盗賊
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ある日書簡を持ち込むと、いつになく元気の無い貴方の姿がありました。
「何かあったのですか」
「そんなに顔に出ていますか」
お恥ずかしい、と謙遜しながらも貴方は耳飾りを失くしたことを話して下さいました。名前殿が装飾品に凝っていて耳飾りを日々取り替えていることには気付いていましたが、なるほど最もよく使われていた黒い四葉の耳飾りが失せたとのこと。確かに一般庶民の月給三ヶ月分の価値があるのだと嬉しげに話していた様子を思い返すと、その悲しみもひとしおのことだったでしょう。
またある日の宴では、誰の目から見ても悲しげに肩を落とす貴方がいました。見る人見る人が声を掛け、しかし『何でもないです』『大丈夫』と返事する声色が痛ましく感じました。
「名前殿、どうなさったのですか」
「荀攸殿」
俺を見てまた暗い色が目に宿る名前殿、その耳には会ってから初めて、何の飾りもついていませんでした。お気に入りを失くしてからも第二、第三のもので常に耳を彩っていた名前殿には、珍しいどころの話ではありません。その細い肩が震え、目にみるみると涙が溜まっていくのを見て、俺が仄暗い優越感を抱いたことを貴方は知らないでしょう。他の人には見せない顔を俺だけには晒してもらえる、その喜びが胸に宿りました。
「実は、耳飾りを入れた宝石箱そのものが何処かに行ってしまって」
一度だけ、宝石箱を見せて頂いたことがありました。布で縁取られた箱の中には金銀の飾りが煌めき、これは誕生日に、あれは給金の出た日に己への褒美として買ったと話して下さった日が懐かしく思い起こされました。人を疑うのが軍師の性、貴方には申し訳ないですが、俺は言わざるを得ませんでした。
「名前殿、宝石箱を俺以外誰かに見せましたか」
「この前女官の友達数人に」
答えながら顔を青くしましたね。段々と小さくなる声。俺が言わんとすることが分かったのでしょう。
「何かあったのですか」
「そんなに顔に出ていますか」
お恥ずかしい、と謙遜しながらも貴方は耳飾りを失くしたことを話して下さいました。名前殿が装飾品に凝っていて耳飾りを日々取り替えていることには気付いていましたが、なるほど最もよく使われていた黒い四葉の耳飾りが失せたとのこと。確かに一般庶民の月給三ヶ月分の価値があるのだと嬉しげに話していた様子を思い返すと、その悲しみもひとしおのことだったでしょう。
またある日の宴では、誰の目から見ても悲しげに肩を落とす貴方がいました。見る人見る人が声を掛け、しかし『何でもないです』『大丈夫』と返事する声色が痛ましく感じました。
「名前殿、どうなさったのですか」
「荀攸殿」
俺を見てまた暗い色が目に宿る名前殿、その耳には会ってから初めて、何の飾りもついていませんでした。お気に入りを失くしてからも第二、第三のもので常に耳を彩っていた名前殿には、珍しいどころの話ではありません。その細い肩が震え、目にみるみると涙が溜まっていくのを見て、俺が仄暗い優越感を抱いたことを貴方は知らないでしょう。他の人には見せない顔を俺だけには晒してもらえる、その喜びが胸に宿りました。
「実は、耳飾りを入れた宝石箱そのものが何処かに行ってしまって」
一度だけ、宝石箱を見せて頂いたことがありました。布で縁取られた箱の中には金銀の飾りが煌めき、これは誕生日に、あれは給金の出た日に己への褒美として買ったと話して下さった日が懐かしく思い起こされました。人を疑うのが軍師の性、貴方には申し訳ないですが、俺は言わざるを得ませんでした。
「名前殿、宝石箱を俺以外誰かに見せましたか」
「この前女官の友達数人に」
答えながら顔を青くしましたね。段々と小さくなる声。俺が言わんとすることが分かったのでしょう。
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