商団
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西方の商団が市を開くと告知がありました。名前殿に誘われて、俺達は二人で物見遊山に出掛けることになりました。馴染みの女官に土産を買いたいのだということで、俺が伴に選ばれたようです。いつも俺から居酒屋に誘うばかりだったところ、初めて貴方に誘われたので俺は浮足立っていました。あまりに溶けた顔をしていたのか、前日に文若殿から指摘を受けた程でした。
当日はいつに無く、早く起きて準備を整えました。俺は朝が弱い方なのですが、貴方の力あってこそ今回は強さに変わりました。出迎えに上がったとき、言葉を失ったのを覚えています。貴方は普段の仕事着とも、休みの普段着とも異なる洒落着を纏っていたからです。思わず長文でどれ程可愛らしいか述べたくなってしまった心中を、酒が入っていないことも助けになりなんとか留めることが出来ました。軍師ともあろう者が焦りを抱かされるとは、貴方の罪深さが身に沁みました。
市場に入ってまず目に入ったのは極彩色の毛織物でした。曹操殿から賜った絨毯のように、椅子に乗せる小さな物から、防寒になる衣服までが並んでいました。
「見て下さい、あの帽子。きっと荀攸殿に似合いますよ」
貴方がこの柔らかな帽子を被っていたらどんなに愛らしいか、脳内に描くことを止められませんでした。
その次には香、香油の類。地位が上がるに連れて、俺達も赴く場所によって香を使うことがあります。貴方にも一つ差し上げようか迷いましたが、好みの香りを纏って近付かれては理性を保てる自信が無く、迷いました。しかし一つずつ香りを嗅ぎ、顔を顰める貴方を前に計画は霧散しました。
「なんだか個性的なお香ばかりですね」
「そうですか」
「荀攸殿はいつもいい香りがしますよね。何か使われているんですか?」
俺は香に造詣が深いわけではありません。今までも無頓着で、使ったことなどありませんでした。ですが少しでも貴方の気を引こうと使い始めたことを、吐露してしまいたくなりました。
そのまた次に目をつけたのは硝子細工の店でした。光を通す硝子が透けて、白い掌の中で色とりどりの光を放ちました。前に陣取って長く悩んでいる貴方を横目に、玉佩を買いました。自分のものではありません、贈ろうと考えていたのです。暫く待っているといつの間にか何か購入したのか、鞄に財布を仕舞いながら此方へ駆けてきましたね。
「すみません、夢中になってしまって」
「楽しまれたようで何よりです」
「お気遣いありがとうございます」
「いえ、本音です」
そう言うと弾けるように笑うのです。貴方は俺が率直に意見を言うと面白そうにしますが、これが俺です。
最後に屋台で買った摩訶不思議な味のする焼き物を食べ終わったあと、帰路につく段になって貴方がおずおずと差し出しました。
「細やかですが、いつものお礼です」
驚きました。玉佩でした。硝子玉のついたそれは、まさしく俺が貴方に贈ろうと買ったものの色違いだったからです。俺の方も玉佩を取り出すと、心底驚いた眼をして固辞しましたよね。
「え、いや、そんな、お世話になっているのは私の方で・・・!」
「俺こそ貴方にいつも支えられています」
「まさか」
互いに玉佩を押し付け合いましたが、最後には胸に抱いて顔を赤くする貴方がいました。
「本当に嬉しいです。大事にしますね」
透明な硝子玉のついた玉佩。そこに貴方の色が移って、永遠に変わらず、互いの心を持ち歩けたらいいのにという考えが頭を過りました。
当日はいつに無く、早く起きて準備を整えました。俺は朝が弱い方なのですが、貴方の力あってこそ今回は強さに変わりました。出迎えに上がったとき、言葉を失ったのを覚えています。貴方は普段の仕事着とも、休みの普段着とも異なる洒落着を纏っていたからです。思わず長文でどれ程可愛らしいか述べたくなってしまった心中を、酒が入っていないことも助けになりなんとか留めることが出来ました。軍師ともあろう者が焦りを抱かされるとは、貴方の罪深さが身に沁みました。
市場に入ってまず目に入ったのは極彩色の毛織物でした。曹操殿から賜った絨毯のように、椅子に乗せる小さな物から、防寒になる衣服までが並んでいました。
「見て下さい、あの帽子。きっと荀攸殿に似合いますよ」
貴方がこの柔らかな帽子を被っていたらどんなに愛らしいか、脳内に描くことを止められませんでした。
その次には香、香油の類。地位が上がるに連れて、俺達も赴く場所によって香を使うことがあります。貴方にも一つ差し上げようか迷いましたが、好みの香りを纏って近付かれては理性を保てる自信が無く、迷いました。しかし一つずつ香りを嗅ぎ、顔を顰める貴方を前に計画は霧散しました。
「なんだか個性的なお香ばかりですね」
「そうですか」
「荀攸殿はいつもいい香りがしますよね。何か使われているんですか?」
俺は香に造詣が深いわけではありません。今までも無頓着で、使ったことなどありませんでした。ですが少しでも貴方の気を引こうと使い始めたことを、吐露してしまいたくなりました。
そのまた次に目をつけたのは硝子細工の店でした。光を通す硝子が透けて、白い掌の中で色とりどりの光を放ちました。前に陣取って長く悩んでいる貴方を横目に、玉佩を買いました。自分のものではありません、贈ろうと考えていたのです。暫く待っているといつの間にか何か購入したのか、鞄に財布を仕舞いながら此方へ駆けてきましたね。
「すみません、夢中になってしまって」
「楽しまれたようで何よりです」
「お気遣いありがとうございます」
「いえ、本音です」
そう言うと弾けるように笑うのです。貴方は俺が率直に意見を言うと面白そうにしますが、これが俺です。
最後に屋台で買った摩訶不思議な味のする焼き物を食べ終わったあと、帰路につく段になって貴方がおずおずと差し出しました。
「細やかですが、いつものお礼です」
驚きました。玉佩でした。硝子玉のついたそれは、まさしく俺が貴方に贈ろうと買ったものの色違いだったからです。俺の方も玉佩を取り出すと、心底驚いた眼をして固辞しましたよね。
「え、いや、そんな、お世話になっているのは私の方で・・・!」
「俺こそ貴方にいつも支えられています」
「まさか」
互いに玉佩を押し付け合いましたが、最後には胸に抱いて顔を赤くする貴方がいました。
「本当に嬉しいです。大事にしますね」
透明な硝子玉のついた玉佩。そこに貴方の色が移って、永遠に変わらず、互いの心を持ち歩けたらいいのにという考えが頭を過りました。
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