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mha / 短 編


博愛主義ゆえのすれ違い



彼が向ける愛情に特別なんて感情は含まれていない。
ヒーローとして人々に向けるものと変わらないのだ。
君だけを愛してる、なんて
考えてみれば言われたことなど1度もなくて。
この関係は一体なんなのかと
考えてしまうこともあった。
それは徐々に脳内を、胸の内を蝕み、ついに弾けた。
日常のなんてことない会話を
引き裂くように気持ちが溢れる。

「貴方が憎くて、憎くてたまらないの…」

そう言葉を紡いだ私の顔は酷く歪んでいたに違いない。
そんな顔は見られたくなくて
彼の目から逃げるように俯く。
次に頭上から降ってきたのは気が抜けるような
チグハグな言葉だった。

「僕も…愛してる」

うそっりとした声色で返ってきた愛に言葉を失う。
この人は、この男は一体何を聞いていたのか。
何を言っているのかと冷静を取り繕い
言葉を返せば、彼は頬を赤らめ言う。

「あぁ、ごめん。君の憎いって言葉が
愛してるって言ってるように聞こえて、つい」

ありえない、今までどれだけの我慢をしてきたのか
分かっているのかと脳は警鐘を鳴らす。
終わらせなければ、名前のないこの関係を。
そう頭では分かっている。
分かっているのに意思に反して胸の内が熱く
頬は赤に染っていく。

「…憎いの、だから……」

「うん、うん…僕も愛してる、これからもずうっと」


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