慮外の撫子
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「男を一人買いたいんですが、どこに行けば買えますかね?」
不穏な言葉に法正が訝しむような目線を寄越した。しかし私は負けない。もうこのところの戦いに終止符を打つと決めているのだ。
「何故俺に?」
「悪巧みなら法正さんかなと」
「何のために男が入用なんです?」
「婿にするつもりです」
ますます鋭い目を向けられる。
「いやはや、急かされるのに飽きちゃいまして」
周囲の人から結婚しろと騒がれて久しい。彼らの口に戸を立てるものなど何も無い、名前は言われるがままハラスメントに苦しんできた。止めようにも止まらない、ならば実際に結婚してみてはどうかと考えついたのである。身寄りのない、家も堅くない男性を一人捕まえ、平身低頭婿になってくれ給与は出すとお願いするつもりである。生きるに困る人すらいるこの三国の世で、一人も見当たらないことがあろうか。男とは縁を結びながら友の如く召使の如く過ごしてもらうだけである。なに、金はある。人がふたり暮らしていけるだけの余裕も家もある。ただうるさい周りから婿という立場ひとつで守ってくれる男さえいてくれれば、あとは全部用意する、そのつもりだった。面倒事は御免である。能のある男に声を掛けて言い争いの火種を貰うことも、家柄の良い男に言い寄ってヒモ暮らしを拒否されることも、心を求めて恋愛ごっこの遣り繰りで泣いたり笑ったりすることも、全てが無駄だ。金で婿を買う。そして家事をしてもらう。噂は跳ね除けられ、心は軽く、身体も健康、誰もが望んだハッピーエンドを迎えるというわけだ。何より、名前には普通の結婚ができない理由が一つあった。
「俺とすればいいでしょう」
法正はなんの気無しに言った。書から目を離さない。今日の天気は晴れですね、その話題のトーンと全く変わらない声色だった。
「家事も近所付き合いも全部してもらいたいんですよ。法正さん、仕事辞めて家に入ってくれるんですか?」
「使用人を雇いますよ」
「いやそれだけじゃなくて。結婚すると夫婦の義務が色々発生するじゃないですか。そういう面倒なこと一切言わない人がいいんです」
「妻としての義務を要求しないと約束する」
「え、本当ですか?子供とかも作れないけどいいですか?」
「何処か身体に問題が?」
「いや、違いますけど」
「ならいい」
法正が本を閉じていよいよ目を合わせた。
「俺にしておけ。その辺の男よりは良い働きをしますよ」
不穏な言葉に法正が訝しむような目線を寄越した。しかし私は負けない。もうこのところの戦いに終止符を打つと決めているのだ。
「何故俺に?」
「悪巧みなら法正さんかなと」
「何のために男が入用なんです?」
「婿にするつもりです」
ますます鋭い目を向けられる。
「いやはや、急かされるのに飽きちゃいまして」
周囲の人から結婚しろと騒がれて久しい。彼らの口に戸を立てるものなど何も無い、名前は言われるがままハラスメントに苦しんできた。止めようにも止まらない、ならば実際に結婚してみてはどうかと考えついたのである。身寄りのない、家も堅くない男性を一人捕まえ、平身低頭婿になってくれ給与は出すとお願いするつもりである。生きるに困る人すらいるこの三国の世で、一人も見当たらないことがあろうか。男とは縁を結びながら友の如く召使の如く過ごしてもらうだけである。なに、金はある。人がふたり暮らしていけるだけの余裕も家もある。ただうるさい周りから婿という立場ひとつで守ってくれる男さえいてくれれば、あとは全部用意する、そのつもりだった。面倒事は御免である。能のある男に声を掛けて言い争いの火種を貰うことも、家柄の良い男に言い寄ってヒモ暮らしを拒否されることも、心を求めて恋愛ごっこの遣り繰りで泣いたり笑ったりすることも、全てが無駄だ。金で婿を買う。そして家事をしてもらう。噂は跳ね除けられ、心は軽く、身体も健康、誰もが望んだハッピーエンドを迎えるというわけだ。何より、名前には普通の結婚ができない理由が一つあった。
「俺とすればいいでしょう」
法正はなんの気無しに言った。書から目を離さない。今日の天気は晴れですね、その話題のトーンと全く変わらない声色だった。
「家事も近所付き合いも全部してもらいたいんですよ。法正さん、仕事辞めて家に入ってくれるんですか?」
「使用人を雇いますよ」
「いやそれだけじゃなくて。結婚すると夫婦の義務が色々発生するじゃないですか。そういう面倒なこと一切言わない人がいいんです」
「妻としての義務を要求しないと約束する」
「え、本当ですか?子供とかも作れないけどいいですか?」
「何処か身体に問題が?」
「いや、違いますけど」
「ならいい」
法正が本を閉じていよいよ目を合わせた。
「俺にしておけ。その辺の男よりは良い働きをしますよ」
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