王命
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初めて貴方に会ったのは戦場の軍議においてのことでした。曹操殿が遊興で拾ってきた娘なのだと聞いていましたが、義理の娘にするだとか、側妻にするだとか、あらゆる噂が立っていました。それら全ての附票を打ち消すように震えていたのを思い出します。男ばかりの場において、浮いていると言わざるを得ませんでした。作戦を聞きながら、顔を青くしたり、安心した表情になったりしつつ、一言も発しませんでしたね。最後に曹操殿が声を掛けるまでは。
「名前よ、おぬしの意見を聞こう」
『何故私が』という顔になったのを見て郭嘉殿が吹き出したのを、夏侯淵殿が密かに制していました。
「皆さんの作戦はほぼ完璧なのですが」
謙虚な話口でありながら、近くの岩場から伏兵が出現する可能性を言及されたとき、その場が紛糾しました。まさか敵兵が現れるとは思えないような場所だったからです。流れが急で、橋を掛けることもできず、馬で渡ることもできないような川のほとりでした。
「敵軍には泳ぎの得意な傭兵が雇われています。一隊でもいいので警戒する部隊を配置して下さい」
合わせた両手を真っ白になるまで握り締めるので、それでは血が止まってしまうと場違いにも考えていたことを覚えています。
誰もが反対しました。そう、俺以外はそうでした。
「毛色の違う傭兵が陣に加わったという報告を受けています。念のため、俺が岩場を監視します」
他でもない俺の言葉です、その場は直ぐには収まりませんでした。当然です。まだ曹魏に与して日が浅い者同士の言葉ですから。しかし曹操殿の鶴の一声で、一部隊だけを岩場に置くことになりました。
「この者は先の戦、郭嘉と荀&♯X5f67;の策を言い当ててみせた。此度も手並みを拝見するとしよう」
その言葉を聞いて、泣き出しそうな顔になった女性を誰もが哀れに思ったでしょう。曹操殿も、貴方をまだ試していたのです。気弱な子羊が、味方のいない平野で責め立てられている状況でした。軍議が終わってから、貴方が話しかけに来ました。
「荀攸殿」
「はい。何か?」
「この度は花形を他の方に譲ることになり申し訳ありません」
俺は敵兵の気を逸らす役割から外されていました。
「敵は精鋭です。どうかご武運を」
そう言いながら精一杯に頭を下げる貴方を見て、噂は噂でしかないのだと悟りました。これでも俺も軍師の端くれです。口を開くことすら恐れている人間が覚悟を持って謝りに来る、誠心誠意のその態度。どうにも男を籠絡するような妖女には見えなかったのです。
「名前よ、おぬしの意見を聞こう」
『何故私が』という顔になったのを見て郭嘉殿が吹き出したのを、夏侯淵殿が密かに制していました。
「皆さんの作戦はほぼ完璧なのですが」
謙虚な話口でありながら、近くの岩場から伏兵が出現する可能性を言及されたとき、その場が紛糾しました。まさか敵兵が現れるとは思えないような場所だったからです。流れが急で、橋を掛けることもできず、馬で渡ることもできないような川のほとりでした。
「敵軍には泳ぎの得意な傭兵が雇われています。一隊でもいいので警戒する部隊を配置して下さい」
合わせた両手を真っ白になるまで握り締めるので、それでは血が止まってしまうと場違いにも考えていたことを覚えています。
誰もが反対しました。そう、俺以外はそうでした。
「毛色の違う傭兵が陣に加わったという報告を受けています。念のため、俺が岩場を監視します」
他でもない俺の言葉です、その場は直ぐには収まりませんでした。当然です。まだ曹魏に与して日が浅い者同士の言葉ですから。しかし曹操殿の鶴の一声で、一部隊だけを岩場に置くことになりました。
「この者は先の戦、郭嘉と荀&♯X5f67;の策を言い当ててみせた。此度も手並みを拝見するとしよう」
その言葉を聞いて、泣き出しそうな顔になった女性を誰もが哀れに思ったでしょう。曹操殿も、貴方をまだ試していたのです。気弱な子羊が、味方のいない平野で責め立てられている状況でした。軍議が終わってから、貴方が話しかけに来ました。
「荀攸殿」
「はい。何か?」
「この度は花形を他の方に譲ることになり申し訳ありません」
俺は敵兵の気を逸らす役割から外されていました。
「敵は精鋭です。どうかご武運を」
そう言いながら精一杯に頭を下げる貴方を見て、噂は噂でしかないのだと悟りました。これでも俺も軍師の端くれです。口を開くことすら恐れている人間が覚悟を持って謝りに来る、誠心誠意のその態度。どうにも男を籠絡するような妖女には見えなかったのです。
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