Morning Glory Fizz
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「酒でも飲まないか」
情事の後の気怠い空気にアルコールの香りが漂った。この人は何を言っているんだろう。名前は寝台の上で薄布を羽織りながら考えた。
「酔うと眠くなっちゃうのよ。知ってるでしょ」
「ああ、前回の宴でも気持ち良さそうに寝てたよなあ」
「止してよ」
下着が見当たらない。部屋に雪崩込んで直ぐに事が始まったために服があちこちに散乱していた。ひとまず一番近くに置いてあった賈詡の内着を羽織って、部屋の中を見渡した。
「俺の色に染まるあんたも中々唆るもんがあるな」
酒を傾けながら欲の灯った目で見つめられて呆れた。あれだけしたのにまだ元気があるらしい。
こんな関係になってからもうどれくらい経つだろう。始まりは宴会の帰り。部屋まで見送られ、そのまま軍師は狼になった。名前としても嫌というわけではなく、なし崩しに受け入れた。人肌で誤魔化したい寂しさも、誰かに求められて自分を肯定したい物足りなさもあった。
最近の賈詡は様子が変だった。ある日は激しく燃え盛ったかと思えば、またとある日はごく優しく蕩けるまで長時間嬲られた。夜が更ける前に解散するのが暗黙の了解だったが、何とか名前を引き留めようとして策を講じている気配があった。名前としても賈詡としても人に露見していいことはない関係性だ。不可思議に思いながらも引かれる後ろ髪を振り払って部屋に帰る日々が続いていた。
「なあ、一杯くらいいいだろう?あんた好みの甘いやつを仕入れたんだぞ」
「賈詡、いい加減にしてよ」
下着を発見した。本棚の横の籠に他の布に紛れてひっそりと置かれていた。あれだけ夢中になっておきながらよくそんな暇があったものだ。すぐ見つかる範囲内ではあるものの、服を隠されるのも一度や二度のことではない。
「夜が明けて私と一緒にいるところが見られたら、困るのは貴方でしょう。結婚前に変な噂が立ったら、例のお嬢様との縁談に響くわ」
手早く下着を履いて肌着、外衣と重ねていく。賈詡は魏に降ってから国内に溶け込めとのことで、曹操からさる家の娘御との縁談を打診されていることは周知の事実だった。まだ顔は合わせていないらしいが、その日が来るのも時間の問題だろう。
「知っていたのか」
「噂だもの。玉のような肌のご令嬢らしいわよ」
「あんたはそれでいいのか」
「何の話?」
服を着終わって髪を結う段階に至ると、賈詡が立ち上がって名前の手を掴んだ。
「ちょっと、離してよ」
掴まれた腕を振っても、固く握られたままだ。反対の手が名前の頬に滑る。そのまま親指が名前の唇に乗った。
「この唇に触れたいと思っていたのは俺だけなのか」
もしかしたらそうなのかと思っていた。名前と賈詡はあくまで体だけの関係、唇を合わせたことは今まで一度も無かった。それも賈詡なりの線引きなのかと思っていたのだが、名前を見る視線は日に日に切なさを孕むようになっていった。苦々しく思いながらも、逃げなかったのは何故なのか。花に誘われる蝶のように、足はまた賈詡の部屋へ向かってしまうのだ。
「貴方はこれから雄飛する人よ。政治的な立場を盤石にした方がいいわ」
「自力じゃ出来ない男だと思ってるのか」
「違う、違うわ。けどやっぱり手を尽くした方がいいじゃない」
「名前」
遂に抱き締められてしまった。こんな打算塗れで生きているような男が、最終手段に取るのは児戯のような抱擁とは。遊び人の名が泣くだろうと思った。
「俺の忍耐ももう限界だ。あんたが欲しい」
花弁を重ねた女の肢体がまた剥かれていく。散々熱を上げた肌がまた上気していくのを感じながら、名前は男の顔に手を這わせた。
「なんだ?これでも案外諦めの悪いたちでね、甘えても今日は許してやれないぞ」
その頬に口付けると、目が点になった。
「私の全部をあげるから、賈詡の全部を私に頂戴」
獣のような口付けに襲われて、後戻りできないことを悟った。雄と雌に成り下がりながらも、明日の朝日を二人で拝むことになる喜びが満ちていた。
Morning Glory Fizz・・・貴方と朝を迎えたい
情事の後の気怠い空気にアルコールの香りが漂った。この人は何を言っているんだろう。名前は寝台の上で薄布を羽織りながら考えた。
「酔うと眠くなっちゃうのよ。知ってるでしょ」
「ああ、前回の宴でも気持ち良さそうに寝てたよなあ」
「止してよ」
下着が見当たらない。部屋に雪崩込んで直ぐに事が始まったために服があちこちに散乱していた。ひとまず一番近くに置いてあった賈詡の内着を羽織って、部屋の中を見渡した。
「俺の色に染まるあんたも中々唆るもんがあるな」
酒を傾けながら欲の灯った目で見つめられて呆れた。あれだけしたのにまだ元気があるらしい。
こんな関係になってからもうどれくらい経つだろう。始まりは宴会の帰り。部屋まで見送られ、そのまま軍師は狼になった。名前としても嫌というわけではなく、なし崩しに受け入れた。人肌で誤魔化したい寂しさも、誰かに求められて自分を肯定したい物足りなさもあった。
最近の賈詡は様子が変だった。ある日は激しく燃え盛ったかと思えば、またとある日はごく優しく蕩けるまで長時間嬲られた。夜が更ける前に解散するのが暗黙の了解だったが、何とか名前を引き留めようとして策を講じている気配があった。名前としても賈詡としても人に露見していいことはない関係性だ。不可思議に思いながらも引かれる後ろ髪を振り払って部屋に帰る日々が続いていた。
「なあ、一杯くらいいいだろう?あんた好みの甘いやつを仕入れたんだぞ」
「賈詡、いい加減にしてよ」
下着を発見した。本棚の横の籠に他の布に紛れてひっそりと置かれていた。あれだけ夢中になっておきながらよくそんな暇があったものだ。すぐ見つかる範囲内ではあるものの、服を隠されるのも一度や二度のことではない。
「夜が明けて私と一緒にいるところが見られたら、困るのは貴方でしょう。結婚前に変な噂が立ったら、例のお嬢様との縁談に響くわ」
手早く下着を履いて肌着、外衣と重ねていく。賈詡は魏に降ってから国内に溶け込めとのことで、曹操からさる家の娘御との縁談を打診されていることは周知の事実だった。まだ顔は合わせていないらしいが、その日が来るのも時間の問題だろう。
「知っていたのか」
「噂だもの。玉のような肌のご令嬢らしいわよ」
「あんたはそれでいいのか」
「何の話?」
服を着終わって髪を結う段階に至ると、賈詡が立ち上がって名前の手を掴んだ。
「ちょっと、離してよ」
掴まれた腕を振っても、固く握られたままだ。反対の手が名前の頬に滑る。そのまま親指が名前の唇に乗った。
「この唇に触れたいと思っていたのは俺だけなのか」
もしかしたらそうなのかと思っていた。名前と賈詡はあくまで体だけの関係、唇を合わせたことは今まで一度も無かった。それも賈詡なりの線引きなのかと思っていたのだが、名前を見る視線は日に日に切なさを孕むようになっていった。苦々しく思いながらも、逃げなかったのは何故なのか。花に誘われる蝶のように、足はまた賈詡の部屋へ向かってしまうのだ。
「貴方はこれから雄飛する人よ。政治的な立場を盤石にした方がいいわ」
「自力じゃ出来ない男だと思ってるのか」
「違う、違うわ。けどやっぱり手を尽くした方がいいじゃない」
「名前」
遂に抱き締められてしまった。こんな打算塗れで生きているような男が、最終手段に取るのは児戯のような抱擁とは。遊び人の名が泣くだろうと思った。
「俺の忍耐ももう限界だ。あんたが欲しい」
花弁を重ねた女の肢体がまた剥かれていく。散々熱を上げた肌がまた上気していくのを感じながら、名前は男の顔に手を這わせた。
「なんだ?これでも案外諦めの悪いたちでね、甘えても今日は許してやれないぞ」
その頬に口付けると、目が点になった。
「私の全部をあげるから、賈詡の全部を私に頂戴」
獣のような口付けに襲われて、後戻りできないことを悟った。雄と雌に成り下がりながらも、明日の朝日を二人で拝むことになる喜びが満ちていた。
Morning Glory Fizz・・・貴方と朝を迎えたい
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