ドーナツホール Restart
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※現パロ
良かった。両眼がある。久々に相見えたときに思ったのはそれだった。私がランニングで通り掛ったとき、彼は公園でサッカーをしているところだった。砂場で城を作る女の子、滑り台で順番待ちをしている団体、ブランコに乗ってどこまで高く漕げるか競っている男の子達、そしてそのどれにも所属せず一人でボールを操る姿があった。始めはただ目に留まっただけだった。段々目が離せなくなった。そして蹴り続ける背中を見ているうちに、自分の中で何か予感があった。これは運命の出会いなのだと。彼は壁にボールをぶつけている。私は道を進んでいる。一体何が起きるというのだろう。彼はリフティングを続ける。私は通り過ぎそうになって遠回りをする。ボールが逸れる。心臓の音が耳に聞こえてきそうなほど、胸のざわめきが止まらない。彼はボールを追いかける。あと少し、少しでその顔が見える。風が通り過ぎて、ボールが私の方向へ転がってきた。そしてとうとう振り向いた彼の眼を見たとき、電撃が背筋を通り抜けて理解した。この男の子は彼なのだと。小学校高学年くらいだろうか、まだあどけない背格好。彼の小さい頃など見たことが無い筈なのに、分かった。衝撃を受けて私はその場で転び、倒れてしまった。なけなしの理性で彼からは目を逸らした。小学生をガン見して泣いている女などいたら不審者丸出しである。しかしそのまま立ち直れなくて、膝をついたまま泣いた。ほんの一瞬だったと思う。しかし気付いたとき、足が早くなると噂の黒いスニーカーが目の前にあった。絆創膏の貼ってある膝、汚れの付いた服、視線を上げていくとその真っ直ぐな眼とかち合った。
「お姉さん、転んだからって泣くなよな」
彼はポケットからハンカチを差し出した。
「使っていいぜ」
照れ臭そうに視線を逸しながら差し出されたそれを見て、絶望するような、安心するような、複雑な感情が胸に去来した。彼は覚えていないのだ。三国時代で共に過ごしたあの日々を。
良かった。両眼がある。久々に相見えたときに思ったのはそれだった。私がランニングで通り掛ったとき、彼は公園でサッカーをしているところだった。砂場で城を作る女の子、滑り台で順番待ちをしている団体、ブランコに乗ってどこまで高く漕げるか競っている男の子達、そしてそのどれにも所属せず一人でボールを操る姿があった。始めはただ目に留まっただけだった。段々目が離せなくなった。そして蹴り続ける背中を見ているうちに、自分の中で何か予感があった。これは運命の出会いなのだと。彼は壁にボールをぶつけている。私は道を進んでいる。一体何が起きるというのだろう。彼はリフティングを続ける。私は通り過ぎそうになって遠回りをする。ボールが逸れる。心臓の音が耳に聞こえてきそうなほど、胸のざわめきが止まらない。彼はボールを追いかける。あと少し、少しでその顔が見える。風が通り過ぎて、ボールが私の方向へ転がってきた。そしてとうとう振り向いた彼の眼を見たとき、電撃が背筋を通り抜けて理解した。この男の子は彼なのだと。小学校高学年くらいだろうか、まだあどけない背格好。彼の小さい頃など見たことが無い筈なのに、分かった。衝撃を受けて私はその場で転び、倒れてしまった。なけなしの理性で彼からは目を逸らした。小学生をガン見して泣いている女などいたら不審者丸出しである。しかしそのまま立ち直れなくて、膝をついたまま泣いた。ほんの一瞬だったと思う。しかし気付いたとき、足が早くなると噂の黒いスニーカーが目の前にあった。絆創膏の貼ってある膝、汚れの付いた服、視線を上げていくとその真っ直ぐな眼とかち合った。
「お姉さん、転んだからって泣くなよな」
彼はポケットからハンカチを差し出した。
「使っていいぜ」
照れ臭そうに視線を逸しながら差し出されたそれを見て、絶望するような、安心するような、複雑な感情が胸に去来した。彼は覚えていないのだ。三国時代で共に過ごしたあの日々を。
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