Honeymoon
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※アプリ主人公
「ただいま〜」
古びた扉を開けると、前に会った時よりほんの少し窶れた姿の彼女がそこにいた。手入れしきれなくなった髪の毛が跳ねていても、服の裾が解れていても、目の奥に潜む鋭さだけは失わなわれずに私を射抜く。
「何普通に入って来てるのよ」
「怒らないで。ごめんね時間掛かっちゃって」
「そこじゃないわよ」
「ちゃんとお菓子も買ってきたからさ」
ほら、と包みを持ち上げると、片手で顔を覆っていた。私は愚鈍な傭兵なので、いつも董白ちゃんを怒らせてしまう。今回もお菓子を買って来いと言われ、探している間にその姿は人混みの中へ消えていた。この前は魚が食べたいから捕りに行けと言われ、その前は孤児に分けてやりたいから布を買いにいけと言われ、そのまた前は暴虐を尽くす軍がいるから懲らしめてやれと言われて側を離れた。しかし帰ってくる度根城はもぬけの殻、彼女の分の荷物だけが消えている。遣いを果たすのが遅い私に飽き飽きして、待てずに去ってしまったのだろう。毎回申し訳なく思いながら人伝にその影を追って、気配を探して、そしてご機嫌伺いの品を手に董白ちゃんの元へ帰る。そんな日々を何度繰り返しただろう。
「良い加減気付きなさいよ」
「何のこと?」
「お前は私といるべきじゃないの」
「またまた〜、下僕になれって言ったのはそっちじゃん」
「昔のことは忘れて」
目を逸らす彼女は、傲慢で世間を知らなかった頃とは違う。背も伸びて、権力者の椅子から転がり落ち、民草の生活も知って随分と温和になった。過去の話をすると、幼かった自分が恥ずかしくなるとあまり喜ばれない。だけど私は負けん気の強い彼女も好きだった。そう、出会ったあの日から今に至るまでずっと、彼女は私の主として君臨している。
「お前の武は天下を動かす。私の元で腐らせるべきじゃないわ」
台所に包みを置いて、鍋にお水を入れて火に掛ける。今回は奮発してお茶もほんの少しだけ買って来たのだ。城に居た頃を思い出して、懐かしんでくれるかと思って。
「ちょっと、聞いてるの」
「うんうん、私のこと心配してくれてるんだね」
「真面目に聞きなさいよ」
「聞いてる聞いてる。今日は北方のお茶だよ」
はあ、と大きな溜息が部屋に降りる。お嬢様だった董白ちゃんは生活力がない。私が戦に出て日銭を稼ぎ、住居を作り、汚れた服を洗い、生活が成り立っている。食料の買い出しや料理、裁縫については彼女もしてくれるが、一人ではままならないのが現実だ。何処ぞの国に与せよと言われても、置いていけるはずがなかった。意地っ張りで、高慢で、しかし気高く有り続ける人を。
「私は董白ちゃんの側にいるのが一番幸せだよ」
二人分のお茶。二人分のお菓子。机に出すと、喜び半分呆れ半分の彼女が頬を染めていた。
「後悔するわよ」
「しないよ」
「もっと相応しい主がいるわ」
「私は傭兵だよ?仕える相手は自分で決める」
頬張ると、ほの甘い餡が口に広がった。促すと、渋々董白ちゃんがお菓子に手を付けた。やっと落ちた。ほくそ笑んでいると、湯呑みの中で茶柱が立っていた。
Honeymoon・・・幸福はいつも貴方と
「ただいま〜」
古びた扉を開けると、前に会った時よりほんの少し窶れた姿の彼女がそこにいた。手入れしきれなくなった髪の毛が跳ねていても、服の裾が解れていても、目の奥に潜む鋭さだけは失わなわれずに私を射抜く。
「何普通に入って来てるのよ」
「怒らないで。ごめんね時間掛かっちゃって」
「そこじゃないわよ」
「ちゃんとお菓子も買ってきたからさ」
ほら、と包みを持ち上げると、片手で顔を覆っていた。私は愚鈍な傭兵なので、いつも董白ちゃんを怒らせてしまう。今回もお菓子を買って来いと言われ、探している間にその姿は人混みの中へ消えていた。この前は魚が食べたいから捕りに行けと言われ、その前は孤児に分けてやりたいから布を買いにいけと言われ、そのまた前は暴虐を尽くす軍がいるから懲らしめてやれと言われて側を離れた。しかし帰ってくる度根城はもぬけの殻、彼女の分の荷物だけが消えている。遣いを果たすのが遅い私に飽き飽きして、待てずに去ってしまったのだろう。毎回申し訳なく思いながら人伝にその影を追って、気配を探して、そしてご機嫌伺いの品を手に董白ちゃんの元へ帰る。そんな日々を何度繰り返しただろう。
「良い加減気付きなさいよ」
「何のこと?」
「お前は私といるべきじゃないの」
「またまた〜、下僕になれって言ったのはそっちじゃん」
「昔のことは忘れて」
目を逸らす彼女は、傲慢で世間を知らなかった頃とは違う。背も伸びて、権力者の椅子から転がり落ち、民草の生活も知って随分と温和になった。過去の話をすると、幼かった自分が恥ずかしくなるとあまり喜ばれない。だけど私は負けん気の強い彼女も好きだった。そう、出会ったあの日から今に至るまでずっと、彼女は私の主として君臨している。
「お前の武は天下を動かす。私の元で腐らせるべきじゃないわ」
台所に包みを置いて、鍋にお水を入れて火に掛ける。今回は奮発してお茶もほんの少しだけ買って来たのだ。城に居た頃を思い出して、懐かしんでくれるかと思って。
「ちょっと、聞いてるの」
「うんうん、私のこと心配してくれてるんだね」
「真面目に聞きなさいよ」
「聞いてる聞いてる。今日は北方のお茶だよ」
はあ、と大きな溜息が部屋に降りる。お嬢様だった董白ちゃんは生活力がない。私が戦に出て日銭を稼ぎ、住居を作り、汚れた服を洗い、生活が成り立っている。食料の買い出しや料理、裁縫については彼女もしてくれるが、一人ではままならないのが現実だ。何処ぞの国に与せよと言われても、置いていけるはずがなかった。意地っ張りで、高慢で、しかし気高く有り続ける人を。
「私は董白ちゃんの側にいるのが一番幸せだよ」
二人分のお茶。二人分のお菓子。机に出すと、喜び半分呆れ半分の彼女が頬を染めていた。
「後悔するわよ」
「しないよ」
「もっと相応しい主がいるわ」
「私は傭兵だよ?仕える相手は自分で決める」
頬張ると、ほの甘い餡が口に広がった。促すと、渋々董白ちゃんがお菓子に手を付けた。やっと落ちた。ほくそ笑んでいると、湯呑みの中で茶柱が立っていた。
Honeymoon・・・幸福はいつも貴方と
1/1ページ