用語解説

今回は長いです。苦笑。

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・しゅうごう - しゅうちゅう - しゅうけつ【集合、集中、集結】
1. 集合:軍の部隊を集めること。
2. 集中:作戦開始のために最適な位置へ戦力を集めること
3. 集結:際の戦いにおいて、最大の一撃を敵に加えるために戦力を集めること。

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ちょっと具体的に見ていきましょう。

ランチェスターの戦略などで有名ですが、戦争においてはよく「戦力は集中すべき」といわれます。一ヵ所に戦力を集めて、相手に対して数的優位を築くわけですね。

海戦でも基本的に同じことがいえます。
ですが、作中で大和はレイナに「戦力の分散」を「集中の一種」であると説明していました。これはいったいどういうことか?

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海戦における戦力の「集中」には、大きく3つの段階があります。
(これはコーベットというイングランドの海軍史家の定義です)

【a】集合:軍の部隊を集める(行政的過程としての集中)
【b】集中:作戦開始のために最適な位置へ戦力を集める(戦略的配備としての集中)
【c】集結:実際の戦いにおいて、最大の一撃を敵に加えるために戦力を集める(戦術的配備としての集中)

注意点としては、これは「集中には三種類ある」のではなく「集中という作戦行動は、この三段階から成る」ものです。

このうち、分かりにくいのは【b】集中です。
なぜなら、その本質が「分散」だからです。

「集中」するのに「分散」しないといけないのです。
どう考えても「?」ですよね。

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海は広いため、自国の交易路や商船を保護するためには必然、広い範囲をカバーする必要があります。そのため国民の要請に応じて、艦隊はどうしても「分散」せざるを得ません。

しかし一方で、それでは戦力が散り散りになってしまいます。つまり、いざ敵と遭遇したとき、効果的な攻撃を行えません。

そこで、平時は「分散」して広く海域を警戒し、いざ敵が現れたときに近くの艦船が互いに急行して【c】集結し、敵を排除するといった動きが要求されます。それが、作中で大和が言っていた「集中」のあり方です。

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また、広く分散する【b】集中には「作戦の秘匿性を高める」という利点もありました。海軍が1ヵ所に集まっていては、その次に起こす行動が予測されやすくなります。ですが、分散していれば予測されにくくできるというわけです。

もっとも、この【b】集中の考え方は、軍略家たちに長らく軽視されてきました。敵を撃滅する作戦こそ至高と考える時代が長く続いたため、どこの国も【c】集結を重要視してきたからです。
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