Grenadine Splash
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天気に恵まれ、心地いい風が頬を撫でる日、城の庭には家族の姿があった。誰が言い出したのか、五大将軍とその妻、子供が集まって宴会を開くことになったのだ。地位のある者達の集まりとあって、座布団に低めの卓、給仕をする女官達も揃っている。そこには于禁とその妻、名前の姿もあった。長男と次男がそれぞれ手を繋ぎ、夫が娘を抱いている。席に着くとやんちゃな張遼の息子が妹を引き連れて各将に挨拶回りをしていた。それを追い掛ける張遼の妻と、息子の勇姿を見守らんとする張遼のコントラストが愉快で笑った。
年長者の于禁が開会の挨拶をする。
「この様な宴席を開催出来るのも殿の御威光あってこそ。うつつを抜かさず、皆厳粛に静謐な時間を楽しむように」
そんなこと言うから固くなるのよね。
頭を抱えたくなったが他の人の手前変な仕草はできない。大人達は厳かに聞いているのだが、子供は年端の行かない者からわらわらと動き出して、既に挨拶中の夫の足に絡み付いている。先日忙しいと言うので我が家で預かった、楽進の子が強面に懐いていた。
「それでは杯を持て。乾杯」
皆々が杯を掲げ、声が空に響き渡った。全員が揃って平和な時代を迎えられた感激が名前の胸に焼きついた。
「名前殿、久々でござるな」
「本当に。子育てが一段落したので、今度お城に遊びに行きたいです」
「名前殿!先日は我が子がお世話になりました!」
「とんでもない!お忙しい時はまたどうぞ頼って下さいな」
「私の犬は毛並みが艶々でね。とても美しいんだ」
「僕の家にも猫がいるよ。将军って言うんだけど」
上から、徐晃、楽進、張郃の息子と名前の息子の会話である。意外なことに張郃は五人も子供を引き連れていた。
長年魏の戦に貢献してきた名前も、子育てが忙しくこうして皆の面々を拝むのは久々だった。大いに飲んで、大いに笑った。楽進の子は素直で、張郃の子供達は自由、張遼の子は活発で、徐晃の子は穏やかで、我が子は真面目だった。折り目正しく座っている息子達を皆珍しそうに見ていた。
「于禁殿。そなたの子供達はやはり父に似てか物怖じせず座っておるな。何か秘訣でもお有りか」
張遼が問う。こう見えて中々のイクメンである夫が仰々しく答えた。
「子とは言え小さな人士の一人である。如何なるときも成人と変わらぬ厳格な躾を成さねばならん」
おお!と声が上がった。講釈が続く中で、最近やっと安定して歩くようになり、今が楽しくて堪らないと言った表情の娘が背後から夫に近付いている。
「男児、女児とて同じこと。平等に教えを齎すことがやがて大義を」
「爸爸、ちゅー」
(ああ、やっちゃった)
演説を遮って娘が夫に抱きつき、その頬に口付けを贈った。いつも兄弟間や名前としていることだ、彼女にとっては愛情表現の一つなのだろう。しかし夫にそうしているところを見たことはなかった。まさかここに来て初めてやらかすとは予想外だった。
場が静まった。誰もが言葉を失って于禁の顔色を窺っている。飽きた娘はその大きな膝の上で遊び始めた。その顔を下から上へ血色が登って行くかと思えば、咳払いをして娘を抱き上げた。
「万人の親にとって子は鎹である。是非も無い」
妻連中が心の中で黄色い悲鳴を上げた。張郃が『愛!何よりも美しい!』と身悶え、徐晃が『于禁殿も人の子であったか!』と囃し立てる。親が盛り上がった様子を察して、子供達の笑い声がきゃらきゃらと光った。
ふと、卓の陰に隠れて、于禁が名前の手を握った。誰かに見られたらどうすると言うのか。しかし振り払える心などあるはずもない。
幸せだ。夫がいて、子供達がいて、共に戦火を乗り越えてきた仲間達がいて、皆が皆笑っている。今まで生きてきたどの瞬間とも異なる歓びがそこにはあった。
大きい手を握り返した。広い宴会場の中で、二人だけの密やかな逢瀬がそこにはあった。
Grenadine Splash・・・色とりどりの幸せ
年長者の于禁が開会の挨拶をする。
「この様な宴席を開催出来るのも殿の御威光あってこそ。うつつを抜かさず、皆厳粛に静謐な時間を楽しむように」
そんなこと言うから固くなるのよね。
頭を抱えたくなったが他の人の手前変な仕草はできない。大人達は厳かに聞いているのだが、子供は年端の行かない者からわらわらと動き出して、既に挨拶中の夫の足に絡み付いている。先日忙しいと言うので我が家で預かった、楽進の子が強面に懐いていた。
「それでは杯を持て。乾杯」
皆々が杯を掲げ、声が空に響き渡った。全員が揃って平和な時代を迎えられた感激が名前の胸に焼きついた。
「名前殿、久々でござるな」
「本当に。子育てが一段落したので、今度お城に遊びに行きたいです」
「名前殿!先日は我が子がお世話になりました!」
「とんでもない!お忙しい時はまたどうぞ頼って下さいな」
「私の犬は毛並みが艶々でね。とても美しいんだ」
「僕の家にも猫がいるよ。将军って言うんだけど」
上から、徐晃、楽進、張郃の息子と名前の息子の会話である。意外なことに張郃は五人も子供を引き連れていた。
長年魏の戦に貢献してきた名前も、子育てが忙しくこうして皆の面々を拝むのは久々だった。大いに飲んで、大いに笑った。楽進の子は素直で、張郃の子供達は自由、張遼の子は活発で、徐晃の子は穏やかで、我が子は真面目だった。折り目正しく座っている息子達を皆珍しそうに見ていた。
「于禁殿。そなたの子供達はやはり父に似てか物怖じせず座っておるな。何か秘訣でもお有りか」
張遼が問う。こう見えて中々のイクメンである夫が仰々しく答えた。
「子とは言え小さな人士の一人である。如何なるときも成人と変わらぬ厳格な躾を成さねばならん」
おお!と声が上がった。講釈が続く中で、最近やっと安定して歩くようになり、今が楽しくて堪らないと言った表情の娘が背後から夫に近付いている。
「男児、女児とて同じこと。平等に教えを齎すことがやがて大義を」
「爸爸、ちゅー」
(ああ、やっちゃった)
演説を遮って娘が夫に抱きつき、その頬に口付けを贈った。いつも兄弟間や名前としていることだ、彼女にとっては愛情表現の一つなのだろう。しかし夫にそうしているところを見たことはなかった。まさかここに来て初めてやらかすとは予想外だった。
場が静まった。誰もが言葉を失って于禁の顔色を窺っている。飽きた娘はその大きな膝の上で遊び始めた。その顔を下から上へ血色が登って行くかと思えば、咳払いをして娘を抱き上げた。
「万人の親にとって子は鎹である。是非も無い」
妻連中が心の中で黄色い悲鳴を上げた。張郃が『愛!何よりも美しい!』と身悶え、徐晃が『于禁殿も人の子であったか!』と囃し立てる。親が盛り上がった様子を察して、子供達の笑い声がきゃらきゃらと光った。
ふと、卓の陰に隠れて、于禁が名前の手を握った。誰かに見られたらどうすると言うのか。しかし振り払える心などあるはずもない。
幸せだ。夫がいて、子供達がいて、共に戦火を乗り越えてきた仲間達がいて、皆が皆笑っている。今まで生きてきたどの瞬間とも異なる歓びがそこにはあった。
大きい手を握り返した。広い宴会場の中で、二人だけの密やかな逢瀬がそこにはあった。
Grenadine Splash・・・色とりどりの幸せ
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