kmt / 贈 物
君と愛と二度寝の添い寝
お昼をすぎても寝室から出てこない
未だ夢の中だろう彼女を起こしに向かう。
扉をノックして部屋に入るとそこは薄暗かった。
春めいた明るさを遮断するカーテンを開けると
外からは暖かい陽の光が差し込んできた。
それは真っ直ぐと彼女を照らす。
閉じていた瞼をさらに固く閉じ眉間に皺を寄せ
陽から逃げるように寝返りをうった。
その動きに合わせるように髪が流れ顔を隠す。
見るからに邪魔そうで指を添わせ耳元へと戻したとき、
白い肌を強調させるクマが目に止まった。
ちゃんと休めてんのかな、
目の下を親指の腹で撫でながら思う。
仕事を終えて帰ってきたらご飯を済ませ
風呂に入り、すぐ寝室へと向かってしまう彼女
おかげであまり二人で過ごす時間もない。
けど無理は言いたくないし、負担にもなりたくはなくて
疲れているところを引き止めたりはしないけど
こうして目の下にクマを作っているのを見ると
どうしても心配になってしまう。
「あー…くそ、…だとしたら起こすの可哀想だよな…」
彼女を起こしに来たのに
こんなに疲れた様子で眠っているところを見てしまえば
起こそうにも起こせなくなる。
独り言を呟いて彼女の頭をそっと撫でた。
おやすみ、と声をかけ寝室を出ようとすると
薄らと開いた瞼の奥の寝ぼけ眼と目が合った。
「んん、……おはよう…げんやくん…」
「あ…すみません、起こしましたか」
今にも寝落ちてしまいそうな声でおはようという彼女に
もうお昼だと伝えればふにゃりと顔を綻ばせ
呑気にそんな時間かと言う。
軽く伸びをして見せて起きる気になったのかと思えば
温もりの残る手のひらが俺の腕を掴む。
「げんやくんも寝よう、休みなんだから…」
寝起きのとろんとした声と顔
俺がそれに弱いと知っているからなのか、
彼女は強請るように俺にベッドに入るよう言う。
たしかに休みで特に予定もないとはいえ
今から寝るのもどうなのかと少し考えてしまう。
時計は既に午後の1時になろうとしていた。
俺の中で少しなら寝ても大丈夫だと何かが言ってくる。
少しだけ、少し寝るだけだからいいだろう。
「しょうがねえなぁ…」
折れたところで掛布をそっと持ち上げる
すると彼女はここに寝てくれと言うように
俺のスペースを作り壁へと寄ってくれた。
二人分の重さにスプリングが軋む。
楽しそうな笑い声を漏らす彼女を抱きしめ
ゆっくり息を吸うとほのかに甘い香りが鼻腔を擽る。
その香りに溺れるようにベッドに潜り込み
遅めの二度寝をすることにした。
「夜、眠れなくなったら責任とってくださいね」