kmt / 贈 物
それが狸寝入りだとして
任務を終えて帰ってきた彼は
いつになく疲れた様子だった
お疲れ様、と声をかけ羽織を受け取って
洗う前に破れはないか確認していると
徐に座布団を二つに折りたたみ
私のすぐ隣に横になった
いつもならお風呂を済ませてからじゃないと
横にならないのに、今日は本当にお疲れらしい
既に夢の中へと行ってしまっただろうか
そっと距離をつめて
眠っているか改めて確認をした
すぅ、と規則正しい寝息が聞こえる
どうやら本当に眠ってしまったようだ
二人しかいないと分かっている空間を
必要以上にキョロキョロと見回したあと
彼の唇にそっと口づけた
普段は恥ずかしくてできない触れ合い
眠っているとはいえ私からできたことに満足する
気を取り直し洗濯と
ご飯の用意を進めようとした時
視界の端に映った見開かれた目
眠っていると思っていた彼が起きていたとは
驚きのあとに羞恥が激しく込み上げてきた
「…なあ、さっきのもっかい」
「さ、さっきのっていうのは……?」
何もなかったように振舞ったのに
彼はそんなことはお構いなしに
もう一度と強請ってくる
目線をそらさずじっと見つめられ
断ることもできなかった
「目を、瞑ってもらえますか…」
「……わかった、それでしてくれるなら…」
それを条件に再び短いキスをした
まさかこんな短時間のうちに
私から二度も口づけることになるなんて
顔から火が出そうなほどに恥ずかしい
今すぐにでもその場から離れようと
ご飯の準備をと言い立ち上がろうとした
しかしそれは腰に回された腕によって阻止される
あれ、と不安になったが既に遅く
彼の膝元へと逆戻り
抱えられるようにして向かい合う
目の前には頬を赤く染めた彼がいて
照れているように見えた顔は
すぐに男の人のものへと変わる
「お前は何もしなくていいよ
俺が勝手にしたいだけだから…」
そういうと彼は大きな手で私の頬を挟み
何度も何度も口づけた