Danish Mary
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普通さ、ゲームをプレイしてさ、三国時代にトリップしたら魏呉蜀何れかに飛ばされると思うじゃん?ところが何の手違いか神の思し召しか、私が降り立ったのは名前すらうろ覚えの小国だった。焦った。私はこの国の行く末を知らない。燃え盛る火の中に落ちるか、はたまた軍だけ滅ぼされて国は残るか。どちらに転んでも、ゲームの知識しか持たない私には判断のしようがなかった。
知らないままに、しかし未来の知識と言うやつは妙なところで役立つもので、気がつけば私は国の参謀の座に収まっていた。望んでもいない椅子ではあったけど、案外悪くない。国主は話のわかる人物で、幹部の面々も最初こそ胡乱な目で見てきたが、やがて打ち解けた。気づいたらそれなりに居心地が良くなっていた。人間、どこでも生きていけるもんだな。
月日は流れた。流れ流れて、晋とこの国が火花を散らす段となったとき、国主は降伏を選んだ。命が助かることが分かって、私は密かに胸を撫で下ろした。どこの国であれ誰であれ、争いの果てに命が散るのは見てたくない。せめてこの幕引きが穏やかなものであれと、そう思うだけだった。けれど同時に、この先私はどこへ行けばいいのだろうという考えが頭を過ぎった。小国の、記録に名も残らない参謀など塵芥と同じだろう。ならばいっそ、このまま誰にも気づかれず消えてしまった方がいい。
使者が城にやって来たとき、幹部陣は会議の真っ最中だった。お偉方が来たとあって途端に解散、私達は廊下に広間にと散り散りになった。廊下の隅から広間を覗くと、司馬昭と思われる背中が見えた。国主が礼を尽くして立ち回っているのを確認して、よしあとは任せたと心の中で手を合わせる。面妖な女が国主の耳元で呪文を唱えていると噂が立っていることは聞いている。ここは大人しく消えておくのが吉というもの。足音を殺して廊下に消える。このままこっそり荷物をまとめてどこかに。
「お前はこっちだ」
後ろから首根っこを掴まれた。そのまま私を引き摺るようにして廊下を突っ切る。まずい。このイケボ、どこかで聞いた声だ。低くて静かで、有無を言わせない響き。
「あの、ちょっと待ってもらえますか、荷物が」
「いらん」
「いやでも一応」
「黙れ」
襟を掴まれたまま男が前へ前へと進むので、私は反対向きに流れる景色を眺めながら後ろ足で着いていくことしかできない。誰だっけ、この人。晋の武将、この声、この押しの強さ。記憶を手繰り寄せているうちに広間の扉が開いた。
そのまま国主と司馬昭の目の前に突き出されたとき、彼は私の襟を掴んだままだった。
「此奴も貰い受ける」
唖然とした顔で、広間中の視線が注がれる。私の横で賈充は薄ら笑いを浮かべていた。
知らないままに、しかし未来の知識と言うやつは妙なところで役立つもので、気がつけば私は国の参謀の座に収まっていた。望んでもいない椅子ではあったけど、案外悪くない。国主は話のわかる人物で、幹部の面々も最初こそ胡乱な目で見てきたが、やがて打ち解けた。気づいたらそれなりに居心地が良くなっていた。人間、どこでも生きていけるもんだな。
月日は流れた。流れ流れて、晋とこの国が火花を散らす段となったとき、国主は降伏を選んだ。命が助かることが分かって、私は密かに胸を撫で下ろした。どこの国であれ誰であれ、争いの果てに命が散るのは見てたくない。せめてこの幕引きが穏やかなものであれと、そう思うだけだった。けれど同時に、この先私はどこへ行けばいいのだろうという考えが頭を過ぎった。小国の、記録に名も残らない参謀など塵芥と同じだろう。ならばいっそ、このまま誰にも気づかれず消えてしまった方がいい。
使者が城にやって来たとき、幹部陣は会議の真っ最中だった。お偉方が来たとあって途端に解散、私達は廊下に広間にと散り散りになった。廊下の隅から広間を覗くと、司馬昭と思われる背中が見えた。国主が礼を尽くして立ち回っているのを確認して、よしあとは任せたと心の中で手を合わせる。面妖な女が国主の耳元で呪文を唱えていると噂が立っていることは聞いている。ここは大人しく消えておくのが吉というもの。足音を殺して廊下に消える。このままこっそり荷物をまとめてどこかに。
「お前はこっちだ」
後ろから首根っこを掴まれた。そのまま私を引き摺るようにして廊下を突っ切る。まずい。このイケボ、どこかで聞いた声だ。低くて静かで、有無を言わせない響き。
「あの、ちょっと待ってもらえますか、荷物が」
「いらん」
「いやでも一応」
「黙れ」
襟を掴まれたまま男が前へ前へと進むので、私は反対向きに流れる景色を眺めながら後ろ足で着いていくことしかできない。誰だっけ、この人。晋の武将、この声、この押しの強さ。記憶を手繰り寄せているうちに広間の扉が開いた。
そのまま国主と司馬昭の目の前に突き出されたとき、彼は私の襟を掴んだままだった。
「此奴も貰い受ける」
唖然とした顔で、広間中の視線が注がれる。私の横で賈充は薄ら笑いを浮かべていた。
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