飯事
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暇を持て余した私は、僅かでも罪滅ぼしになればと家中の掃除を始めた。手始めに居間、台所。その次に紫鸞くんの部屋。事前に許可は取っておいた。彼の部屋は物が少なくて、直ぐに整頓し終わってしまった。最後に自分の部屋に取り掛かり、部屋と家具の隅々まで手を入れることにした。
鏡台の外に化粧品を並べていると、奥の方に何か引っ掛かっていた。抽斗を全て出して調べてみると、間に小さな物が挟まっていた。銀色で円柱状、縦に切り込みが入っている。
(これ、紫鸞くんのイヤーカフだ)
見覚えがあった。彼がいつも耳につけているものだ。しかし何故私の部屋にあるのだろう。手元にある物には、彼の名前が彫り込まれている。紫鸞くんが着けている物は、うろ覚えだが無地だったはずだ。そして鏡台の隅に、隠すように置いてあったこと。私は一つの可能性に思い当たって愕然とした。
もしかして、盗んだんじゃないだろうか。私が、紫鸞くんの物を。
ゲームをプレイしている時から、紫鸞くんは私の憧れだった。こんな人がリアルでいたら直ぐ惚れてしまうだろうと思っていた。そしてその夢が現実となり、記憶を失う前の私にも桃色の火を灯すようになった。しかしあの貂蝉や尚香ですら心を奪えなかった色男に相手にされるはずもなく、恋心は制御不可能な所まで高じ、せめてもの慰めとして装身具を選んだのではないだろうか。きっと彼の予備を勝手に拝借してきたのだろうと、身勝手な自分に怒りが湧いた。同時に気色悪くも思った。ストーカー行為を働いておきながら二人ひとつ屋根の下でのうのうと暮らしているとは、病的な恋に他ならなかった。記憶を失ったことについて、これほど後悔したことはない。このイヤーカフについて、彼が真実を知ることは永遠にないだろう。自分がどれだけ臆病な存在か知らしめられて苦しいが、この期に及んでまだ盗みについて彼に打ち明ける勇気がなかった。いつまで此処に置いてもらえるか分からない。飽きて外に出してもらえるかもしれないという希望もある。しかし彼と離れることになったとしても、疎まれて放逐されたくはないという我が身可愛さの思いを抑えることができなかった。もう一生会えなくてもいい。でも、思い出が綺麗なまま別れの日が来て欲しい。彼に冷たい目を向けられることが怖い。どれだけ愚かしい女なのだろうと自分でも思う。だけど、気持ちに抗うことが出来なかった。
肌見放さず持ち歩いている巾着にそれを放り込んだ。私が去った後、部屋をまさぐられて紫鸞くんに見つけられないようにするためだ。両手で握りしめる、罪の証。精根尽き果ててしまい、巾着を握りしめてそのまま眠ってしまった。
鏡台の外に化粧品を並べていると、奥の方に何か引っ掛かっていた。抽斗を全て出して調べてみると、間に小さな物が挟まっていた。銀色で円柱状、縦に切り込みが入っている。
(これ、紫鸞くんのイヤーカフだ)
見覚えがあった。彼がいつも耳につけているものだ。しかし何故私の部屋にあるのだろう。手元にある物には、彼の名前が彫り込まれている。紫鸞くんが着けている物は、うろ覚えだが無地だったはずだ。そして鏡台の隅に、隠すように置いてあったこと。私は一つの可能性に思い当たって愕然とした。
もしかして、盗んだんじゃないだろうか。私が、紫鸞くんの物を。
ゲームをプレイしている時から、紫鸞くんは私の憧れだった。こんな人がリアルでいたら直ぐ惚れてしまうだろうと思っていた。そしてその夢が現実となり、記憶を失う前の私にも桃色の火を灯すようになった。しかしあの貂蝉や尚香ですら心を奪えなかった色男に相手にされるはずもなく、恋心は制御不可能な所まで高じ、せめてもの慰めとして装身具を選んだのではないだろうか。きっと彼の予備を勝手に拝借してきたのだろうと、身勝手な自分に怒りが湧いた。同時に気色悪くも思った。ストーカー行為を働いておきながら二人ひとつ屋根の下でのうのうと暮らしているとは、病的な恋に他ならなかった。記憶を失ったことについて、これほど後悔したことはない。このイヤーカフについて、彼が真実を知ることは永遠にないだろう。自分がどれだけ臆病な存在か知らしめられて苦しいが、この期に及んでまだ盗みについて彼に打ち明ける勇気がなかった。いつまで此処に置いてもらえるか分からない。飽きて外に出してもらえるかもしれないという希望もある。しかし彼と離れることになったとしても、疎まれて放逐されたくはないという我が身可愛さの思いを抑えることができなかった。もう一生会えなくてもいい。でも、思い出が綺麗なまま別れの日が来て欲しい。彼に冷たい目を向けられることが怖い。どれだけ愚かしい女なのだろうと自分でも思う。だけど、気持ちに抗うことが出来なかった。
肌見放さず持ち歩いている巾着にそれを放り込んだ。私が去った後、部屋をまさぐられて紫鸞くんに見つけられないようにするためだ。両手で握りしめる、罪の証。精根尽き果ててしまい、巾着を握りしめてそのまま眠ってしまった。
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