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第一章 霜止出苗 —しもやんでなえいづる—

 部屋に帰り、審神者はリュックから先程の本を取り出した。
 紙袋のテープを剥がせば、あの古書店で嗅いだ香りが微かに漂ってきてテンションが上がる。
 スマホで和風メロデスバンド「重金属凶奏隊 鋼音—HAGANE—」の妖怪をテーマにしたコンセプトアルバムを流し、準備は万全だ。
 本を開き、冒頭から読み進めていく。
 黄色く変色した紙の上で踊る、僅かに文字の凹凸が感じられる印刷。現在では使われそうにない例えや、所々残る戦前の漢字、古びた言い回しが心地良い。
 耳元でうねる、最推しバンドの最推しメンバーHIKARIのベースが、妖怪と、古書そのものの持つドロドロとした世界とマッチして、この上なく贅沢な時間を過ごしていると思った。
 千八百円+税でこれが手に入るなんて、安い。
 寝食も忘れ没頭し、読了したのは深夜の一時過ぎ。
「最っっっ高……」
 読み終えた本を座卓に置いて、白いラグに大の字を描いて寝転がる。
 また行こう。あの本屋に。
 しばらく満足感に浸っていた審神者だったが、おもむろに起き上がり寝る準備を始めた。
 シャワーと歯磨きを済ませ、パジャマに着替えた審神者は
「おやすみ、HIKARIさん♡」
 壁の額縁に飾られた鋼音のポスターに甘く囁き、ベッドに潜り込んだ。
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