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kmt / 贈 物


午前零時の眠気と優しさ



ベッドに潜り込んでからどれほど経ったのか
端末を点灯させて時間を見ると既に夜中を回っていた
疲れているはずなのに目は冴えていて
眠気というものをいっさい感じない
きっと疲れすぎているんだろう

隣で眠っている彼の背中は規則正しく動いていて
すっかり夢の中へと行っているようだ
このままモゾモゾと動いていたら
目が覚めてしまうかもしれない
迷惑をかける前にベッドから出よう
そう考えでゆっくり、慎重に端へと体を滑らせた

「…眠れねぇのかァ?」

眠っていると思っていた彼の声に
肩がびくりと跳ね上がった
トクトクと早い心音を落ち着かせ
改めて向き直ると彼は眠たげな目をしていて
申し訳ない気持ちでいっぱいになる

「ごめんなさい起こしてしまって…
私、一度リビングに行くので気にせず眠ってください」

「……それだと余計に眠れなくなるだろォ、」

彼は私の腕を掴むと自分の体へと引き寄せた
状況を掴めていない私はそのまま彼の腕の中へ
片手は腰に、もう片方の手は頭を撫でる
気づくと包み込むように抱きしめられていた
彼の体はほどよく温かいのに
私の体温がおかしいほどに上昇していて
ぴったりと触れ合う肌が熱い
息をする度に肺を満たす香り
ゆったりとした心音
その全てが緊張していた私を落ち着かせてくれる

「迷惑かけて、ごめんなさい…」

「あァ?…別に、迷惑なんて思ってねぇよ
 抱きしめる口実には丁度いいだろォ、」

頭上から聞こえる声も、頭を撫でる手も
触れ合う体温、胸を通して伝わる心音
その全てに優しさが滲み出ていた
控えめに回していた腕に力を込めて
ここぞとばかり抱きしめ返せば
労いの言葉までかけてくれた
彼だって疲れているはずなのに
こうして私を気遣ってくれる
いつもありがとう、なんて
それを言うべきのは私のほうなのに
彼は私を甘やかすのが本当に上手らしい


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