教会は、少し大きな民家程度の、教会にしてはこぢんまりとした建物だった。
学校の教室より少し手狭な大聖堂に、ステンドグラスの淡い色が光を落としている。
「ようこそおいでくださいました、エクソシスト様方。私は神父のリオネル、教団のサポーターでございます。」
そんな小さな教会でおれたちを出迎えてくれたのは、アッシュグレーの髪の神父。
50代くらいだろうか、物腰柔らかな初老の男性だ。
リオネルと名乗った男性は、丁寧に一礼してくれる。
「おれは、エクソシストのエリー ・T・イエーガーです。」
「オレはラビさ。」
「ブックマンだ、よろしく頼む。」
おれたちがそれぞれ名乗ると、リオネルさんは「よろしくお願い致します」ともう一度頭を下げてくれる。
それから、大聖堂の長椅子の最前列へ促された。
「早速ですが、皆様にご報告させていただきます。昨夜、新たに4人の行方不明者が出ました。皆衣服だけ残し消えているため、これらも恐らくアクマによるものかと。」
おれたちが椅子に座るなり、リオネルさんは神妙な顔でそう言った。
やっぱり、事前資料よりさらに犠牲者が出ていたか……。
「ってことは、被害者は26人ってことさ?」
「ええ、把握している限りでは。」
それは暗に、まだ消えたと気付かれていない人間がいる可能性がある、ということを言いたいのだろう。
もしかしたら、すぐさまアクマに成り代わられて、今も村に潜んでいる被害者だっているのかもしれない。
(まあ、だとしたらそれは被害者ではなく、すでに敵方の兵器なわけだけども……。)
内心でそう思いながら、思考を巡らせる。
被害者が失踪しているのはいずれも夜間。
ほぼ毎晩被害が出ているのだから、今夜もアクマは動くと見ていいだろう。
相当調子に乗っている。
目の前にエクソシストが現れて、何もせず逃げるということはないはずだ。
ならば、やることはひとつ。
「……よし、昼のうちに村の見回りをしておきましょう。おれは少し調べたいことがあるので、ラビとブックマンで先に村を見ていってください。」
「いいけど、見て回ったってアクマは見つけらんねえんだろ?」
訝しげな顔をするラビに、おれは頷く。
「ああ、だから目的はアクマを見つけることじゃない。……これはパフォーマンスだ。」
おれの言葉に、ラビはさらに顔を歪める。
それにおれは苦笑した。
「アクマと人間に、それぞれパフォーマンスをするんだよ。アクマに対しては、『お前らの敵が来たぞ』って知らしめることで、向こうから現れてくれるように差し向ける。人間に対しては、『おれたちはちゃんと調査してますよ』ってポーズを取って安心させる。地味な作業だけど、意外と大事だよ。」
「そーいうもんかねー。」
まだどこか納得していない様子のラビに、おれはクスクスと笑う。
心なしか、原作軸より幼く感じる。
実際16歳という、まだ少年と言ってもいいような年齢なのだから、幼く感じても当然なのだけれど。
一方ブックマンはというと、そういった根回しの重要性は心得ているようだ。
すぐに了承を返してくれる。
「では、我々は村の東側から見て行こう。イエーガー殿は、西側からでよろしいか?」
「わかりました。では、夕刻には教会で落ち合うようにしましょう。必ず日暮れ前に戻ってきてくださいね。ウィルさんは二人に同行して、サポートをお願いします。」
「心得た。」
「承知致しました。」
ラビも頷いたのを確認して、おれは3人を送り出した。
おれとリオネルさんが残された教会で、おれはふっと表情を引き締める。
「……さて、では少し、お聞きしたいことがあります。」
「なんでしょうか。」
リオネルさんも表情を引き締めると、優しげな目元をきゅっと細める。
「この教会、裏手に墓地が見えたので、おそらく葬儀も行っているんですよね?」
「ええ、私が埋葬を。」
「なら話が早い。……"2週間ほど前に"死んだ人間と、その人の葬儀に参列した人を教えてください。」