用語解説
前回、第12話でジャンヌが語っている「防勢(反撃)」について書きましたが、今回はそちらを踏まえた上で「制限戦争/無制限戦争」というものについて書いてみます。
なお、これは作中には出てこないのですが、防勢を考える上でとても大切な考え方ですので、併せて載せておきたいと思います。
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・む - せいげん - せんそう【無制限戦争】
1. なにがなんでも目標を達成する戦争
2. 基本的に攻勢の形を取る
3. 反対は「制限戦争」
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攻勢/防勢というカテゴライズを考えるとき、重要になるのが「無制限戦争」と「限定戦争」という考え方です。
この両者、簡単に定義すると以下のような感じです。
- 無制限戦争 : なにがなんでも掲げた目標を達成する戦争
- 限定戦争 : そこまでする価値がない目標のために行う戦争
⚓
大抵、無制限戦争は攻勢の形を、限定戦争は防勢の形をとります。
ここから分かることは、無制限戦争をしかけてくる=死に物狂いで向かってくる相手には、限定戦争=死に物狂いではない戦争では太刀打ちできないということです。この両者がぶつかった場合、大抵は「劣勢側の早期降伏」や「講和条約の締結」といった結果に至ります。
ここからコーベットは、限定戦争という選択をとることが正当化されるには、以下のいずれかの条件を満たさなければならないと定義しました。
(1)争う目標が、両者にとって無制限戦争をしかけるほど重要ではないこと
(2)仮に重要でも、無制限に戦う上での障害が存在すること(相手の防衛力が高すぎる、など)
⚓
(1)に該当する場合。
たとえば、戦争が長引くとお金がかかります。そのため、目標がなにがなんでも奪取すべきものでない場合、政府や国民が必要以上の出費を嫌い、その心情に配慮して戦争が停止されることがあります。
(2)に該当する場合。
死に物狂いで奪いにいきたいが、たとえば自国と敵国のあいだに、敵国の同盟国がいて攻めこめないといったケースです。越えられない山があるなどの地形的な障害も、ここに該当します。
ですが、もし敵にとって目標とするところが死に物狂いで獲得しなければならず、かつそうすることになんの障害もない場合、これに限定戦争で太刀打ちするのは極めて困難です。
⚓
この点を踏まえた上で、以前に紹介した海軍史家・コーベットは、限定戦争を成功につなげるための条件を2つ示します。
(1)自国に敵の領土目標を孤立させる力がある
(2)そこに価値を見出した敵が無制限戦争をしかけるとき、それを妨げる防衛力が自国にある
具体的に、フランス(敵)がイギリス(領土目標)を侵攻する場合について、イギリスの立場から考えてみましょう。
(1)について。
イギリスは四方を海に囲われているため、完全に孤立しています。国境を接する隣国がありません。
もし自国と国境を接する隣国が存在する場合、隣国が自国へ攻めこむのになんの障害もないと言えますが、これはイギリスには該当しません。よって、イギリスは(1)を常に満たせる国家であると言えます。
(2)について。
これは時代によって異なりますが、もしイギリスが自国を守りきれる陸軍と海軍(いまの時代なら空軍なども)を保有していれば、フランスの侵攻作戦は失敗する可能性が高いと判断されます。
⚓
これは言い換えれば、「独立した島国」が「自国を防衛する圧倒的な戦闘力を保有する」場合にのみ、限定戦争はその真価を100%発揮できるということです。
このあたりはコーベット『海洋戦略の諸原則』やクラウゼヴィッツ『戦争論』に詳しいので、気になる方はぜひ読んでみてください。
・・・それにしても、最近3行ではめっきりわからなくなってきました(苦笑)
なお、これは作中には出てこないのですが、防勢を考える上でとても大切な考え方ですので、併せて載せておきたいと思います。
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・む - せいげん - せんそう【無制限戦争】
1. なにがなんでも目標を達成する戦争
2. 基本的に攻勢の形を取る
3. 反対は「制限戦争」
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攻勢/防勢というカテゴライズを考えるとき、重要になるのが「無制限戦争」と「限定戦争」という考え方です。
この両者、簡単に定義すると以下のような感じです。
- 無制限戦争 : なにがなんでも掲げた目標を達成する戦争
- 限定戦争 : そこまでする価値がない目標のために行う戦争
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大抵、無制限戦争は攻勢の形を、限定戦争は防勢の形をとります。
ここから分かることは、無制限戦争をしかけてくる=死に物狂いで向かってくる相手には、限定戦争=死に物狂いではない戦争では太刀打ちできないということです。この両者がぶつかった場合、大抵は「劣勢側の早期降伏」や「講和条約の締結」といった結果に至ります。
ここからコーベットは、限定戦争という選択をとることが正当化されるには、以下のいずれかの条件を満たさなければならないと定義しました。
(1)争う目標が、両者にとって無制限戦争をしかけるほど重要ではないこと
(2)仮に重要でも、無制限に戦う上での障害が存在すること(相手の防衛力が高すぎる、など)
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(1)に該当する場合。
たとえば、戦争が長引くとお金がかかります。そのため、目標がなにがなんでも奪取すべきものでない場合、政府や国民が必要以上の出費を嫌い、その心情に配慮して戦争が停止されることがあります。
(2)に該当する場合。
死に物狂いで奪いにいきたいが、たとえば自国と敵国のあいだに、敵国の同盟国がいて攻めこめないといったケースです。越えられない山があるなどの地形的な障害も、ここに該当します。
ですが、もし敵にとって目標とするところが死に物狂いで獲得しなければならず、かつそうすることになんの障害もない場合、これに限定戦争で太刀打ちするのは極めて困難です。
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この点を踏まえた上で、以前に紹介した海軍史家・コーベットは、限定戦争を成功につなげるための条件を2つ示します。
(1)自国に敵の領土目標を孤立させる力がある
(2)そこに価値を見出した敵が無制限戦争をしかけるとき、それを妨げる防衛力が自国にある
具体的に、フランス(敵)がイギリス(領土目標)を侵攻する場合について、イギリスの立場から考えてみましょう。
(1)について。
イギリスは四方を海に囲われているため、完全に孤立しています。国境を接する隣国がありません。
もし自国と国境を接する隣国が存在する場合、隣国が自国へ攻めこむのになんの障害もないと言えますが、これはイギリスには該当しません。よって、イギリスは(1)を常に満たせる国家であると言えます。
(2)について。
これは時代によって異なりますが、もしイギリスが自国を守りきれる陸軍と海軍(いまの時代なら空軍なども)を保有していれば、フランスの侵攻作戦は失敗する可能性が高いと判断されます。
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これは言い換えれば、「独立した島国」が「自国を防衛する圧倒的な戦闘力を保有する」場合にのみ、限定戦争はその真価を100%発揮できるということです。
このあたりはコーベット『海洋戦略の諸原則』やクラウゼヴィッツ『戦争論』に詳しいので、気になる方はぜひ読んでみてください。
・・・それにしても、最近3行ではめっきりわからなくなってきました(苦笑)