みだれ髪
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嗚呼、神様。貴方の試練は何と厳しくこの胸を焼くことでしょうか。海よりも深く山よりも高い、見知らぬ土地に体一つで飛ばすという過酷な運命を背負わせておきながら、何故この上にまた惨い仕打ちをなさるのでしょう。此方に来る前の私が見たら、我が身のあまりの惨状にさぞや可笑しく嘲笑うことでしょう、私の利己主義はこの魂に刻まれた原罪とも言うべきものです。人間は蛇に唆され知恵の実を食べた瞬間から理性を得ました。しかしその林檎の蜜の甘さときたら、喉を通る果汁の麗しさと来たら。永遠に忘れられず、楽園を追放されようとも思い返さずにはいられない魅惑的なものだったことでしょう。どうか今私めに一口、その実を与えては下さらないでしょうか。罰ならば後で受けましょう。しかし私は兎角速やかに、彼奴の魔の手から逃れる術を知りたいのです、全力ダッシュで駆けても魔の手は忍び寄り、鉄の楔が私の首に迫っています。私は怖いもの知らずであると言うのが友人の言です。その認識は誤りではありません。私がただ一つ怖いのは私の命が害されること、それだけでした。それなのに、それなのに嗚呼!信念の如く貫き通してきたその意志を曲げて尽くして尚、貴方様は私にまた困難をお与えになると言うのでしょうか。私は矮小な人間です。そう何度もゴールを動かされては心が折れてしまいます。この通りです。伏してお願い申し上げます。ただ少し知恵を賜りたいだけなのです。貴方に似せて作られたこの私を、ただ一歩、小指の一匙だけ、貴方に近付くお許しを下さいませ。
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