用語解説
今回は今更感が満載ですが、帆船においてなによりも重要な風上と風下の話です。
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・かざ - かみ【風上】
1. 風が吹いてくる方向
2. 反対は風下(かざしも:風が吹いていく方向)
3. 海戦では基本的に風上が有利だが、絶対ではない
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海戦においては、よく「風上のほうが有利」と言われます。
ですが、風上と風下のどちらにもメリットとデメリットがあります。
実際、それを考えた結果、好んで風下側を選ぶ国もありました。
⚓
風上側のメリットとデメリットは、主に以下のような感じです。
▼風上のメリット
(a)戦争の主導権を握ることができる(風下よりも自由に動けるため)
(b)相手の戦列を分断したり、挟撃したり、突破したりすることが容易
(c)火船が利用できる
(d)大砲によって発生した硝煙・煙幕が、敵方へ流れていく
▼風上のデメリット
(e)荒天時、船体下部の砲門を開けられない(手数が減る)
(f)損傷艦の退避が困難
⚓
(c)について。
火船とは、火薬などを積んでそのまま敵艦に体当たりをしかける船です。要は特攻・自爆です。実際の海戦は、敵船に近寄ってダメージ覚悟で大砲を放ったり、体当たりをしたりなど、かなりの力業でした。
⚓
(e)について。
風上にいる船は、船体の傾きのせいで、砲門を開くと海水が入り浸水してしまいます。
たとえば、西から東へ風が吹いているとします(西が風上)。このとき、西と東に分かれて戦っている二軍がいるとしましょう。
大砲は基本的に舷側(船の側面)についているため、攻撃をしかけるとき、船の頭は北か南を向きます(=舷側を敵に向けます)。ここでは北を向いているとします。つまり、風上側の船は右の舷側(右舷)から、風下側の船は左の舷側(左舷)から攻撃をします。
このとき、風は西から東へ吹いているので、船体は東側・簡単にいえば右側へ傾きます。左側が持ち上がるということですね。
つまり、風上側の船体の右舷は、普段以上に高いところまで水に浸かってしまうため、低い位置にある大砲の射出口を開けると水が入ってしまいます。浸水が激しくなると船が沈んでしまうため、これを避けるためには低い位置の砲門を閉じる必要があります。これによって、普段より使える大砲が減るというわけです。
逆に、風下側は攻撃している舷側のほうが高くなるため、浸水の心配なく全ての大砲が使えます。
⚓
(f)について。
風上側の船が敵から距離をとるには、風上側へ逃げなければなりません。
ですが、帆船は風に向かっては走れないため、風下側の船よりも戦場からの退避が困難です。
逆に、風下側が逃げるときは風を背に受けて逃げられるので、風上側の退避よりは相対的に容易です。
⚓
風下のメリット・デメリットは、風上のそれを逆転させたものです。
これらのメリット・デメリットは、各国の戦略・戦術にも非常に大きな影響を与えました。
たとえば、イギリスは伝統的に「風上」を好みました。四方を海に囲まれていたイギリスは、海上の平和=自国の平和と認識していたため、常に敵艦隊を撃滅することを目的としていたからです。
対して、フランスは伝統的に「風下」を好みました。
これは同国が大抵の場合、なるべく艦隊に損壊を出さないことを第一に戦っていたためです(敵の撃滅ではなく、敵の作戦達成を阻止することを第一にしていました)
そのため、退避が容易な風下側を選んでいたのです。
また風下であれば、艦が波頭に到達する直前に発砲して砲弾を高く飛ばせたため(攻撃を行う舷側が高くなっているため)、敵の射程外から攻撃をしかけられるというメリットもありました。
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・かざ - かみ【風上】
1. 風が吹いてくる方向
2. 反対は風下(かざしも:風が吹いていく方向)
3. 海戦では基本的に風上が有利だが、絶対ではない
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海戦においては、よく「風上のほうが有利」と言われます。
ですが、風上と風下のどちらにもメリットとデメリットがあります。
実際、それを考えた結果、好んで風下側を選ぶ国もありました。
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風上側のメリットとデメリットは、主に以下のような感じです。
▼風上のメリット
(a)戦争の主導権を握ることができる(風下よりも自由に動けるため)
(b)相手の戦列を分断したり、挟撃したり、突破したりすることが容易
(c)火船が利用できる
(d)大砲によって発生した硝煙・煙幕が、敵方へ流れていく
▼風上のデメリット
(e)荒天時、船体下部の砲門を開けられない(手数が減る)
(f)損傷艦の退避が困難
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(c)について。
火船とは、火薬などを積んでそのまま敵艦に体当たりをしかける船です。要は特攻・自爆です。実際の海戦は、敵船に近寄ってダメージ覚悟で大砲を放ったり、体当たりをしたりなど、かなりの力業でした。
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(e)について。
風上にいる船は、船体の傾きのせいで、砲門を開くと海水が入り浸水してしまいます。
たとえば、西から東へ風が吹いているとします(西が風上)。このとき、西と東に分かれて戦っている二軍がいるとしましょう。
大砲は基本的に舷側(船の側面)についているため、攻撃をしかけるとき、船の頭は北か南を向きます(=舷側を敵に向けます)。ここでは北を向いているとします。つまり、風上側の船は右の舷側(右舷)から、風下側の船は左の舷側(左舷)から攻撃をします。
このとき、風は西から東へ吹いているので、船体は東側・簡単にいえば右側へ傾きます。左側が持ち上がるということですね。
つまり、風上側の船体の右舷は、普段以上に高いところまで水に浸かってしまうため、低い位置にある大砲の射出口を開けると水が入ってしまいます。浸水が激しくなると船が沈んでしまうため、これを避けるためには低い位置の砲門を閉じる必要があります。これによって、普段より使える大砲が減るというわけです。
逆に、風下側は攻撃している舷側のほうが高くなるため、浸水の心配なく全ての大砲が使えます。
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(f)について。
風上側の船が敵から距離をとるには、風上側へ逃げなければなりません。
ですが、帆船は風に向かっては走れないため、風下側の船よりも戦場からの退避が困難です。
逆に、風下側が逃げるときは風を背に受けて逃げられるので、風上側の退避よりは相対的に容易です。
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風下のメリット・デメリットは、風上のそれを逆転させたものです。
これらのメリット・デメリットは、各国の戦略・戦術にも非常に大きな影響を与えました。
たとえば、イギリスは伝統的に「風上」を好みました。四方を海に囲まれていたイギリスは、海上の平和=自国の平和と認識していたため、常に敵艦隊を撃滅することを目的としていたからです。
対して、フランスは伝統的に「風下」を好みました。
これは同国が大抵の場合、なるべく艦隊に損壊を出さないことを第一に戦っていたためです(敵の撃滅ではなく、敵の作戦達成を阻止することを第一にしていました)
そのため、退避が容易な風下側を選んでいたのです。
また風下であれば、艦が波頭に到達する直前に発砲して砲弾を高く飛ばせたため(攻撃を行う舷側が高くなっているため)、敵の射程外から攻撃をしかけられるというメリットもありました。