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『あんたは気儘我儘鉄砲玉、誰の手にも負えるわけがないのよ』
母の言葉である。今や私の手綱を握る人ができたよ、教えたらどうなるだろうかと想像した。
私はと言えば文則との関係性が変わってからも表面上は何事もないかのように過ごしていた。はずだった。呼び方が変わったこと、敬語を抜いたこと以外は何もないのだが、当たり前のように字を呼ぶと大抵の人は驚いたようにこちらを振り向いた。『殺されるぞ』と言わんばかりの顔でどれも笑えた。一般人の反応はそれなのだが、将達の反応は人それぞれだった。李典さんは『分かってたぜ、俺は』と言って軽く頭を叩いてみせた。郭嘉さんからは紅白のお菓子を、荀家の二人からは連名の酒の差し入れ。龐徳徳殿からは二人分の棺桶をもらった。気が早すぎ。張遼殿は離れていても身を守れるようにと稽古をつけてもらえるようになった。賈詡さんは軍議のあと肩を組まれ裏で色々聞いてこようとしたのだが、早速文則に引っペがされていた。その後悲鳴が聞こえたような気がしたが、何があったかは知らない。張郃さんは執務室で愛を歌い、一人宝塚を始めようとして文則に追い出されていた。満寵さんからは謎のからくり箱をもらったが、怖いから庭の隅に埋めた。後日爆発音がしたのは偶然だと思いたい。夏侯惇殿は通りすがりに背中をばしんと叩いて去っていった。漢だな。そして楽進さんは・・・楽進さんだ。いつも通りだ。多分言っても言わなくても変わらない。
最悪なのはこの君主だ。
「鶯の声が儂まで届いてきたが、春の訪れは想定以上に遅かったようだな」
「・・・・・・・・・・・・」
今は秋である。外に鳥もいない。完全に揶揄われているのが分かってただ駒を進める。
「次、曹操様の番です」
「チェックメイト」
嘘だろ。
ぼーっとしていた私の王を獲って曹操様は楽しげに笑っている。これは単なる遊びというより心理戦だ、揺さぶった方が勝ちなのだ。今の私が勝てるわけがない。
「堅牢な城は国守には良いが女人には些か冷たかろう。お主は何処に惹かれたというのだ」
瞼の裏に思い描くその顔。厳しくて、温かさを隠していて、人に嫌われる勇気を持った、私には特別に甘い人。
「優しいところです」
玩具の歯軋りに曹操様が高らかに笑った。
実を言うと変わったのは話し口調だけではなかった。
「私とばかり過ごしていて面倒じゃない?何か趣味はないの?断罪とか、断罪とか、断罪とか」
冗談を言うと苦笑が返ってきた。
「私とて年中断罪しているわけではない。私生活では一人の無趣味な男だ。暇潰しに付き合ってくれれば有難い」
言葉通り文則は誘えばどこにでも着いてきた。遠乗り、花見、農耕、街遊び、居酒屋、二人であらゆる所へ出掛けた。歩けばモンスターが背後に着いてくるゲームを思い出し、私は密かにこれを于禁Bloomと呼んでいた。厳密に言えば文則が前を歩くことが多いのだが、行く先々で私の見知った顔に挨拶され、戸惑う顔を見るのも可笑しかった。
「お前は真に人好きする女だ」
「唯一の取り柄だからね。妬いた?」
餡まんを咀嚼すると口の横を手巾で拭われた。何かついていただろうか。文則はそのまま手の甲で私の頬を一撫でした。
「狭量な男だと思ってくれるな」
私には貴方だけ、そう言わなければならないのだが胸が詰まって言葉が出なかった。
母の言葉である。今や私の手綱を握る人ができたよ、教えたらどうなるだろうかと想像した。
私はと言えば文則との関係性が変わってからも表面上は何事もないかのように過ごしていた。はずだった。呼び方が変わったこと、敬語を抜いたこと以外は何もないのだが、当たり前のように字を呼ぶと大抵の人は驚いたようにこちらを振り向いた。『殺されるぞ』と言わんばかりの顔でどれも笑えた。一般人の反応はそれなのだが、将達の反応は人それぞれだった。李典さんは『分かってたぜ、俺は』と言って軽く頭を叩いてみせた。郭嘉さんからは紅白のお菓子を、荀家の二人からは連名の酒の差し入れ。龐徳徳殿からは二人分の棺桶をもらった。気が早すぎ。張遼殿は離れていても身を守れるようにと稽古をつけてもらえるようになった。賈詡さんは軍議のあと肩を組まれ裏で色々聞いてこようとしたのだが、早速文則に引っペがされていた。その後悲鳴が聞こえたような気がしたが、何があったかは知らない。張郃さんは執務室で愛を歌い、一人宝塚を始めようとして文則に追い出されていた。満寵さんからは謎のからくり箱をもらったが、怖いから庭の隅に埋めた。後日爆発音がしたのは偶然だと思いたい。夏侯惇殿は通りすがりに背中をばしんと叩いて去っていった。漢だな。そして楽進さんは・・・楽進さんだ。いつも通りだ。多分言っても言わなくても変わらない。
最悪なのはこの君主だ。
「鶯の声が儂まで届いてきたが、春の訪れは想定以上に遅かったようだな」
「・・・・・・・・・・・・」
今は秋である。外に鳥もいない。完全に揶揄われているのが分かってただ駒を進める。
「次、曹操様の番です」
「チェックメイト」
嘘だろ。
ぼーっとしていた私の王を獲って曹操様は楽しげに笑っている。これは単なる遊びというより心理戦だ、揺さぶった方が勝ちなのだ。今の私が勝てるわけがない。
「堅牢な城は国守には良いが女人には些か冷たかろう。お主は何処に惹かれたというのだ」
瞼の裏に思い描くその顔。厳しくて、温かさを隠していて、人に嫌われる勇気を持った、私には特別に甘い人。
「優しいところです」
玩具の歯軋りに曹操様が高らかに笑った。
実を言うと変わったのは話し口調だけではなかった。
「私とばかり過ごしていて面倒じゃない?何か趣味はないの?断罪とか、断罪とか、断罪とか」
冗談を言うと苦笑が返ってきた。
「私とて年中断罪しているわけではない。私生活では一人の無趣味な男だ。暇潰しに付き合ってくれれば有難い」
言葉通り文則は誘えばどこにでも着いてきた。遠乗り、花見、農耕、街遊び、居酒屋、二人であらゆる所へ出掛けた。歩けばモンスターが背後に着いてくるゲームを思い出し、私は密かにこれを于禁Bloomと呼んでいた。厳密に言えば文則が前を歩くことが多いのだが、行く先々で私の見知った顔に挨拶され、戸惑う顔を見るのも可笑しかった。
「お前は真に人好きする女だ」
「唯一の取り柄だからね。妬いた?」
餡まんを咀嚼すると口の横を手巾で拭われた。何かついていただろうか。文則はそのまま手の甲で私の頬を一撫でした。
「狭量な男だと思ってくれるな」
私には貴方だけ、そう言わなければならないのだが胸が詰まって言葉が出なかった。
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