白船一番艦の受難

 三人がいたのはワイアードから西へおよそ二〇海里の海域。
 天候は快晴。風向は北東。海面下に暗礁や怪しい影はなく、水平線まで綺麗に見渡せるほど見晴らしも良い。
 ……だからこそ、見張りもすぐ異変に気づいた。

「シルさん! 右舷前方、距離二海里に船影一隻! 小舟だ!」

 メインマストの頂点に立つ見張りが叫ぶ。

「小舟?」

 報告された方角へ怪訝そうに細めた両目を向けるシルヴィア。リオもすぐに自分の望遠鏡でそちらを確認した。

「……確かに小舟だね。乗ってるのは……こども?」
「こんなところにこどもが小舟一隻で?」

 シルヴィアはリオから望遠鏡を借りる。
 覗いた先に見えたのは、たしかに小舟に乗った少女だった。のろのろと東に向かって走っている。その櫂の漕ぎ方は初めて舟に乗ったこどものようにぎこちなく、見る者に不安しか抱かせないほど拙い。それでいったいどうやってこんな遠洋まで出てきたのだろうか。

「ワイアードの近海で遊んでて、いつの間にか流されたとか? それなら誰か気づいて助けに行きそうだけど」
「ええ。それに漕いでいる方向が逆ですね。戻るなら東に向かうはずです」
「だね。となると……夜中のうちに一人で家出とか? そうなると穏やかな話じゃ済まなそうだけど……どうする?」
「事情は分かりませんが、さすがに見過ごせません。いったんワイアードまで連れて行きましょう。スターボード! 小舟に向かってください!」

 一番艦は右に転舵。針路を南南東に向け、正面やや左舷に小舟を見て走る。七番艦と八番艦もそれぞれ続いた。
 ―――と。

「シルさん! 小舟の後ろ一海里の海面下になにかいる! 複数の影がかなりのスピードで泳いでる!」

 小舟との距離が一海里ほどまで詰まったとき、再び見張りが声を張り上げた。
 報告された海面付近を視認するシルヴィア。
 そこには確かに幾筋もの黒く細い影が見えた。海面下を音もなく高速で小舟めがけて接近している。
 シルヴィアの表情が薄っすらと曇る。

「海獣かい?」
「……ええ。おそらくサハギンですね。数は二〇くらいでしょうか」

 海面に映った相手の影だけで、その正体とおよその数を看破するシルヴィア。暗中千里を見通すとまで評される驚異的な神眼は、船乗りとしての彼女の一つの武器だ。四方一海里くらいなら裸眼で大体のものを把握できる。

「サハギンが二〇……けっこう多いね」

 ―――サハギン。俗に半魚人とも呼ばれる小型の海獣だ。海獣のなかでも高い知性を持ち、自前の三叉槍を武器として集団で戦略的に相手を襲撃する。人類の祖先は海から陸に上がったと言われているが、学者のなかにはサハギンがその成り損ないだと考えている者も多い。
 やがて小舟との距離が五〇〇メートルを切る。サハギンと思しき群れの影は小舟の八〇〇メートルほど後方を泳いでいた。

「―――交戦準備! 操船要員は最低限にして、手の空いたものはディノマイトを用意してください!」

 シルヴィアの指示でクルーたちが一斉に動き出す。

「あっちの二隻への指示は?」
「なにも言わなくても大丈夫ですよ。それが《白船》の艦長です。―――舵、ポート!」

 左に転舵して南東へ向かう一番艦。サハギンと小舟の間に割って入る針路を取る。
 それを見たアヴリルの八番艦も同様に転舵して一番艦につづく。一方、カイルの七番艦の針路はそのまま。小舟の前へ回りこむように、変わらず南へ向かった。
 針路を南東に切り替えたことで一番艦と八番艦の船足が徐々に上がり、小舟との距離が見る見る詰まる。帆船は通常、ほぼ真横から風を受ける形が最も美しく、そして速い。
 そのころ甲板上では交戦の準備が完了していた。操船要員以外のクルーたちが左舷に並び、その足下には木製の桶となにやら筒状の物体が詰まった箱が置かれている。
 小舟は目前に迫っていた。その距離、右舷前方およそ七〇。対するサハギンの群れは一番艦から見て左舷前方。距離、およそ一五〇。

「スターボード! スパンカーブーム、ホールアウト!」

 シルヴィアが動いた。針路を真南に向け、小舟とサハギンの間に割って入る針路を取る。
 それが戦端となった。
 まず一番艦の転舵を見たアヴリルが、八番艦の速力をわざと落とす。ほぼ同時にサハギンの一団の速度が上がった。それまでの忍び寄るような泳ぎから一転、敵に発見されることも厭わず両脚で海面を叩き、飛沫を上げながら加速する。
 一番艦とサハギンの距離が詰まる。
 八〇、七〇、六〇……。
 五〇を切ったとき、ついにサハギンが海面から姿を見せた。水色の全身は生半な武器なら容易に退ける強固な魚鱗に覆われており、魚類特有の背びれが頭部から臀部あたりまで続いでいる。宝石のように透き通った目は虫のように大きく、いまは鋭利に歪んでいた。それは怒りの顕れか、あるいはべつのなにかか。
 一番艦とサハギン、そして小舟が一直線に並んだ。

「ハードスターボード! 投擲開始!」

 一番艦は大きく右に転舵。同時に左舷で待機していたクルーたちが、手にしていた筒状の物体を一斉に海へ向かって放り投げた。その数、およそ三〇。綺麗な弧を描いた筒状の物体は、そのままサハギンの正面の海面めがけて落下し……、
 ―――爆発した。

『ゲギャャャャャャャアァ!』

 直後、爆炎の壁につっこんだサハギンたちの水っぽい悲鳴が海上に響く。寸前に進路を変えたり海中に潜ったりして直撃を躱したものもいたが、何頭かの背びれに火炎が燃え移り、海水で必至に消そうと藻掻いている。
 ―――ディノマイト。その正体は、カロネード砲やカノンの構想段階でミネルヴァが開発した投擲用小型火薬兵器だ。硝石含有率の高い火薬を筒に詰めた爆弾で、導火線に火を点けて敵に投げつけ、対象を破壊する。ランティスの船のなかで唯一、砲撃兵器を持たない《白船》の主力兵器だ。
 サハギンに対抗する場合、通常はカノンによる遠距離砲撃で制圧する。連中の基本戦略は、集団で船に切りこみ、各個撃破するのが基本のため、接近を許してはいけないからだ。接近を許して乱戦になれば、ただの白兵戦になるため、操船や砲撃の練度は勝敗に関係なくなる。つまり、帆船の利は完全に失われる。帆船が帆船としての利を最大限に活かして戦う上で、接近戦・乱戦は最たる下策だ。
 ディノマイトの急襲で混乱したサハギンたちは、立ちこめる煙幕に沿って北と南へ逃げるように分かれた。その数、北に一〇、南に六。三〇発で撃破は四と少ない戦果だが、そこは重要ではない。大切なのはサハギンたちを近づけさせないよう、常に弾幕を絶やさないことだ。
 そして、それはもちろん、アヴリルも分かっている。

「やれやれー!」

 戦場に相応しくない喝采めいた号令が空に響く。それを合図に、八番館が北へ逃げた一〇頭のサハギンめがけて、ディノマイトを放った。一番艦の先制攻撃で混乱していたところへの第二撃。躱せるはずもなく、大半のサハギンが爆炎に包まれた。
 先刻、八番艦がわざと速度を落としたのは、これが理由だった。まず一番艦が先手を打ってサハギンをディノマイトで攻撃、彼らの統率を乱し、分断したところを追撃するためだ。数枚とはいえ、フォアマストに巨大な横帆を張っている八番館は、ほぼ正横から風を受けて走る場合、一番艦よりも若干だが速い。敢えて船足を削らなければ、あっさりと追いついてしまい、連続攻撃が仕掛けられない。
 ディノマイトは手軽に使えて威力も申し分ない強力な兵器だが、一度でも見せてしまうと対処がしやすいという難点がある。大抵の海獣には不利に働かないため大した難点ではないのだが、相手が知性の高いサハギンのような海獣の場合は別だ。仮に逃がした場合、対策される危険がある。
 そのため、ディノマイトを使ったサハギン戦の鉄則は速攻・追撃・完遂だ。最初の一撃で相手が混乱しているうちに次々と投下して速攻で勝負をつける。逃走を図る相手がいれば、これを追撃して沈める。一頭たりとも逃がしてはならない。
 もっとも、その程度の基本戦略をしくじる《白船》ではない。

「ハードスターボード! 開き変え! 針路三一〇度!」

 シルヴィアは一番艦を針路を南西から北西へ転舵。帆の開きを左舷から右舷へ切り替える。風を受ける方向が左舷から右舷に変わるからだ。
 同時に右舷へ移動した投擲要員が第二撃を投下。混乱で浮き足立っている南のサハギンたちに容赦なく業火を放りこむ。海面を震わすほどの爆音が間断なく轟き、もはや数の少ないサハギンの悲鳴は完全に掻き消されていた。
 それでも殲滅には届かなかった。爆煙のなかから三頭のサハギンが抜け出てきたのだ。

「ハードポート! 南下してから裏へ回ります!」

 一番艦は再び帆の開きを変えてから南へ向かう。そして少し走ってから左へ転舵。残った三頭のサハギンを北に見て、裏へ回りこむように東へ走る。サハギンたちもすぐに一番艦の動きに気づき、南に向かって泳ぎ始めた。だが、二度の爆撃で弱っているのか、その速力はもはや見る影もない。

「タッキング!」

 三頭を左舷後方に見ながら、シルヴィアは針路を北西へ向け、風上へ切り上がる。
 タッキングは、風を切るように蛇行しながら風上へ切り上がる操船法だ。帆船は風を正面から受けては走れないため、風上へ向かう場合、このような工夫が必要となる。
 だが、タッキングはその性質上、必ず風を正面から受ける瞬間がある。そのため多少なりとも速力は落ちるし、未熟な船がやると帆が裏を打ち、完全に止まってしまう危険性が高い。そのため個々人の高い練度と高度なチームワークが必要となる。
 だが、一番艦のタッキングは驚くほど速く、速力もほとんど削られていない。その一度の転舵だけでも超一流だと分かる、それほどに見事なタッキングだった。
 一番艦はそのまま北西へ走る。そして、そこには八番艦の攻勢で六頭まで数を減らしたサハギンの一団がいた。
 左舷に移動していた投擲部隊は三たび、サハギンに向かってディノマイトを放る。同時に、八番艦の右舷からも大量のディノマイトが宙を舞った。六頭のサハギンは、左右から降り注ぐ総数六〇を超えるディノマイトの爆炎に呑まれ、断末魔を上げることも許されなかった。
 シルヴィアが一番艦に寄ってきた三頭を敢えて無視して東へ向かった狙いは、この六頭の追撃だった。万一、八番が仕留め切れなかったサハギンが出た場合、彼らが逃亡を図る可能性がある。その場合、逃げるのは当然、道の開けた東だ。この逃走路を塞ぐために、一番艦を六頭の裏へ回したのだ。
 だが、その代償は、残った三頭のサハギンの自由だ。
 そして案の定、勝ち目がないと見たのか、連中は開けた南に向かって逃走を図ろうとした。
 ―――しかし、それを許すほど《白船》は甘くはない。
 その進路の先を突如、別の船が横切った。
 七番艦だ。
 小舟の安全を確保したカイルは、そのまま七番艦を東へ向けた。そして戦況を正確に見極め、見事に三頭の逃走を阻んでみせたのだ。

(相変わらず気が利きますね)

 事前に一切の作戦共有がないにも関わらず、わずかな迷いも遅れもない完璧な連携に、シルヴィアの頬が満足そうに緩んだ。
 七番艦から放られたディノマイトの壁を前に、南への逃走を封じされた三頭のサハギン。うち二頭は逃走を焦ったのか、その爆炎に自ら呑まれ、そのまま海に沈んだ。最後の一頭は咄嗟に反転して難を逃れたが、その目の前には事前に行く手を塞いだ一番艦が迫っていた。
 もはや逃げることも叶わない……そう悟り、吹っ切れたのか、最後のサハギンは怨嗟の塊のような気色悪い叫びを上げながら手にした三叉槍を放り投げた。―――狙いはシルヴィアだ。
 だが、その槍は、彼女に届く前に斬り落とされて甲板に転がった。

「ふん。甘いんだよ」

 傍に控えるリオが、その長剣で斬り落としたのだ。

「ありがとうございます」
「べつに必要なかったくせに」
「ふふ。素直じゃないですね」
「どっちが」

 わざとらしく鼻を鳴らしながら、真っ二つになった槍の残骸を拾い、海に投げ捨てるリオ。
 一矢報いることもできなかったサハギンは、それでも必至に逃げようと西へ向きを変える。
 だが、その先にはさらなる地獄が待ち受けていた。

「とどめだとどめだー!」

 八番艦が待ち受けていたのだ。その甲板上では、アヴリルがぴょんぴょん飛び跳ねながら、嬉々とした笑顔でクルーたちに攻撃を指示している。それに応じて、たった一頭のサハギンに対して、実に二〇発を超えるディノマイトが放り投げられた。
 当然、逃げることなどできない。最後まで抵抗していたサハギンは、ついにその身を豪炎に焼かれ、海に散った。

(……あの好戦的な性格だけは、なんとかならないでしょうか)

 そんな最後の一幕を見ながら、シルヴィアは渋い表情を浮かべていた。理由はもちろん八番艦の最後の一撃、明らかに無駄使いとしか思えない二〇発のディノマイトだ。
 アヴリルはその愛らしい外見や歳相応の幼い振る舞いからは想像もできないほど好戦的だ。また、その小柄で細い体躯のどこに宿っているのかと驚愕するほどの膂力も秘めている。ランティスで彼女に腕相撲で勝てたのは、彼女以上の人外の怪力を誇るダグラスとライエの二人だけだ。ラムザなどは一秒もたずにその腕をへし折られた苦い過去がある。
 そんな彼女だからこそ、いまのように効率や定石より派手さを優先することもあれば、相手の船に強者がいると分かると自ら戦陣に踊り出てしまうようなところがある。だが、クルーの命を預かる艦長はそれではいけない。艦長が命を落とせば、それだけでクルーの生存確率は格段に下がるからだ。

「……まあ、それは後にしましょう。―――舵、ポート! 小舟に寄せてください!」

 アヴリルへの苦言はいったん飲みこみ、シルヴィアは小舟に向かう。二隻も続いた。
 近づくと、乗っている少女の姿が鮮明になってきた。まだ一〇に届くかどうかというほど幼い少女だ。群青色の長く綺麗な髪に、陶器のように白い肌。身にまとっているのは胸元を覆う布と腰布だけで、それも長い航海を経たかのようにボロボロだ。
 三隻は船を止めて、海面にボートを下ろす。そして三人はそれぞれ漕ぎ手を二人だけ伴い、少女の小舟へと近づいた。
 だが、それを見た少女は怯えたようにボートの先端まで下がり縮こまってしまう。身を守るようにぎゅっと両膝を抱え、亀のように動かなくなった。

「ああ、大丈夫ですよ。いじめたりしませんから」

 笑顔を見せて警戒を解こうとするシルヴィア。
 だが、少女の顔は晴れない。その体をいっそう小さく丸め、体を横に向けてしまった。

「え、えっと……あなたはワイアードから流されてきたんですよね? 私たちはこれからワイアードへ向かうので、お連れしようかと……一人では危ないですし……」
「……」
「……」

 まるで微動だにしない少女。

(……わ、私、そんなに怖いですか?)

 その徹底した拒絶の姿勢に、シルヴィアは少しばかり悲しくなってきた。堪らずに項垂れて溜め息を零す。

「ちょっとあんた! シルヴィアさまに向かってなに失礼な態度とってんのさ! シルヴィアさまにいじめられるなんて、みんなやって欲しくてやって欲しくて、いま親衛隊でもアイデアなくて大変なんだからね!」

 そこへ口を挟んできたのは、怒り心頭のアヴリルだ。しかし、その言い分は大きく的を外している。というか、そもそもまるで違う的に向かって言葉を投げていた。
 だが、アヴリルの意味不明な怒りを聴いたシルヴィアは、首を痛めそうなほどの速度で彼女のほうを振り向いた。その瞳は困惑に揺れ、現実を否定するように何度も瞬いている。
 いったいこの子はなにを言っているのか、と。

「あ、あの、アヴリル……親衛隊っていったい……」
「……あ」

 怒りで我を忘れたが故の失言だったのか、シルヴィアの追及にアヴリルの顔面が見る見る蒼白に染まった。そして「……お、おさきですー!」と漕ぎ手の尻を叩いて、一目散に自船へ戻っていく。

「……密かに運営されてるお前の親衛隊があるんだよ。もちろん立ち上げたのはあいつでな。そこでお前に怒られたい罵られたいっていう一部の妙な連中が、お前をどう怒らせようか必死になって考えてるらしいぞ。お前、クルーがミスしてもまるで怒らないからな」

 アヴリルが隠した裏事情をカイルが小声で教えてくれた。自分の与り知らないところで怪しい計画が虎視眈々と進められている事実に、シルヴィアは目眩を覚える。
 だが、いまはそんな場合ではない。
 頭を振って雑念を飛ばし、気を入れ直すシルヴィア。いまやるべきは少女の保護だ。なんとかして彼女の信頼を得なければならない。しかし、どうすれば……。
 ―――そんな彼女の不安は、あっさりと杞憂に帰した。
 少女がいそいそと動き出したのだ。船を漕ぎ、なぜかカイルのボートへ近づいていく。そしてボートにうんしょと乗り移ると、すぐにカイルの脚にしがみついて、シルヴィアから隠れるように彼の背中に隠れた。
 ぽかんとする総員。

「……なんでカイルにはすぐ懐くんですか?」

 唇をへの字に曲げて不満を露わにするシルヴィア。彼女の刺々しい視線を向けられたカイルは「そんなこと言われてもな……」と謂れのない怒りを前に戸惑い頬を掻く。

「……かいる?」

 すると、少女が名前に反応した。カイルの脚に抱きついたまま、それがあなたの名前なのかと尋ねるように彼の顔を見上げる。その声色は言葉を覚えたばかりの幼女そのものだった。

「俺の名前だよ」

 自分を指差すカイル。

「かいる。かいる」

 確かめるように彼を指さしながら何度も呟く少女。いろいろ納得いかないシルヴィアだったが、とりあえず彼女のことはカイルに任せることにして、互いに船に戻ることにした。
 途中、八番艦の方から「なんでバラしちゃったんすか隊長!」「シルヴィア様をこっそり愛するための団体じゃなかったんすか隊長!」「計画おじゃんじゃないですかどうしてくれるんですか隊長!」と、誰かが立て続けに責められている騒ぎが耳に入った。
 だが、シルヴィアは必死に聴こえないふりをして一番艦へ戻る。
 八番艦が自分の親衛隊専用の船になっているなどとは、思いたくもなかった。
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