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第一章 霜止出苗 —しもやんでなえいづる—

 審神者が店を出た後で、三池書店の店主——三池光世はハーッと大きな溜息をついた。
 やっと帰ったか。
 数年前「昭和レトロなエモい古書店」としてバズってしまい、あの手合いがイナゴのように押し寄せてきた時期があった。普段ろくすっぽ活字も読まないくせに、貴重な売り物をベタベタ触り、店の写真を撮るだけ撮って、何も買わずに帰っていく。
 見かねて撮影禁止にすれば[古いボロボロの本がめっちゃ高く売ってます。レジの人もタバコ臭くて無愛想なので、BOOK○FF行った方がマシですよ。本当は星一つも付けたくないぐらいです。]と[★☆☆☆☆]レビューを投稿される。
 お前みたいなのはBO○KOFFだってお断りだろうよ、FXCK OFF。と毒付きつつも、タバコ臭くて無愛想なのは事実である。髭剃りがてら笑顔の練習をしてみたが、我ながら不気味だったため一回でやめた。
 今も、時々ああして、ポワポワと何も考えていなさそうな若い女が来る。
 冷やかしでない分、今日のはまだマシな方だが、本たちが辿る末路に思いを馳せると胸が痛む。
 どうせ、今日売ったあれも、一回も読まれぬまま本棚に仕舞い込まれ、インテリアの一部として朽ちて行くんだろうな……。
 映えだかエモだか何だか知らんが、もう二度と来てくれるなよ。
 フン、と小さく鼻を鳴らすと、黒地金字の洋モクを掴み席を立った。
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