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kmt / 短 編



制服が届いた話



なんの前触れもなく実家から届いたダンボール。
実家を出て何年も経つというのに
今更何を送ってきたんだろう。
恐る恐る開けると一番上には手紙が添えてあり
そこには懐かしい母の字で
「そっちで管理してください」と
ただその一文だけが大きな紙に
小さな文字で書かれていた。
つまり実家にあっても迷惑なものが
送られてきたわけで。
組み立て式のなにかだろうか
生憎置ける場所なんてない。
見てから本当に使わないものなら
リサイクルしてしまおう。
そう決めてダンボールの中から袋を取り出す
持った感じは結構軽くて
いよいよ分からなくなってきた。
無意味なほど厳重に包装された袋を
強引に破って出てきたのは高校の制服だった。
三年間着ただけあって袖はかなりくたびれているが
汚れだとかほつれは一切ない。
セーラーだった中学時代に憧れていたブレザーを
高校生になって着れたからと
結構大切に着ていた覚えがある。
思わず「懐かしい」と声が漏れて
思い出に浸っていたが
すぐにちょっとした悪戯心が芽生えてきた。

「そうと決まれば帰ってくる前に準備しなきゃ」

同居人の仕事が教師ということもあって
ドッキリの材料としてはかなりいいかもしれない。
どんな反応を見せてくれるのかワクワクしながら
部屋着から懐かしい制服に着替えた。
いちばん安心したのはスカートがまだ履けたこと
体型をキープできていたことにかなり安心した。
ちなみにシャツの胸元はあの頃と変わらない。
それについては喜べなかった
成長していなかったらしい。
リボンの結び方も染み付いていたようで
すんなり結ぶことができた。
鏡に映る自分を見て年齢的にはアウトでも
外見はまだセーフではないかとしみじみ思う。
記念に写真でも撮っておこうかとしたが
ちょうど同居人が帰ってきてしまった。
私は慌てて掛けてあったコートを
適当に羽織り玄関に向かった。

「実弥さんおかえりなさい」

「なんだ、いまから出かけるのかァ?」

「残念、違います!」

怪訝な顔をしている実弥さんに向かって
じゃじゃーんと口で効果音をつけながら
コートの下に着た制服をお披露目した。
最初こそ訳が分からないといった反応を見せたが
すぐに説明しろと言われ
実家から届いたことを伝えた。
するとため息をつきながらもその目は
頭の先から足元までゆっくり降りていく。
そしてまた下から上へと目線が戻ったあと
「案外似合うもんだなァ」と笑われた。
確実にからかわれている。
なんだかそれにムッときてしまって
わざとらしく「先生」と呼んみせる。

「……煽ってんなら
 それなりの覚悟はできてるよなァ?」

呼んだあとに後悔した。
同居人は今日で7連勤目
そして明日は久しぶりの休日。
この後待っている展開の想像なんて簡単だ。
私の返事は初めから聞く気はないらしく
軽々と抱き上げると
そのまま寝室へと連れていかれた。
ベッドに降ろす時は決まって優しく降ろしてくれる。
それが勝手に私の期待値を
上げていくものだから困ってしまう。
実弥さんは問答無用で
横になっている私に覆いかぶさってくる。

「せめてお風呂を先に…!」

「別に俺は気にしねえ」

「制服がシワになっちゃいますから…!」

「あとでクリーニング代出してやる」

今の言葉で一気に背徳感が増した。
実弥さんもスーツ姿というのもあって
先生と生徒のような危ない図が完成している。
いかにもアウトだと言うと
彼の喉仏が僅かに上下した。
連勤明けの実弥さんには効果抜群だったらしい。
いつも優しくしてもらってばかりで
我慢させているかもしれない。
それなら七連勤のご褒美という名目で
たまには好きにしてもらってもいいのかもしれない。
こういうシチュエーションみたいなことをするのも
思い返してみれば初めてで
私もどこか期待してしまう。

「…先生が生徒に手を出すなんていいんですか?」

「先生を誑かした悪い生徒には
 指導が必要だろォ…?」

舌なめずりをして見せた彼は酷く悪い顔をしていた。
そんな表情に目を奪われてしまえば
噛み付くようなキスをされ
拒むこともできず薄らと唇を開きそれに必死に応えた。


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