Kiss In The Dark
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「スコーピオン、意味は蠍。酒言葉は『瞳で酔わせて』です」
言葉を含めて渡すと、孫権が頬を赤くした。純情な反応が可愛らしい。その反応を見ながらも両手はすぐに次の作業に入っていた。次は韓当の番だ。後ろで存在感を消しながら行儀良く順番を待っている。
老舗酒蔵の子に生まれた私は小さい頃から酒精の香りの中で育った。無類の酒好きに育ったのだが、小さい頃から甘酒にスイーツにと慣れ親しみ、また年を経てからも日本酒に限らずあらゆる種類に手を出したのも高じて、兄弟一緒にバーを運営していた。突然私が消えてからの予後が心配ではあるが、きっと兄が何とかしてくれているだろう。今私がけりをつけなければならないのは目の前の仕事だ。そう、私は呉に来てからも似たようなことを生業として毎日を過ごしている。
まず始めたのは酒造りだった。無論現代で飲めるような多種多様な、高品質のものを作ることは困難だ。アルコール濃度を上げることや、余計な物質を取り除き雑味を無くすこと、製法を組み合わせて酒の種類を増やす開発、ジュースやフレーバーと合わせてカクテルを作ることに注力していた。そして宴会の度に私は専用の卓を作って注文を聞き、バーの真似事をして将に提供する。勿論完全に再現できるわけではないが、中々どうしてこれが楽しく、充実した日々を過ごしていた。
「お待たせしました。ミモザ、意味は黄色い花。酒言葉は『真心』」
韓当がにこにこと受け取って卓に戻っていく。微笑ましい。こういう瞬間が酒の良さであると実感するのだ。さてお次は。
「何度もすまないが、次は俺だ」
魯粛だ。既にほんのりと酔っているのか、顔が赤い。バーにはやはり常連と珍しいもの見たさの一見客の二種類がいるが、彼は間違いなく一流の常連であると言えた。
「任せる。"いつもの"ようなものを頼む」
魯粛は度数が高めでフルーティーなものを好んだ。頭の中でレシピを検索しながら酒をシェイカーに注いでいく。
「サイドカー、乗り物の名前です。酒言葉は『いつも二人で』」
「ああ、良い趣向だ」
盃を支えた手が僅かに重なって震える。いつもは客に出してから名前を言うのだが、この時代の盃はコップのように背が高く倒れやすい。不安で手を添えているとこうして当たることがままあった。
誰と手が当たっても気にならない。相手は客、自分は今宵の夜を作り出すバーテンダー。それなのに、この男相手だと心が揺り動かされてしまうことに困っていた。
「時に名前。我が家で酒宴を行うのだが、お前も来てくれないか」
手持ち無沙汰に盃を拭いていると、魯粛がカウンターで呑んでいる。
「いいですよ。いつですか?何人いらっしゃいますか?」
「十日後、私を含め五人だ」
カレンダーを繰って予定を確認する。その日なら大丈夫だ。
「外だと沢山の種類は作れませんが、大丈夫ですか?」
「勿論だ、共に楽しむことが目的だからな。その身ひとつで来てくれてもいい」
そんなわけがあるまいと苦笑して首を振る。新参者同士で仲良くやってきた魯粛と名前だ。なるべく楽しんでもらいたかった。
全種類は持って行けないから、彼の好みの酒を多めに携えていこう。弾む胸を押さえながら、名前はその日を待った。
言葉を含めて渡すと、孫権が頬を赤くした。純情な反応が可愛らしい。その反応を見ながらも両手はすぐに次の作業に入っていた。次は韓当の番だ。後ろで存在感を消しながら行儀良く順番を待っている。
老舗酒蔵の子に生まれた私は小さい頃から酒精の香りの中で育った。無類の酒好きに育ったのだが、小さい頃から甘酒にスイーツにと慣れ親しみ、また年を経てからも日本酒に限らずあらゆる種類に手を出したのも高じて、兄弟一緒にバーを運営していた。突然私が消えてからの予後が心配ではあるが、きっと兄が何とかしてくれているだろう。今私がけりをつけなければならないのは目の前の仕事だ。そう、私は呉に来てからも似たようなことを生業として毎日を過ごしている。
まず始めたのは酒造りだった。無論現代で飲めるような多種多様な、高品質のものを作ることは困難だ。アルコール濃度を上げることや、余計な物質を取り除き雑味を無くすこと、製法を組み合わせて酒の種類を増やす開発、ジュースやフレーバーと合わせてカクテルを作ることに注力していた。そして宴会の度に私は専用の卓を作って注文を聞き、バーの真似事をして将に提供する。勿論完全に再現できるわけではないが、中々どうしてこれが楽しく、充実した日々を過ごしていた。
「お待たせしました。ミモザ、意味は黄色い花。酒言葉は『真心』」
韓当がにこにこと受け取って卓に戻っていく。微笑ましい。こういう瞬間が酒の良さであると実感するのだ。さてお次は。
「何度もすまないが、次は俺だ」
魯粛だ。既にほんのりと酔っているのか、顔が赤い。バーにはやはり常連と珍しいもの見たさの一見客の二種類がいるが、彼は間違いなく一流の常連であると言えた。
「任せる。"いつもの"ようなものを頼む」
魯粛は度数が高めでフルーティーなものを好んだ。頭の中でレシピを検索しながら酒をシェイカーに注いでいく。
「サイドカー、乗り物の名前です。酒言葉は『いつも二人で』」
「ああ、良い趣向だ」
盃を支えた手が僅かに重なって震える。いつもは客に出してから名前を言うのだが、この時代の盃はコップのように背が高く倒れやすい。不安で手を添えているとこうして当たることがままあった。
誰と手が当たっても気にならない。相手は客、自分は今宵の夜を作り出すバーテンダー。それなのに、この男相手だと心が揺り動かされてしまうことに困っていた。
「時に名前。我が家で酒宴を行うのだが、お前も来てくれないか」
手持ち無沙汰に盃を拭いていると、魯粛がカウンターで呑んでいる。
「いいですよ。いつですか?何人いらっしゃいますか?」
「十日後、私を含め五人だ」
カレンダーを繰って予定を確認する。その日なら大丈夫だ。
「外だと沢山の種類は作れませんが、大丈夫ですか?」
「勿論だ、共に楽しむことが目的だからな。その身ひとつで来てくれてもいい」
そんなわけがあるまいと苦笑して首を振る。新参者同士で仲良くやってきた魯粛と名前だ。なるべく楽しんでもらいたかった。
全種類は持って行けないから、彼の好みの酒を多めに携えていこう。弾む胸を押さえながら、名前はその日を待った。
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