Sex On The Beach
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「名前殿、あの丘から平野の中心まで騎馬兵が到達するまで何刻ですか」
「障害物の有無を考慮しなければ最短で三と五分の四刻です」
張飛が『気持ち悪い』という顔をした。当然の反応だろう。諸葛亮は涼しい顔で戦法を支持し、聞き届けた将は去って行く。果たして私の計算は正しかった。そう、正しくなかったことなど無かった。
『電卓』。私のあだ名だ。昔から計算や記憶が何よりも得意だった。世界中の地図、あらゆる数学の公式、人間が積み重ねてきた歴史の軌跡、何もかもがこの頭の中に入っている。小さい頃は神童として扱われていたが、大人になるにつれて『応用が効かない』『AIには負ける』と揶揄されるようになった。別に負けてもいいと思っていた、機械だろうか何だろうがこの孤独感を分かち合える存在がいるなら私はもう誰でもいい。そう思いながら研究室で夜を明かす日々が続いていた。ここ三国時代に来るまでは。
劉備軍に加わった私に待っていたのは『電卓』そのままの役割だった。多少の変化はあるものの中国の地理は頭に入っていたし、誰がどこで戦い何が起こるということも記録にある限りは全て覚えている。ただあまり口出しをしないように気をつけていた。私の知識が役立つのはあくまで『予想外のことが起きなければ』の話だ。私にはその慮外のことが起きたときに対応できる能力はなかった。慌てたり、どもったり、答えられなかったり。そうして周囲は私にがっかりした視線を向ける。それが私の人生だった。だけど彼が目の前に現れて、運命を変えたのだ。
諸葛亮は正に『想定外』に対応する天才だった。私を使って最善・最悪双方を計算して、バッファを取ってから策を起こす。彼ほど私を有効に扱える人はいなかった。周囲の人は現代でも三国でも変わらず『変な奴』という顔をして私と相対していたが、諸葛亮が私を右へ左へと活かすようになってからは『変だが、使える奴』くらいに認識は変わっていった。劉備から『お前のお陰だ』と礼を言われた日にはその場で涙したほどだ。人から必要とされることに飢えていたのだ。私は人の顔色を窺うのが苦手だ。その場の雰囲気を壊さないために、優しい嘘を吐くということが出来ない。事実や数字と異なる会話を受け入れられない。私を"使う"ことによって人の輪に引き入れてくれたのは諸葛亮以外にいなかったのだ。嬉しかった。千年を超えた時を遡ってまで居場所を見つけた喜びが胸に満ちていた。
「此度も貴方のお陰で助かりました、名前殿」
戦の後、諸葛亮が笑むので私は引き攣りそうになる。
「とんでもない。私は誰にでも出来ることをしただけで」
「"誰にでも"、ですか。貴方のその言葉は一体この世の誰を指しているんでしょう」
機械を扱えば、という前提のもと話していたのだが、その状況を知らない彼には嫌味になってしまっただろうか。
「すみません、言葉の綾で。私のいるところでは、道具を使えば子供でも簡単にできてしまうことなんです」
慌てて否定するも、挙動不審になってしまう自分が嫌いだった。諸葛亮はそんな私を意に介さず、穏やかな調子で続ける。
「今はその道具とやらはありませんね。貴方が貴方であるからこそ、武が際立ち、策が成り、国を興すことが可能になるのです」
諸葛亮は心優しい慰めではなく、淡々と事実だけを述べる。それが彼の素敵なところだと思っていた。口先だけの暖かな言葉は私には届かない。それを分かってのことなのだろう。
「ありがとうございます」
「おや、御礼を言うべきは私の方ですが」
「それでも、ありがとうございます」
彼には今まで私がどんな扱いをされてきたかを詳細に語ったことはない。だけど私の態度で何となく察しがついているのかもと予想していた。
「時に名前殿、私と貴方、二人が揃ってこそお互いを盛り立てられるとは思いませんか」
「ええ、ええ!常々思っています。計算ができるだけの私では駄目で、諸葛亮殿がいるから皆さんのお役に立てているのだと。あっでも諸葛亮殿は私なんかがいなくてもお一人でやっていけると思いますが」
「考えたのです、これを戦の時だけではなく、広く応用すべきと」
よく分からないが、政治利用するということだろうか。半端な言葉は吐けないと続きを待っていると、口元を綻ばせて諸葛亮が続けた。
「私人としての生活も富ませたいと考えておりましてね」
「ああ、そういうことですか。何について知りたいのでしょうか。野菜の肥料の製法?農具の作り方?それとも未来の書の内容でしょうか、出来る限りなんでもお手伝いします」
「"なんでも"」
繰り返して諸葛亮が扇を揺らめかせる。
「今、そう仰いましたね」
なんだかいつもと違う雰囲気だ。諸葛亮はあくまで味方に対するとき、人を誑かすような言葉は吐かない。ただ真っ直ぐに議論を突き合わせるだけだ。それなのにこれは、横から奇襲をかけられているような、煙に巻かれているような、不思議な気持ちにさせられた。
「そろそろ私も身を固めようと思っておりまして」
「あ、いいですね。私丁度良い方を存じてますよ。月英さんと言うんですが」
「月英殿については先日見合いの打診がありました」
「ええ、素敵な方だったでしょう?」
「断りましたが」
苦手な事態が巻き起こって背筋が凍る。歴史がここでまた変わろうとしている。諸葛亮がまだ結婚していないのはおかしいと思っていたが、まさかこんなことになるとは。私は二人を夫婦として推していたのだが。
「名前殿。貴方の類稀なる計算能力と私の策があれば、この世は無敵とは思いませんか。それは何も戦の時だけに発揮されるものではない」
諸葛亮が部屋を歩き回る。一歩一歩、こちらに歩を進めてくるわけでもない。ただ景色を、壁を、外を眺めているはずなのに、自分が追い詰められている気分になるのは何故なのだろう。
「二つの能力が絡み合い、深まれば、より強固な絆となって大事を成す・・・私はそう思うのです」
最後にこちらに向き直ると、私は鼻を押さえた。嗚呼、まずい。この人の前でこんな。
「如何でしょうか、名前殿。私の」
「は」
「は?」
「は、は、は」
机の上の紙に、鼻血が垂れた。
「破廉恥!!!!!」
全速力で逃げた。諸葛亮は呆気にとられたような顔をしていたが、如何することも出来ない。何を言っているんだ、私の能力と彼の能力が?!合わさる?!そして物事を成す?!知識の海で生きてきた私にとってその現象は最早概念的な情交に他ならなかった。興奮で体が波打っている。心臓が爆発しそうだ。あんな涼しげな顔で誘惑してくるなんて、信じられない。計算外、予想外、守備範囲外だ。私には対処できない。逃げるしかない!行き先も分からぬままに廊下をひた走った。ただそれしかできなかった。
「これは計算外でした」
一人残された部屋で諸葛亮が呟く。その言葉は永遠に届かないのだった。
Sex On The Beach・・・魅惑のひととき
「障害物の有無を考慮しなければ最短で三と五分の四刻です」
張飛が『気持ち悪い』という顔をした。当然の反応だろう。諸葛亮は涼しい顔で戦法を支持し、聞き届けた将は去って行く。果たして私の計算は正しかった。そう、正しくなかったことなど無かった。
『電卓』。私のあだ名だ。昔から計算や記憶が何よりも得意だった。世界中の地図、あらゆる数学の公式、人間が積み重ねてきた歴史の軌跡、何もかもがこの頭の中に入っている。小さい頃は神童として扱われていたが、大人になるにつれて『応用が効かない』『AIには負ける』と揶揄されるようになった。別に負けてもいいと思っていた、機械だろうか何だろうがこの孤独感を分かち合える存在がいるなら私はもう誰でもいい。そう思いながら研究室で夜を明かす日々が続いていた。ここ三国時代に来るまでは。
劉備軍に加わった私に待っていたのは『電卓』そのままの役割だった。多少の変化はあるものの中国の地理は頭に入っていたし、誰がどこで戦い何が起こるということも記録にある限りは全て覚えている。ただあまり口出しをしないように気をつけていた。私の知識が役立つのはあくまで『予想外のことが起きなければ』の話だ。私にはその慮外のことが起きたときに対応できる能力はなかった。慌てたり、どもったり、答えられなかったり。そうして周囲は私にがっかりした視線を向ける。それが私の人生だった。だけど彼が目の前に現れて、運命を変えたのだ。
諸葛亮は正に『想定外』に対応する天才だった。私を使って最善・最悪双方を計算して、バッファを取ってから策を起こす。彼ほど私を有効に扱える人はいなかった。周囲の人は現代でも三国でも変わらず『変な奴』という顔をして私と相対していたが、諸葛亮が私を右へ左へと活かすようになってからは『変だが、使える奴』くらいに認識は変わっていった。劉備から『お前のお陰だ』と礼を言われた日にはその場で涙したほどだ。人から必要とされることに飢えていたのだ。私は人の顔色を窺うのが苦手だ。その場の雰囲気を壊さないために、優しい嘘を吐くということが出来ない。事実や数字と異なる会話を受け入れられない。私を"使う"ことによって人の輪に引き入れてくれたのは諸葛亮以外にいなかったのだ。嬉しかった。千年を超えた時を遡ってまで居場所を見つけた喜びが胸に満ちていた。
「此度も貴方のお陰で助かりました、名前殿」
戦の後、諸葛亮が笑むので私は引き攣りそうになる。
「とんでもない。私は誰にでも出来ることをしただけで」
「"誰にでも"、ですか。貴方のその言葉は一体この世の誰を指しているんでしょう」
機械を扱えば、という前提のもと話していたのだが、その状況を知らない彼には嫌味になってしまっただろうか。
「すみません、言葉の綾で。私のいるところでは、道具を使えば子供でも簡単にできてしまうことなんです」
慌てて否定するも、挙動不審になってしまう自分が嫌いだった。諸葛亮はそんな私を意に介さず、穏やかな調子で続ける。
「今はその道具とやらはありませんね。貴方が貴方であるからこそ、武が際立ち、策が成り、国を興すことが可能になるのです」
諸葛亮は心優しい慰めではなく、淡々と事実だけを述べる。それが彼の素敵なところだと思っていた。口先だけの暖かな言葉は私には届かない。それを分かってのことなのだろう。
「ありがとうございます」
「おや、御礼を言うべきは私の方ですが」
「それでも、ありがとうございます」
彼には今まで私がどんな扱いをされてきたかを詳細に語ったことはない。だけど私の態度で何となく察しがついているのかもと予想していた。
「時に名前殿、私と貴方、二人が揃ってこそお互いを盛り立てられるとは思いませんか」
「ええ、ええ!常々思っています。計算ができるだけの私では駄目で、諸葛亮殿がいるから皆さんのお役に立てているのだと。あっでも諸葛亮殿は私なんかがいなくてもお一人でやっていけると思いますが」
「考えたのです、これを戦の時だけではなく、広く応用すべきと」
よく分からないが、政治利用するということだろうか。半端な言葉は吐けないと続きを待っていると、口元を綻ばせて諸葛亮が続けた。
「私人としての生活も富ませたいと考えておりましてね」
「ああ、そういうことですか。何について知りたいのでしょうか。野菜の肥料の製法?農具の作り方?それとも未来の書の内容でしょうか、出来る限りなんでもお手伝いします」
「"なんでも"」
繰り返して諸葛亮が扇を揺らめかせる。
「今、そう仰いましたね」
なんだかいつもと違う雰囲気だ。諸葛亮はあくまで味方に対するとき、人を誑かすような言葉は吐かない。ただ真っ直ぐに議論を突き合わせるだけだ。それなのにこれは、横から奇襲をかけられているような、煙に巻かれているような、不思議な気持ちにさせられた。
「そろそろ私も身を固めようと思っておりまして」
「あ、いいですね。私丁度良い方を存じてますよ。月英さんと言うんですが」
「月英殿については先日見合いの打診がありました」
「ええ、素敵な方だったでしょう?」
「断りましたが」
苦手な事態が巻き起こって背筋が凍る。歴史がここでまた変わろうとしている。諸葛亮がまだ結婚していないのはおかしいと思っていたが、まさかこんなことになるとは。私は二人を夫婦として推していたのだが。
「名前殿。貴方の類稀なる計算能力と私の策があれば、この世は無敵とは思いませんか。それは何も戦の時だけに発揮されるものではない」
諸葛亮が部屋を歩き回る。一歩一歩、こちらに歩を進めてくるわけでもない。ただ景色を、壁を、外を眺めているはずなのに、自分が追い詰められている気分になるのは何故なのだろう。
「二つの能力が絡み合い、深まれば、より強固な絆となって大事を成す・・・私はそう思うのです」
最後にこちらに向き直ると、私は鼻を押さえた。嗚呼、まずい。この人の前でこんな。
「如何でしょうか、名前殿。私の」
「は」
「は?」
「は、は、は」
机の上の紙に、鼻血が垂れた。
「破廉恥!!!!!」
全速力で逃げた。諸葛亮は呆気にとられたような顔をしていたが、如何することも出来ない。何を言っているんだ、私の能力と彼の能力が?!合わさる?!そして物事を成す?!知識の海で生きてきた私にとってその現象は最早概念的な情交に他ならなかった。興奮で体が波打っている。心臓が爆発しそうだ。あんな涼しげな顔で誘惑してくるなんて、信じられない。計算外、予想外、守備範囲外だ。私には対処できない。逃げるしかない!行き先も分からぬままに廊下をひた走った。ただそれしかできなかった。
「これは計算外でした」
一人残された部屋で諸葛亮が呟く。その言葉は永遠に届かないのだった。
Sex On The Beach・・・魅惑のひととき
1/1ページ