kmt / 贈 物
全てを知りたいと思う
二人分の重みにベッドが軋む。
身をよじれば衣擦れの音がして、
それを引き戻すように再び同じ音がする。
肌に触れる唇から漏れる小さなリップ音。
頬を甘く食み、唇を塞ぎ輪郭をなぞるように
口づけが落とされる。
それは徐々に降下していき喉元に吸い付くと
味見をするように熱くざらついた舌が
肌の上を這った。
空気に触れひんやりとした
その場所に再度口づけ暖める。
擽ったさに似た高揚感で
触れられる度に体が反応してしまう。
鼻にかかったくぐもった声が
自分の意思に反して盛れた瞬間
熟した林檎のように赤く染った顔ごと
隠すように腕で覆った。
目に映っていないのに
空気の音やスプリングの軋む音で
彼が今どこにいて
どこに口づけようとしているのかが分かる。
先程まで首元を中心に吸い付き
舌を這わせていた唇は鎖骨の形を確かめるように
ゆっくりと舌でなぞり
肩口を溶かすように口づけを落とす。
舌先が鎖骨をなぞったあと
ぢゅとこもった音がした。
唇が離れしばらくすると
その場所に何度も舌を這わせる。
お腹の底に響く優しい低音が耳をくすぐった。
それは熱っぽく、そしてとても満足そうな声。
「耳まで真っ赤にして…恥ずかしいのかァ、」
耳をくすぐった彼の声はとてみ楽しそうだった。
表情を見ていなくても口角をゆるりと上げ
目を薄ら細めているんだと分かる。
分かっているなら言わないでほしいと
浅い呼吸を繰り返しながら伝えれば
身体の全てを堪能するように
優しく口づけを落とす唇
味わうように這わせていた舌、
その動きがぴたりと止まってしまう。
すぐに襲ってきた僅かな安心感と物足りなさ。
しかし顔にはまだ熱が残ったままで
顔を覆っていた腕はそのままに
何度が深く深呼吸を繰り返す。
ゆっくりと上下する腹部に手が添えられ
それはさらに肌の上をするりと滑ると
上へ上へとのぼり、私の手首を柔らかく包んできた。
「声出せ、ぜェんぶ可愛いんだお前の…」
その声はとても穏やかなものだった。
それでもいやいやと首を振る私に何度も強請るように
少しでいいだとか、自分しかいないからと続ける。
そう言いながらも無理に腕を動かそうとはしない。
彼の言葉と行動はちぐはぐな優しさに満ちていた。
「怖い思いはさせたくねえんだ…
頼む、どこがいいのか教えてくれねえか」
溺れてしまいそうなほどの優しさに触れ、
体温を上昇させる彼自身の熱にほだされ
口を塞ぎ、顔を隠していた腕をそっと離す。
視界には頬を薄く染め
熱っぽい視線を向ける彼がいた。
その余裕のない表情に目を奪われてしまう。
しかし交わっていた視線はすぐに逸らされる。
気恥しそうな顔をした彼はぽつりと言葉を続けた。
「お前が気持ちいいなら俺も嬉しい
…だから可愛い声、聞かせてくれ」
腕を掴んでいた手が離れると
指先を絡め、そのままベッドへと縫い付ける。
うっとりとした優しい瞳に吸い込まれるように
どちらからともなく唇を重ね甘い口づけを交わした。