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淡い、淡い、微睡の中。
もうきっと、思い出さないでいた方が幸せなこと。
けれど決して、忘れることは許されない。
あの痛みも、苦しみも、絶望も全て。
───わかってる。
逃やしない。
逃たところで、他に行き場などないのだから。
* * *
ゴツっと、頭に軽い衝撃。
ふわついていた意識が覚醒する。
断続的に感じる振動に、そういえば汽車に乗っていたんだと思い出す。
任務を終えて、そのまま次の任務地へ直行しているのだから疲れが出たのだろう。
ファインダーがいるから目的地に着いたら起こしてもらえるという怠慢な思考も、正直あった。
どのくらい寝ていたのかはわからないが、少なくとも目的の駅を乗り過ごしたということはないだろう。
一度伸びをして眠気を飛ばす。
ポキポキと背骨が鳴る音が聞こえて、若干顔を引き攣らせる。
痛くはないが、いい気はしない……。
まあ目が覚めたから良しとしよう。
そう思ったところで、ファインダーがやってきた。
「ああ、お目覚めでしたか、ちょうど良かった。そろそろ目的地に到着致します、ご準備を。」
どうやら本当にタイミングが良かったらしい。
目的の駅の直前で目を覚ますというのは、我々日本人が持つ特殊能力のひとつだと思う。
それが"こちらの世界"でも健在である事実に、人知れず苦笑が溢れた。
そう、おれはもともと2020年代の日本に住んでいた。
社会人3年目にして、ブラック企業勤めにより過労死。
いや過労死というか、残業続きで1週間ぶりに家に帰ろうと終電を待っていたら、疲労でふらつきうっかり線路に落ちたのだ。
落ちたってのは覚えているけどその後の記憶がないから、たぶんそのまま線路で寝てたんだろう。
で、終電間近で他にほとんど人がいなかったせいで誰も電車を止めてくれず……ってところだと思う。
まあ死に際を覚えていないのは幸いだ。
ただ問題なのは、気が付いたら異世界転生を果たしていたということ。
しかもどこぞの貴族が使用人との間に設けた子供だったらしく、なかなか面倒な幼少期を送った。
けれど、これも幸いだったのだが、この世界はおれの知っている世界だった。
前世でのおれが10年以上追い続けていた漫画、「D.Gray-man」。
ここは、そのDグレの世界だった。
それを知った経緯だなんだは長くなるので割愛するが、結論を言うなら、おれは今エクソシストとして黒の教団に属している。
それもそこそこ長期間で、リナリーが教団へ連れて来られたのと同時期からおれも教団にいる。
かれこれ7,8年くらいか。
けれど、リナリーは今14歳だから、まだ本編には程遠い。
あと2年何事もなく生きられれば、おれはいよいよDグレの本編に関わっていくことになるわけだ。
正直こっちに転生してきてだいぶ年月が経つから、Dグレの記憶も若干あやふやではある。
それでも大まかな流れやキャラクターのことは覚えているし、本筋を邪魔しない程度にみんなのサポートにでも回れればいいかなと思っている。
さて、閑話休題。
今は目の前の任務に集中しよう。
今回の任務はアクマの討伐がメイン。
ファインダーによる事前調査で、イノセンスは恐らく関係ないとの結論が出ている。
ただアクマによるものと思われる被害が多く、状況から見て近隣の街に2桁以上のアクマが潜んでいると見て間違いないそうだ。
それらをできる限り見つけ出し根絶やしにする。
単純だけど面倒な任務だ。
けど、そう悪い任務ではないと思っている。
この任務には同行するエクソシストがいるのだ。
コムイさんは「新人のエクソシスト」とだけ言っていたけど、本編の2年前に入団してきたということは恐らく"彼ら"だろう。
「ああ、どうやら先に着いていらしたようですね。」
と、ファインダーの言葉におれは顔を上げる。
駅に降り立ちホームの端を見れば、そこには見慣れた黒いコートが2人。
予想通り、小柄な老人と赤髪の青年が並んでいた。
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