創作のおはなし

ラノベ『のうりん』のおかげで農業系Webメディアの編集長になった

2024/01/27 10:03
4〜5年ほど前の記事の転載です。

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ご存知のとおり『のうりん』は農業をテーマとしたラノベです。作者は白鳥士郎先生。自分が好きなラノベ作家さんの一人です。

実は今、ある農業系のメディアに編集長として携わっているのですが、この仕事を頂けるきっかけとなったのが、この『のうりん』でした。

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事の発端は、2018年の春先。ニート後に再就職した会社を1年で辞め、フリーライターとしてリスタートしたときのこと。

ニート時代にお仕事でご一緒したフリーランスのテレビディレクターの方とお会いした時、TPPの話題になりました。『のうりん』の中では金上嬢がいろいろ説明してくれていましたね。日本はなぜ大量の食料を海外から輸入する必要があるのか、など。

当時、自分は『のうりん』の影響で、自分なりに農業についていろいろ調べていたので、TPPや業界内で話題となっているEPA(EUとの経済連携協定。今月1日に発効されました)について、多少なり知っていました。おかげでなんとか話についていくことができました。

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本題に戻ります。
後日、このフリーディレクターの方から一通のメールを頂きました。

「農業系メディアの編集長を探してる知人がいて、会ってやってほしい」

どうやら過日のTPP談義が記憶に残っていたらしく、知人の方に相談されたとき「ちょうど暇になった農業に詳しい知り合いがいる」と話をされたそうです。

数日後、その知人の方とカフェでお会いして、いろいろ話をしました。
ですが、そこで「自分は農業に詳しいです」というアピールしたかといいますと、もちろんそれはありません。仕事にできるほど、詳しくはなかったので。
話したのは、以下のような感じのこと。

相手「農業に詳しいと伺いまして」
筆者「いえ。そんなことないです」
相手「またまた」
筆者「農業がテーマの『のうりん』というライトノベルが好きなだけでして」
相手「……」(何を言っているのか分からないという顔)

このような感じでした。

確かに『のうりん』の影響で、大量の関連書籍や雑誌を買い漁り、農業について自分なりにいろいろ調べたことはあります。

たとえば、こちらの段ボール2箱。

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中身はすべて、日本食肉研究会という団体が発行している『食肉の科学』という雑誌です。

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このとき購入できるだけのバックナンバーをすべて買いました。おそらく40冊ほど。そこまで買うつもりはなかったのですが、古いものは1冊50円と割安だったので、ついつい衝動買いしてしまいました。
ほかにも、農業関係のエッセイや学術書なども、結構な冊数を買いました。

また、博物館や牧場、食肉処理場の見学なども色々としました。

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もっとも、自分は農家の出ではないですし、家系に農業関係者がいるわけでもないですし、農学部や農業大学の出身でもありません。ただの下手の横好きです。そうした事情から「サイトの編集長はさすがに厳しいです」と、正直にお伝えしました。

ですが、なぜかそれが先方に刺さってしまいました。

後日「改めて、ぜひお願いしたく」とのメールを頂きました。

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どのような人と一緒に仕事をしたいか、その基準は人それぞれだと思います。

自分の話で恐縮ですが、ニート時代、あるクリエイター系クラウドソーシングを手がける某社の代表から仕事の話を頂いたときのこと。もっと良いライターをたくさん知っていると思うので、なぜニートの自分に頼んだんですかと尋ねました。
代表は、こう答えました。

「同じライターでも、仕事をするなら面白いライターと一緒にしたい」

自分が面白いかどうかは別としまして、その方にとっては、28でラノベ作家をめざすためにニートになった人間は、どうやら面白く映ったようでした。

農業系メディアの話で出会った知人の方も同様でした。彼に最も刺さったのは、上の段ボール箱の一件でした。
いくら農業に興味が湧いたといっても、いきなり業界誌を40冊もまとめ買いする人は、それほどいないのでしょう。その点がどうやら面白かったようです。

こちらの仕事、最終的には引き受けました。ニート時代に失敗したWebメディアのリベンジをいつかしたいとも思っていたので、良いチャンスでもありました。

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個人的には、まさか『のうりん』にハマったことが仕事につながるとは思いもしませんでした。

ですが、振り返ってみますと、アニメやゲーム、ラノベにハマった経験、またラノベ作家めざしてニートやっていた経験が仕事のチャンスにつながった(つながりかけた)ことは、意外と多かったです。

たとえば、

・ニート時代にwebメディアを一緒にやっていた会社が、実はアニメ系メディア、ゲーム系メディアも持っており、そちらの編集者さんから記事を書かないかと打診を頂いた(厳しそうでしたのでお断り)
・たまたま知り合った経営者が大のアニメ好きで、その方からアニメDJイベントの運営協力の打診を頂いた
・『のうりん』がきっかけで、農業系webメディアの編集長の打診を頂いた
・先のフリーディレクターの方から「某局で声優をテーマにしたTV番組をつくりたい。企画に協力してほしい」と打診を頂いた(残念ながら形にはならず)
・某アミューズメント系企業から、e-Sportsに関する新規事業を立ち上げたいから調査に協力してほしいと頂いたを頂いた
・アニメ大好きな某飲食店の店長さんから「おしゃれオタク向けのカフェを作りたいから協力してほしい」とお話を頂き、フィギュアの原型師探しなどに協力した
・大学で授業することになった

今すぐ思い出せる範囲だけでも、このくらいありました。

もっとも、大半が形にはならず、ほかも大したお金にはなっていません。自分自身「面白そうだから」で付き合ってきました。趣味の延長のイメージですね。

ただ、改めて思うのは、
「何か一つ自分が熱くなれる(なった)ものを持っている人は、それをきっかけに意外と仕事のチャンスが生まれるのではないか」
ということです。

ニートになる前は、そのようなことは思ってもいなかったですし、実感もありませんでした。ですが、それは単に自分が何も持っていなかったからではないか、という気がします。"類は友を呼ぶ”ではないですが、世の中は意外とそのようなものなのかなと、最近は思います。

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