White Lady
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囲碁、将棋、チェス。盤上の遊戯でも、シミュレーション上のゲームでも、私に勝つ者が現れたことはなかった。それは本場の戦に慣れている猛者達の集う三国においても同様だった。私が呂布軍に参画して幾月、戦を起こせば連戦連勝。つまらなかった。私はどこにいても神のような扱いを受けた。これなら現代でAIを相手に凌ぎを削っていた方がマシだったのかもしれない。
「いやはや、これは敵いませんな」
「ありがとう。良い勝負だった」
その中でもぎりぎり手の届く範囲内まで来てくれるのが陳宮、この男だった。色々な手数を教えたのだが直ぐに吸収し、どんなゲームでも私の一歩手前まで、惜しいところに届かせた。唯一の娯楽と言っても良かったのかもしれない、陳宮は何度負けてもその闘志を絶やさなかった。今まで相手にしてきた愚者達とは異なる反応を見せた。
「次こそ、次こそ勝ってみせますぞ」
「うん、楽しみにしてるね」
本心だった。その時の一瞬において、嘘ではなかったのだ。
曹操・劉備の合同軍を前にして呂布軍は敗北した。私と陳宮は後ろ手に縛られ曹操の目の前に連れて行かれた。
「まさか私達の策が尽く敗れるとは。どんな手を使ったのですかな?」
陳宮が噛みつかんばかりに怒っている。私は地面を見つめ、蟻の数を数えていた。
「軍師から情報が流れてきたものでな。行く先が死に水と知らぬ軍団の掌握など容易いものだ」
「なんと、なんと!私は呂布殿を裏切ってなど」
「その方が名前か」
頬に陳宮の視線が突き刺さる。
「面を上げよ」
「はい」
嗚呼、どうしよう。笑いが抑えきれない。
「大儀であった。約束通り、お前を我が軍に盛り立てよう」
きつかった縄が解かれて手首を回した。痛かったなあ。
「名前殿・・・」
見開かれた目が可笑しくて堪らない。勝負の醍醐味はここにあるのだ。意表を突かれ、絶望に陥れられたときの人間のその顔と言ったら!
「呂布軍は勝てない。大将だけが強くとも、軍の規模、練度、士気、全てが下の下。私、もっと色んな種類の駒が欲しいの。今のゲームにはもう飽きちゃった」
にっこりと笑って告げる。
「ごめんね、陳宮」
貴方も私を前にしては通り過ぎてきたその他大勢の一人なの。規模の大きい曹操軍には優れた軍師、強い将軍もいるだろう。もっと熱くさせて、頭を掻きむしらせて、血反吐を吐かせ、心の底から狂わせて欲しい。命を奪い奪われるような、魂を賭けた勝負がしたい。だから情報を流した。この一時の快楽のために私は世に留まっている。首と胴体が離れる最後の時まで、享楽を追い求める。それが私の生き方だ。
「悪趣味な女だ」
夏侯惇が吐き捨てる。そう、そうだよ。今更分かったの?
「いやはや、これは敵いませんな」
「ありがとう。良い勝負だった」
その中でもぎりぎり手の届く範囲内まで来てくれるのが陳宮、この男だった。色々な手数を教えたのだが直ぐに吸収し、どんなゲームでも私の一歩手前まで、惜しいところに届かせた。唯一の娯楽と言っても良かったのかもしれない、陳宮は何度負けてもその闘志を絶やさなかった。今まで相手にしてきた愚者達とは異なる反応を見せた。
「次こそ、次こそ勝ってみせますぞ」
「うん、楽しみにしてるね」
本心だった。その時の一瞬において、嘘ではなかったのだ。
曹操・劉備の合同軍を前にして呂布軍は敗北した。私と陳宮は後ろ手に縛られ曹操の目の前に連れて行かれた。
「まさか私達の策が尽く敗れるとは。どんな手を使ったのですかな?」
陳宮が噛みつかんばかりに怒っている。私は地面を見つめ、蟻の数を数えていた。
「軍師から情報が流れてきたものでな。行く先が死に水と知らぬ軍団の掌握など容易いものだ」
「なんと、なんと!私は呂布殿を裏切ってなど」
「その方が名前か」
頬に陳宮の視線が突き刺さる。
「面を上げよ」
「はい」
嗚呼、どうしよう。笑いが抑えきれない。
「大儀であった。約束通り、お前を我が軍に盛り立てよう」
きつかった縄が解かれて手首を回した。痛かったなあ。
「名前殿・・・」
見開かれた目が可笑しくて堪らない。勝負の醍醐味はここにあるのだ。意表を突かれ、絶望に陥れられたときの人間のその顔と言ったら!
「呂布軍は勝てない。大将だけが強くとも、軍の規模、練度、士気、全てが下の下。私、もっと色んな種類の駒が欲しいの。今のゲームにはもう飽きちゃった」
にっこりと笑って告げる。
「ごめんね、陳宮」
貴方も私を前にしては通り過ぎてきたその他大勢の一人なの。規模の大きい曹操軍には優れた軍師、強い将軍もいるだろう。もっと熱くさせて、頭を掻きむしらせて、血反吐を吐かせ、心の底から狂わせて欲しい。命を奪い奪われるような、魂を賭けた勝負がしたい。だから情報を流した。この一時の快楽のために私は世に留まっている。首と胴体が離れる最後の時まで、享楽を追い求める。それが私の生き方だ。
「悪趣味な女だ」
夏侯惇が吐き捨てる。そう、そうだよ。今更分かったの?
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