牡丹
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庭の規模が全然違う。城の真ん中で咲き乱れる花々の中を私は彷徨っていた。
洛陽にて私達は魏王・曹操様の内示を受け取っていた。文則は将軍の位の中でも最上位のものをもらったらしい。魏を三国統一に導いた立役者なのだから当然だ。
ついでに私も何か頂戴したらしい。儀式が長すぎて途中意識を飛ばしていたので、何を頂いたのか覚えていない。ただ周囲が驚いていたので、相当なものを拝受したのだろうなと眠気眼で感じていた。
慣れない服を重ね、頭に刺した簪。正装したのはこれが初めてではないが、いつの日も楽しいとは思えなかった。
そこに曹操様からの呼び出しが終わったらしい文則が戻ってきた。袖のゆったりとした服に、帯を締めている。冠も頭全体を覆うような、不思議な形だ。ただでさえ威厳の塊なのに、今日はそれがより強調されて見えた。
「殿が妻を娶れと」
「そうですか。お幸せに」
「名前」
池を眺めたまま答えると、文則が咎める。私にどうしろというのか。
まず身分の問題がある。魏では身分の垣根を越えての結婚などご法度のはずだ。私はもう既に曹操様に某か頂いているとはいえ、由緒正しいものではない。彼の親や先祖に申し訳が立たない。
次に年齢という壁も乗り越え難い。魏に来た時成人を迎えたばかりだった私も今やアラサーだ。三国においては娘と言うべき時期をとうに過ぎており、適齢期とはかけ離れている。当然求められるであろう子供も得られるかどうか分からない。
婦人としての資質にもまた課題がある。私の悪評は魏の城中ならば知らぬ者はいない。来て直ぐの頃から優遇されるのに胡座をかいて好き放題してきたのだ、誰もが私を女というより悪戯坊主だと認識している。とても魏最高の将軍の妻に相応しい人間ではない。
それに、何より。
「私の時代って、相手を好きだから、幸せにしたいからという理由で結婚するんだよね」
池に小石を投げ込む。ぽちゃんと鳴って水面が揺れ、静かに波紋が広がった。
「でも、私は貴方を幸せにできるかどうか分からない」
しゃがんで膝を抱えると、文則が穏やかに問うた。
「覚悟を決めたのではなかったのか」
「あれはこちらで生きていく覚悟って意味で、あなたを幸せにするって覚悟じゃない。そんなことできない」
膝をぎゅっと握る。
「自信がない」
洛陽にて私達は魏王・曹操様の内示を受け取っていた。文則は将軍の位の中でも最上位のものをもらったらしい。魏を三国統一に導いた立役者なのだから当然だ。
ついでに私も何か頂戴したらしい。儀式が長すぎて途中意識を飛ばしていたので、何を頂いたのか覚えていない。ただ周囲が驚いていたので、相当なものを拝受したのだろうなと眠気眼で感じていた。
慣れない服を重ね、頭に刺した簪。正装したのはこれが初めてではないが、いつの日も楽しいとは思えなかった。
そこに曹操様からの呼び出しが終わったらしい文則が戻ってきた。袖のゆったりとした服に、帯を締めている。冠も頭全体を覆うような、不思議な形だ。ただでさえ威厳の塊なのに、今日はそれがより強調されて見えた。
「殿が妻を娶れと」
「そうですか。お幸せに」
「名前」
池を眺めたまま答えると、文則が咎める。私にどうしろというのか。
まず身分の問題がある。魏では身分の垣根を越えての結婚などご法度のはずだ。私はもう既に曹操様に某か頂いているとはいえ、由緒正しいものではない。彼の親や先祖に申し訳が立たない。
次に年齢という壁も乗り越え難い。魏に来た時成人を迎えたばかりだった私も今やアラサーだ。三国においては娘と言うべき時期をとうに過ぎており、適齢期とはかけ離れている。当然求められるであろう子供も得られるかどうか分からない。
婦人としての資質にもまた課題がある。私の悪評は魏の城中ならば知らぬ者はいない。来て直ぐの頃から優遇されるのに胡座をかいて好き放題してきたのだ、誰もが私を女というより悪戯坊主だと認識している。とても魏最高の将軍の妻に相応しい人間ではない。
それに、何より。
「私の時代って、相手を好きだから、幸せにしたいからという理由で結婚するんだよね」
池に小石を投げ込む。ぽちゃんと鳴って水面が揺れ、静かに波紋が広がった。
「でも、私は貴方を幸せにできるかどうか分からない」
しゃがんで膝を抱えると、文則が穏やかに問うた。
「覚悟を決めたのではなかったのか」
「あれはこちらで生きていく覚悟って意味で、あなたを幸せにするって覚悟じゃない。そんなことできない」
膝をぎゅっと握る。
「自信がない」
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