人狼
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気付けば寝台の上だった。重い体を何とか起こすと、紫鸞くんが私の膝辺りに上半身を乗せて寝ていた。恐らく夜通し看病してくれたのだろう。ごめんね。心の中で繰り返す。迷惑掛けてごめんね。紫鸞くんだって疲れるのに、看病させてごめんね。面倒な女が居候していてごめんね。眠っているのをいいことに、こっそり彼の手を握った。その温かさを確かめる。私には不相応なものだったのだ、この温度は。
気配を感じたのか、紫鸞くんの目がゆっくりと開かれた。名残惜しい。このままずっと見つめていたかった。
「起きたのか」
何度か瞬きをして、膝から体温が離れていった。
「今元化を呼んで・・・」
紫鸞くんが私の顔を見た途端に固まった。泣いているのに気付いたらしい。戸惑っている様子だった。だけど、決意したことは伝えなければ。
「私ね、買い物に出ているときに刺されたの」
藤色の目が見開かれた。
「果物を、買いに行ったんだけどね。そろそろ紫鸞くんが帰ってくる頃だと思ったのかな。好きだって言ってた柑橘が旬だって噂だったから、沢山買ったの。それで、帰り道に誰かに話し掛けられた。知り合いだった。何か話し合っているうちに口論になってね。それで、逃げようとしたの。危険を感じたんだと思う。だけど、その瞬間刺されてた。痛くて、怖くて、そのまま逃げたんだ。夢中で走ってきたけれど、痛みと出血でどんどん意識が遠退いて。自分が庵に辿り着いたことさえ分からなかった。そこからは何も覚えていないの。でもね、こうやって記憶が少し戻ってきても、刺した人が誰だったのか思い出せない。思い出せないけど、分かるの。私はもう、紫鸞くんの側にいるべきじゃないよ。今まで沢山迷惑を掛けてきたけど、今回襲ってきたのだって紫鸞くんの刺客だったのかもしれない。私が生きて近くを彷徨いていたら、居場所が露見して、次は紫鸞くんが狙われる。だから、もう離れた方がいいんだと思う。散歩している間に見つけた食堂のおばちゃんとね、仲良くなったんだ。働き口を探しているなら、住み込みで雇ってもいいって。だから、此処を出ていくね。この後荷物をまとめるから」
「駄目だ」
話しているうちにみるみる紫鸞くんは悲しげな顔つきになって、とうとう俯いてしまった。前髪で表情が見えない。
「駄目なんだ」
「紫鸞くん、」
「俺は、あんたがいないと駄目なんだ」
彼の声が震えている。空気が重い。何か選択を誤ったような気がする。彼が再びゆっくりと顔を上げたとき、その双眼が射抜くように私を捉えた。
「許してくれとは言わない。だが、あんたを行かせてやることはできない」
その目は濁り、仄暗い意志が宿っていた。
気配を感じたのか、紫鸞くんの目がゆっくりと開かれた。名残惜しい。このままずっと見つめていたかった。
「起きたのか」
何度か瞬きをして、膝から体温が離れていった。
「今元化を呼んで・・・」
紫鸞くんが私の顔を見た途端に固まった。泣いているのに気付いたらしい。戸惑っている様子だった。だけど、決意したことは伝えなければ。
「私ね、買い物に出ているときに刺されたの」
藤色の目が見開かれた。
「果物を、買いに行ったんだけどね。そろそろ紫鸞くんが帰ってくる頃だと思ったのかな。好きだって言ってた柑橘が旬だって噂だったから、沢山買ったの。それで、帰り道に誰かに話し掛けられた。知り合いだった。何か話し合っているうちに口論になってね。それで、逃げようとしたの。危険を感じたんだと思う。だけど、その瞬間刺されてた。痛くて、怖くて、そのまま逃げたんだ。夢中で走ってきたけれど、痛みと出血でどんどん意識が遠退いて。自分が庵に辿り着いたことさえ分からなかった。そこからは何も覚えていないの。でもね、こうやって記憶が少し戻ってきても、刺した人が誰だったのか思い出せない。思い出せないけど、分かるの。私はもう、紫鸞くんの側にいるべきじゃないよ。今まで沢山迷惑を掛けてきたけど、今回襲ってきたのだって紫鸞くんの刺客だったのかもしれない。私が生きて近くを彷徨いていたら、居場所が露見して、次は紫鸞くんが狙われる。だから、もう離れた方がいいんだと思う。散歩している間に見つけた食堂のおばちゃんとね、仲良くなったんだ。働き口を探しているなら、住み込みで雇ってもいいって。だから、此処を出ていくね。この後荷物をまとめるから」
「駄目だ」
話しているうちにみるみる紫鸞くんは悲しげな顔つきになって、とうとう俯いてしまった。前髪で表情が見えない。
「駄目なんだ」
「紫鸞くん、」
「俺は、あんたがいないと駄目なんだ」
彼の声が震えている。空気が重い。何か選択を誤ったような気がする。彼が再びゆっくりと顔を上げたとき、その双眼が射抜くように私を捉えた。
「許してくれとは言わない。だが、あんたを行かせてやることはできない」
その目は濁り、仄暗い意志が宿っていた。
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