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kmt / 贈 物


涙には愛を添えて



「ん、」

突然目の前に現れた彼は
何を言うでもなくただ両腕を広げてきた
一体どういう事なのか
視線が広げられた腕と彼の顔を何度か彷徨った

「えっと……?」

「何とぼけてんだよ…ほら、来いって」

いつまで経っても動かないでいると
彼は痺れを切らしたらしく
腕を掴み引き寄せ、半ば強引に抱きしめてきた
それ以上の言葉はなかったが
背中を撫でる手つきから
私を気にかけてくれていたと知る
彼から与えられる優しさが荒んだ心に染みて
徐々に視界がぼやけてくる
ぎゅっと固く瞑った瞳から涙が溢れ
彼の服を濡らしていく

「お前の性格は知ってるつもりだけど、頑張りすぎ
 つらいときは俺を頼れよ」

「…うん……ごめん、…ごめんなさい…」

急にぱっと体が離れ
背中へと回されていた手は
私の頬をやんわりと挟んできた
じっと見つめてくる彼の瞳に
少しだけ気まずさを覚えて逸らしてしまう
それと同時、彼はぽつりと話し始めた

「謝ってほしいわけじゃねえの、」

「……あ、……ありがとう、玄弥くん…」

「どういたしまして
 …しばらくこのままでいてもいいか?
 俺もなんか、安心する…」

少しむくれたような顔をした彼に
お礼を言うとすぐにくしゃっと笑って
再び強く抱きしめられる
胸を通して伝わる心音が心地いい
彼の背中へと回していた腕に力を込めて
私からもぎゅっと抱きしめ返せば
規則正しく届いていた心音が僅かに早まった
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