And they lived happily ever after
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名前は走れないまでも、出来得る限りの速さで歩いていた。転ぶ、その事件だけは起こしてはならない。分かってはいるのだが体よりも先に逸る心を止められなかった。妊婦が急ぐ姿を見て道行く人が眉を顰めている。いつになったら追い付けるのだろう。耳の裏を汗が伝った。
于家にはやんちゃ盛りが二人いる。父親に似てしっかり者の長男と、のんびり屋でどこか抜けている次男。しかし二人とも根が真面目で素直という点では変わらなかった。父の言うことをよく聞き、勉学に鍛錬にと直向きに努力するもので、なるほどこれは遺伝なのだなと手を打った。夫は些か厳しすぎる面も否めず、泣き出した子供を慰める役は名前が担っていた。一緒に謝りに行こうと手を繋いで夫のもとへ行くと、しゃくり上げながら子供が謝意を告げる。その時の夫の顔ときたら!『なんて小さくて可愛い存在なのだ』という感情を隠しきれず、作り上げられた厳しい面が引き攣っている。子供としては堪ったものではないだろうが、傍から見れば穏やかな日常そのものだった。名前は幸せだった。三人目がお腹にできて、于禁の態度が変わるまでは。
恒常的な戦争状態が解かれたとは言え、曹操の立場は盤石ではなかった。統一されたばかりの国は不安定で傾きやすく、外部からの侵入者との闘争も絶えなかった。于禁の将軍としての責務は重く、今までのような死地に向かう覚悟までは必要でないものの、その量が目に見えて減ったとは言えなかった。それでも、名前が妊娠しているとき于禁は長期に渡る遠征をできる限り避け、毎日の職務の後も早く家に帰るように心掛けているようだった。それは二人目までの話だった。そう、今は違うのである。
この所于禁の帰宅は遅くなっていた。忙しい身なのだ。それだけでは何てこともないのだが、休みの日すらも出掛けがちになっていた。名前の身を案じ何処へ行くにも着いてきた、初々しかった頃が懐かしい。家人へ名前のことを言い付けて去って行くものの、心が離れていく寂しさを感じていた。
三人目ともなれば、致し方が無い。夫婦になってからも長い年月が経った。実直なあの夫に限ってそれは無いと自分に言い聞かせていたが、よもやという考えを止めることができなかった。
夜にひっそりと涙する日もあった。名前だけを一途に想い続けてきた男、意志を最大限汲んで快適な生活を営ませてきた夫が、結婚後長らくして移り気になったとて糾弾できようはずもなかった。
倦怠期。その言葉が頭を占める。いつ妾を迎えるとその口から出るのかを恐れて、眠れない日々が続いていた。
于家にはやんちゃ盛りが二人いる。父親に似てしっかり者の長男と、のんびり屋でどこか抜けている次男。しかし二人とも根が真面目で素直という点では変わらなかった。父の言うことをよく聞き、勉学に鍛錬にと直向きに努力するもので、なるほどこれは遺伝なのだなと手を打った。夫は些か厳しすぎる面も否めず、泣き出した子供を慰める役は名前が担っていた。一緒に謝りに行こうと手を繋いで夫のもとへ行くと、しゃくり上げながら子供が謝意を告げる。その時の夫の顔ときたら!『なんて小さくて可愛い存在なのだ』という感情を隠しきれず、作り上げられた厳しい面が引き攣っている。子供としては堪ったものではないだろうが、傍から見れば穏やかな日常そのものだった。名前は幸せだった。三人目がお腹にできて、于禁の態度が変わるまでは。
恒常的な戦争状態が解かれたとは言え、曹操の立場は盤石ではなかった。統一されたばかりの国は不安定で傾きやすく、外部からの侵入者との闘争も絶えなかった。于禁の将軍としての責務は重く、今までのような死地に向かう覚悟までは必要でないものの、その量が目に見えて減ったとは言えなかった。それでも、名前が妊娠しているとき于禁は長期に渡る遠征をできる限り避け、毎日の職務の後も早く家に帰るように心掛けているようだった。それは二人目までの話だった。そう、今は違うのである。
この所于禁の帰宅は遅くなっていた。忙しい身なのだ。それだけでは何てこともないのだが、休みの日すらも出掛けがちになっていた。名前の身を案じ何処へ行くにも着いてきた、初々しかった頃が懐かしい。家人へ名前のことを言い付けて去って行くものの、心が離れていく寂しさを感じていた。
三人目ともなれば、致し方が無い。夫婦になってからも長い年月が経った。実直なあの夫に限ってそれは無いと自分に言い聞かせていたが、よもやという考えを止めることができなかった。
夜にひっそりと涙する日もあった。名前だけを一途に想い続けてきた男、意志を最大限汲んで快適な生活を営ませてきた夫が、結婚後長らくして移り気になったとて糾弾できようはずもなかった。
倦怠期。その言葉が頭を占める。いつ妾を迎えるとその口から出るのかを恐れて、眠れない日々が続いていた。
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