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mha / 贈 物

 
不安も全部受け止めたい



いつもより帰宅が遅くなり
慌てて彼の待つ家へと駆け込んだ。
部屋の中はシンと静まり返っていて
すでに寝てしまったのかとそっとリビングを目指す。
二人分にして大きなソファに見えた人影
「俊典さん、ただいま」そう言葉をかけると
丸まった背中が揺れたあと
人影がゆっくりとこちらを向いた。
出迎えの言葉をくれた彼の声がどこかいつもと違い
心配をかけてしまったことを謝ろうと近寄る。
足元にちょこんと腰を下ろし見上げたと同時
彼の大きな手が頬に触れ優しく撫でてきた。

「若い頃ならこんなこともなかったんだろうけど
 まったく、情けないよ…」

弱々しい声が頭上から降ってくる。
交わった彼の瞳は悲しげに揺れていて
思わず胸が締め付けられるような感覚がした。
頬に触れたままの手に自分の手を重ねると
少しだけ落ち着いたような素振りをみせ
再び言葉を紡ぎはじめた。

「若い子になびいてしまうんじゃないかって
 気が気じゃなくてね、焦ってしまうんだ…」

しかし声色は弱々しいままだった。
勝手に不安になるなんて、と
自分を責め始める彼を止め
私が好きなのは貴方だけだと伝える。
彼が私にくれた安心できる言葉。
それに気づいたのか彼は口元をゆるりとあげ笑うと
一度目を閉じた目を開き
力強さの溢れる目で私見つめた。

「…私も君が、君だけが好きだよ、
 ずっと私の傍にいてくれないかい?」


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