ドーナツホール another
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※異邦人はかく語りき・番外編 現パロ
「あちらのお客様からです」
三角のグラスに橙色の液体。バーテンダーが指し示す先にはカウンターの隅で意味深に口角を上げる男が座っていた。
「Eye Opener。カクテル言葉は『運命の出会い』」
一口つけたところで説明が加わって吹き出しそうになる。ニヒルな笑みを浮かべる男はとてもそんなロマンティックなことを言いそうには思えない。意味を知らずに贈ったのではないだろうか。しかし高級な仕立てのシャツにきっちりと肩にはまるジャケットを羽織る洒落者が、そんなミスを犯すとは考え難い。あくまで近付かずに傍観を決め込む男に、私は意趣返しを試みた。
「ではお返しに。あの人にこれを」
「本当にいいのですか?」
「ええ」
マスターが曇った顔でシェイカーを振る。やがて男の前に朱紅の酒が差し出されると、意味を理解した男が不快そうに眉を上げたので私は上機嫌になる。
私が贈ったのはAurora。カクテル言葉は『偶然の出会い』。
(な&♯X301c;にが運命だ)
先週バーに寄った帰り、店の前で人とぶつかった。肩同士が触れ合って、『すみません』、ただ一言交わしただけだった。黒いジャケット、思い返せばあの男と同じものを着ていた。その後からここに来る度意味深な視線を感じるようになっていたが、とうとう行動を起こしたというわけだ。妖艶な雰囲気を持つ男からカクテルを贈られて、喜ばない女はいないだろう。しかし当てが外れたようだ、私は恋愛にはてんで興味が無い。今は趣味に仕事に忙しくて、男に構っている暇などないのだ。
折角の金曜日の仕事終わり、テリトリーを侵されて腹が立った。バッグを引っ掴むと、お会計を済ませてバーを出る。
もう二度と会わないことを願うわ。目に言葉を宿しながら睨めつけると、男の視線が背中に纏わりついた。振り切って扉から出ても、体に蛇が這っているような感覚が残った。
「あちらのお客様からです」
三角のグラスに橙色の液体。バーテンダーが指し示す先にはカウンターの隅で意味深に口角を上げる男が座っていた。
「Eye Opener。カクテル言葉は『運命の出会い』」
一口つけたところで説明が加わって吹き出しそうになる。ニヒルな笑みを浮かべる男はとてもそんなロマンティックなことを言いそうには思えない。意味を知らずに贈ったのではないだろうか。しかし高級な仕立てのシャツにきっちりと肩にはまるジャケットを羽織る洒落者が、そんなミスを犯すとは考え難い。あくまで近付かずに傍観を決め込む男に、私は意趣返しを試みた。
「ではお返しに。あの人にこれを」
「本当にいいのですか?」
「ええ」
マスターが曇った顔でシェイカーを振る。やがて男の前に朱紅の酒が差し出されると、意味を理解した男が不快そうに眉を上げたので私は上機嫌になる。
私が贈ったのはAurora。カクテル言葉は『偶然の出会い』。
(な&♯X301c;にが運命だ)
先週バーに寄った帰り、店の前で人とぶつかった。肩同士が触れ合って、『すみません』、ただ一言交わしただけだった。黒いジャケット、思い返せばあの男と同じものを着ていた。その後からここに来る度意味深な視線を感じるようになっていたが、とうとう行動を起こしたというわけだ。妖艶な雰囲気を持つ男からカクテルを贈られて、喜ばない女はいないだろう。しかし当てが外れたようだ、私は恋愛にはてんで興味が無い。今は趣味に仕事に忙しくて、男に構っている暇などないのだ。
折角の金曜日の仕事終わり、テリトリーを侵されて腹が立った。バッグを引っ掴むと、お会計を済ませてバーを出る。
もう二度と会わないことを願うわ。目に言葉を宿しながら睨めつけると、男の視線が背中に纏わりついた。振り切って扉から出ても、体に蛇が這っているような感覚が残った。
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