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歴史オタクであり、その中でも中世の騎士道に夢を抱いた私が蜀の彼らに提案したのが馬上槍仕合だった。実戦にも敵うということで一度きりの大会が催され、関羽、張飛らが順当に勝ち進む中で優勝したのは趙雲。花冠を手渡された彼が真っ直ぐに観戦席に向かってくるので女性陣は沸き立ち、鏡を取り出し髪を整える者まで出た。妃嬪の席を素通りしたので私は『おや』と心中で首を傾げた。趙雲と私はそれなりに仲が良く、どのような女性に尽くすべきか再三説明してある。それ故に劉備の妻、その中でも尚香に渡すと思っていたからだ。一般席の最前列、馴染みの女官達に囲まれて柵にもたれ掛かっていた私は、ここに至ってやっと背筋を伸ばした。いや、まさかな。でも、周りを見渡してみても他に趙雲と親しい女はいないようなのだ。
「我が勝利、名前殿に捧げます」
果たして馬が私の目の前で止まり、花冠が差し出されると黄色い声が上がった。いつも私の策に乗ってくれる趙雲のことだ、蜀を盛り立てた礼ということではなかろうか。あまり目立ちたくはないのだが、ここで受け取らねば彼の不名誉になる。精一杯の笑顔を作り出して受け取ると、馬はそのまま劉備の元へ向かった。礼をする趙雲に劉備が宣う。
「華々しい勝利、見事であった。褒美を取らせよう、何を望む?」
「名前殿に騎士の誓いを立てることをお許し下さい」
目眩がした。私のオタク精神のせいで将らには軒並み騎士道について説明してあるが、主君とは別に淑女に対して忠誠を誓うということに皆懐疑的な立場を隠さなかった。その中で唯一考え込むような動きを見せていたのが趙雲だった。私だって誰かのレディーになることには憧れがある。しかしまさかこの時代で、騎士すらいない場所で果たされるとは予想だにしていなかったのだ。劉備に確認を取って行動する趙雲は彼らしく一本気だ。まず私にも確認を取って欲しかったのだが。
「名前よ、此方に来い」
劉備の死刑宣告を得てとぼとぼと壇上へ。足が鉛のようだ。聴衆の殆どは何が起きるのか分からず私達二人を見守っている。趙雲が片膝をついて私に跪くので、空気がどよめいた。
「この趙子龍、名前殿に我が槍を捧げます。この命続く限り貴方に仕え、この誓いは天と地に賭けて破られることはないでしょう」
生真面目な彼らしい言葉。何もこんな衆目監視の上でやらなくてもいいのではないか。しかし私が応えねば終わらない。劉備をちらりと見た。
「あの、すみません」
「うむ?」
「剣が必要で」
「ああ、これを使うといい」
当たり前のように劉備の剣を手渡された。将の命、主君の剣をこんなに簡単に扱っても良いものだろうか。手に取るとあまりに重くて趙雲の肩に乗せていいものか迷った。彼を少しでも切ってしまわないように細心の注意を払う。
「九つの天国と地獄、神々の前でこの誓いを祝福する」
震える手で剣が肩を移動する。
「貴方は我が騎士であり、我が剣であり、我が守護者である」
重い。剣の重みだけではない。これから私の行動は彼の名誉にも直結するのだ。誰かのレディーになるということは、高潔さ、美しさ、品位を保たねばならないということだ。その重責が両手にのしかかっていた。
「御手を」
「え?」
剣を劉備に返し、立ち去ろうとすると趙雲から止められた。まだ何かくれるのだろうか。促されるままに掌を向けて差し出すと、その手を持たれてくるりと裏返された。
「我が"れでぃー"よ」
そのまま甲に口付けを送るので、悲鳴が空に響き渡った。
「我が勝利、名前殿に捧げます」
果たして馬が私の目の前で止まり、花冠が差し出されると黄色い声が上がった。いつも私の策に乗ってくれる趙雲のことだ、蜀を盛り立てた礼ということではなかろうか。あまり目立ちたくはないのだが、ここで受け取らねば彼の不名誉になる。精一杯の笑顔を作り出して受け取ると、馬はそのまま劉備の元へ向かった。礼をする趙雲に劉備が宣う。
「華々しい勝利、見事であった。褒美を取らせよう、何を望む?」
「名前殿に騎士の誓いを立てることをお許し下さい」
目眩がした。私のオタク精神のせいで将らには軒並み騎士道について説明してあるが、主君とは別に淑女に対して忠誠を誓うということに皆懐疑的な立場を隠さなかった。その中で唯一考え込むような動きを見せていたのが趙雲だった。私だって誰かのレディーになることには憧れがある。しかしまさかこの時代で、騎士すらいない場所で果たされるとは予想だにしていなかったのだ。劉備に確認を取って行動する趙雲は彼らしく一本気だ。まず私にも確認を取って欲しかったのだが。
「名前よ、此方に来い」
劉備の死刑宣告を得てとぼとぼと壇上へ。足が鉛のようだ。聴衆の殆どは何が起きるのか分からず私達二人を見守っている。趙雲が片膝をついて私に跪くので、空気がどよめいた。
「この趙子龍、名前殿に我が槍を捧げます。この命続く限り貴方に仕え、この誓いは天と地に賭けて破られることはないでしょう」
生真面目な彼らしい言葉。何もこんな衆目監視の上でやらなくてもいいのではないか。しかし私が応えねば終わらない。劉備をちらりと見た。
「あの、すみません」
「うむ?」
「剣が必要で」
「ああ、これを使うといい」
当たり前のように劉備の剣を手渡された。将の命、主君の剣をこんなに簡単に扱っても良いものだろうか。手に取るとあまりに重くて趙雲の肩に乗せていいものか迷った。彼を少しでも切ってしまわないように細心の注意を払う。
「九つの天国と地獄、神々の前でこの誓いを祝福する」
震える手で剣が肩を移動する。
「貴方は我が騎士であり、我が剣であり、我が守護者である」
重い。剣の重みだけではない。これから私の行動は彼の名誉にも直結するのだ。誰かのレディーになるということは、高潔さ、美しさ、品位を保たねばならないということだ。その重責が両手にのしかかっていた。
「御手を」
「え?」
剣を劉備に返し、立ち去ろうとすると趙雲から止められた。まだ何かくれるのだろうか。促されるままに掌を向けて差し出すと、その手を持たれてくるりと裏返された。
「我が"れでぃー"よ」
そのまま甲に口付けを送るので、悲鳴が空に響き渡った。
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