孟春
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正月、曹操の元へ続々と家臣が新年の寿ぎの挨拶参りに足を運ぶ。その中に新顔が一人いた。麗しい顔つきと細身の体を包む上品な衣、何より郭嘉の隣にいたことがその存在を際立たせ、女官達は彼等二人を視界に捉えると途端に小声で噂話を始める。郭嘉が挨拶代わりに流し目を送れば、隣人は控えめに礼を添える。肩を擦り合わせながら微笑み与太話を重ねる二人に、麗人は郭嘉の縁者であるとすれ違う者達は見当をつけた。阿吽の呼吸で、まるで仙界から降りてきたような、そんな風を二人は醸し出していた。
やがて順番が来て謁見の間に招き入れられると、教えられた通りに深々と礼をした。拱手する手は郭嘉と二人、揃っている。左手が上、右手が下。
「あれから半年程経ったか。見違えるようだ」
「恐縮です。これも全て郭嘉殿のご指導の賜物です」
凛々しい風格に曹操も頷き、軍師としての任を与えることを宣言した。沓の音が部屋に響く。王が近づいて肩に手を置き、低い声で囁いた。
「そなたの働き、期待しているぞ」
『は』と恭しく下げられた頭と背中には、薄らと筋肉がついている。初めて相見えたときと体つきが変わっていた。触れた肌は微かに震えながらも、返ってきた言葉は強い。それに満足し、曹操はそのまま二人を解放した。
「郭嘉殿!新年のご挨拶をさせて下さい」
廊下でおどけた男が話し掛ける。頭に巻いた布が半ば解けかけていた。
「これから賀宴だというのにもう飲み始めているのかい?」
「お堅いことは言いなさんな。それより其方の御仁は?初めて見る顔だねえ」
麗人は拱手して答えた。
「名前と申します。本日より出仕致します。お見知りおきを」
「俺は賈文和。よろしくな、坊っちゃん」
賈詡が背中を叩くと名前がよろける。酔って加減を忘れているようだった。
「おっと、悪い悪い」
「いえ。私の修練が足りないせいでご心配をお掛けしました」
笑みを浮かべる名前に賈詡は訝しむような目を向ける。顎に手を当て、探るような視線を差し向けた。
「あんた、妙に浮世離れしているな。何か訳ありか?」
名前は動じずに答えた。
「ご慧眼ですね。実は大秦国の出身なのです。この国の礼法にはまだ慣れていなくて」
「ほお、遥か彼方から来たというわけか。西方は学問が進んでいると聞く」
「ええ。それ故役立てる面もあるかと思いますが、何分私個人は非才なもので。ご指導頂戴できますと幸いです」
その返答に郭嘉が満足そうに頷いた。
「彼は西方との交易で知り合った遊学の士でね。兵法にも詳しいというから曹操殿に紹介したんだ。ただ、戦や立法は得意だが世事には疎くてね。賈詡からも目に掛けてもらえると有り難い」
そのまま二人を宴の会場へと誘い、賈詡が我先にと会場へ向かって大きな声で新年の挨拶を述べた。郭嘉はそのまま足を踏み入れず、会場の入り口が閉まる。振り向いた郭嘉が名前の肩に手を掛けた。
「いいね?名前」
やがて順番が来て謁見の間に招き入れられると、教えられた通りに深々と礼をした。拱手する手は郭嘉と二人、揃っている。左手が上、右手が下。
「あれから半年程経ったか。見違えるようだ」
「恐縮です。これも全て郭嘉殿のご指導の賜物です」
凛々しい風格に曹操も頷き、軍師としての任を与えることを宣言した。沓の音が部屋に響く。王が近づいて肩に手を置き、低い声で囁いた。
「そなたの働き、期待しているぞ」
『は』と恭しく下げられた頭と背中には、薄らと筋肉がついている。初めて相見えたときと体つきが変わっていた。触れた肌は微かに震えながらも、返ってきた言葉は強い。それに満足し、曹操はそのまま二人を解放した。
「郭嘉殿!新年のご挨拶をさせて下さい」
廊下でおどけた男が話し掛ける。頭に巻いた布が半ば解けかけていた。
「これから賀宴だというのにもう飲み始めているのかい?」
「お堅いことは言いなさんな。それより其方の御仁は?初めて見る顔だねえ」
麗人は拱手して答えた。
「名前と申します。本日より出仕致します。お見知りおきを」
「俺は賈文和。よろしくな、坊っちゃん」
賈詡が背中を叩くと名前がよろける。酔って加減を忘れているようだった。
「おっと、悪い悪い」
「いえ。私の修練が足りないせいでご心配をお掛けしました」
笑みを浮かべる名前に賈詡は訝しむような目を向ける。顎に手を当て、探るような視線を差し向けた。
「あんた、妙に浮世離れしているな。何か訳ありか?」
名前は動じずに答えた。
「ご慧眼ですね。実は大秦国の出身なのです。この国の礼法にはまだ慣れていなくて」
「ほお、遥か彼方から来たというわけか。西方は学問が進んでいると聞く」
「ええ。それ故役立てる面もあるかと思いますが、何分私個人は非才なもので。ご指導頂戴できますと幸いです」
その返答に郭嘉が満足そうに頷いた。
「彼は西方との交易で知り合った遊学の士でね。兵法にも詳しいというから曹操殿に紹介したんだ。ただ、戦や立法は得意だが世事には疎くてね。賈詡からも目に掛けてもらえると有り難い」
そのまま二人を宴の会場へと誘い、賈詡が我先にと会場へ向かって大きな声で新年の挨拶を述べた。郭嘉はそのまま足を踏み入れず、会場の入り口が閉まる。振り向いた郭嘉が名前の肩に手を掛けた。
「いいね?名前」
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