Man In The Mirror
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
𝐌𝐚𝐧 𝐈𝐧 𝐓𝐡𝐞 𝐌𝐢𝐫𝐫𝐨𝐫
「名前ちゃんにだけ教えてあげる。おばあちゃんね、実は魔女なの」
私の祖母は嘘を吐かない。クッキーは胡桃を入れるとぱちぱち弾けて美味しくなるし、真っ赤な口紅を借りると一歩大人に近づいて、蝉の幼虫を取ってくると夜半に薄緑の妖精が現れた。全部全部魔法だったのだろう。事故で父と母が亡くなり祖母と一緒に暮らすようになってからも、私の世界から煌めきが消えたことはなかった。数々の魔法の中で友達にも、先生にも話してはいけないと厳命されていたのが祖母のドレッサーだった。古びた木で出来ている、どっしりとした年代物。覗くと鏡の精が出て来て、質問に答えてくれる。しかしお伽噺と異なるところがある。鏡の精はいる時もいない時もあって、主人である祖母よりも断然偉そうで、そしてほんの少しだけ気が短いのだ。
「鏡よ鏡よ鏡さん。この世で一番偉いのは誰?」
「ふむ、帝であろうな。しかしその次があるとしたら、帝に三代仕えた名族を率いる、この私に違いなかろう」
この通りである。そして鏡にパソコンや携帯電話の操作方法を聞いても無駄だった。からきし駄目だというのである。更には自分にも分かるように説明せよと言うので今度は私が困る羽目になった。鏡は何でも知っている。主人に忠実である。真実のみを答える。全然当てはまらなくてちんぷんかんぷんだった。それでも祖母は唇に人差し指を当てて、悪戯っぽく片目を閉じる。
「誰にも言ってはいけないよ。魔法が解けちゃうからね」
長い闘病生活の末に祖母が亡くなって、久々にドレッサーを開いたときも鏡の精はそこで待っていた。
「随分久しいな。して、姥はどうした」
「先週亡くなったよ」
予見していたのであろう、目線を落として『そうか』と呟くだけだった。長年共に暮らした祖母と鏡。私の知らない二人の関係。入院しがちになってドレッサーを開かなくなった祖母に、彼も死期を悟っていたのだろう。無言の中に万感の想いがあった。
「貴方、本当は鏡の精じゃないんでしょう?魔女が死んでからも、鏡の魔力は生きているんだもの。きっと他に何か源があるはずよ」
「この鏡は術師から購入したものだが、どのような原理で其方と繋がっているかは分からん。しかし娘、お前の予測は正しい。長らく合わせてやっていたが、私は鏡の精などではない。袁本初と言う」
形見分けとして鏡、もとい袁紹は私の部屋に運び込まれることになった。そこから私と彼の密やかな友情が育まれることになったのである。
私の祖母は嘘を吐かない。クッキーは胡桃を入れるとぱちぱち弾けて美味しくなるし、真っ赤な口紅を借りると一歩大人に近づいて、蝉の幼虫を取ってくると夜半に薄緑の妖精が現れた。全部全部魔法だったのだろう。事故で父と母が亡くなり祖母と一緒に暮らすようになってからも、私の世界から煌めきが消えたことはなかった。数々の魔法の中で友達にも、先生にも話してはいけないと厳命されていたのが祖母のドレッサーだった。古びた木で出来ている、どっしりとした年代物。覗くと鏡の精が出て来て、質問に答えてくれる。しかしお伽噺と異なるところがある。鏡の精はいる時もいない時もあって、主人である祖母よりも断然偉そうで、そしてほんの少しだけ気が短いのだ。
「鏡よ鏡よ鏡さん。この世で一番偉いのは誰?」
「ふむ、帝であろうな。しかしその次があるとしたら、帝に三代仕えた名族を率いる、この私に違いなかろう」
この通りである。そして鏡にパソコンや携帯電話の操作方法を聞いても無駄だった。からきし駄目だというのである。更には自分にも分かるように説明せよと言うので今度は私が困る羽目になった。鏡は何でも知っている。主人に忠実である。真実のみを答える。全然当てはまらなくてちんぷんかんぷんだった。それでも祖母は唇に人差し指を当てて、悪戯っぽく片目を閉じる。
「誰にも言ってはいけないよ。魔法が解けちゃうからね」
長い闘病生活の末に祖母が亡くなって、久々にドレッサーを開いたときも鏡の精はそこで待っていた。
「随分久しいな。して、姥はどうした」
「先週亡くなったよ」
予見していたのであろう、目線を落として『そうか』と呟くだけだった。長年共に暮らした祖母と鏡。私の知らない二人の関係。入院しがちになってドレッサーを開かなくなった祖母に、彼も死期を悟っていたのだろう。無言の中に万感の想いがあった。
「貴方、本当は鏡の精じゃないんでしょう?魔女が死んでからも、鏡の魔力は生きているんだもの。きっと他に何か源があるはずよ」
「この鏡は術師から購入したものだが、どのような原理で其方と繋がっているかは分からん。しかし娘、お前の予測は正しい。長らく合わせてやっていたが、私は鏡の精などではない。袁本初と言う」
形見分けとして鏡、もとい袁紹は私の部屋に運び込まれることになった。そこから私と彼の密やかな友情が育まれることになったのである。
1/1ページ