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人生で初めて出来た友達。友達が待っている学校というものは、こんなにも高揚感が湧いて来るものなのか。初めて学校を楽しみだと思った。
予定の時間より少し早めに家を出て、学校に着き、教室に入ると3人はまだ居なかった。そこで気が付いた。彼らは不良だ。真面目に学校へ来るかどうかも怪しい。
来ないような気がして来た。毎日、会えるわけではないかもしれないと思うと少し気分が沈んだ。
自分の席について、教科書を取り出して授業の予習を始めた。周りからは、能面がまたやってるよ、勉強出来るアピールかよとヒソヒソ言っているのが聞こえた。別にそういうつもりじゃない。何故、こうも自分のする行動は周りに不快感を与えてしまうのだろう。自己嫌悪に陥りながらも、教科書の文字をひたすら目で追っていた。
「オウ!朝から頭痛くなるような事してんな」
そんな声がして顔を上げれば、そこには三ツ谷くんとぺーやんとパーちんが居た。3人ともちゃんと学校に来た…と少し嬉しく感じる。
「教科書なんて貰ったか?」
「家に届いてたろーよ」
「はぁ?オレん家にも届いてねーぞ」
「オマエらが見てねぇだけだろ」
そんな会話をしている3人を見ていれば、パチっと三ツ谷くんと目があった。そして、三ツ谷くんは「おはよ」と笑った。
「おはようございます」
深々と頭を下げて挨拶をすれば、「だから、堅ぇっての!」とぺーやんに言われてしまう。
どうすれば、友達と打ち解けられるのだろうと昨日の夜、必死に考えた。そこで思い付いた事がひとつあったのを思い出して、鞄の中からゴソゴソと探して、手に取りぺーやんに1つ渡した。
「これ、凄くよく効くのど飴です。喉痛いと声出しづらいですよね。良かったらどうぞ。パーちんと三ツ谷くんもどうぞ。美味しいですよ」
そう言って、2人にものど飴を差し出せば、三ツ谷くんとパーちんは吹き出して爆笑をして、ぺーやんは顔を真っ赤にしてワナワナと震えていた。
「地声だっつーの!」
「え…?」
「喉痛めてる訳じゃねぇわ!」
「ごめんなさい。てっきり、風邪かと」
「バカは風邪引かねぇって言うし、ぺーやんが風邪はねぇな」
「オイ、三ツ谷、表出ろや」
「やだね」
隣で怒りをあらわにしているぺーやんを無視して三ツ谷くんはのど飴をヒョイっと口に放り込んだ。
失敗してしまった。良かれと思ってした事だったが、どうやら見当違いだったようだ。人付き合いって難しい…
「本当だ、のど飴なのに美味いな」
「はい、それ、私のお気に入りなんです」
「へぇ。他に好きなの食いモンとかあんの?」
「切り干し大根ですかね」
私の答えに3人はまた笑った。何か変な事でも言っただろうか。切り干し大根だよね、あれ。別の言い方でもあるのかな…。
「切り干し大根なんて、中1の女の口から聞いた事ねぇよ!」
「そうなんですか?」
「オレは肉が好きだ」
「パーちんっぽいわ」
ぺーやんに散々の言われようだ。その人っぽい食べ物とはなんだろうか。確かに、パーちんはお肉好きそうなイメージはある。じゃあ、私はなんだろう。和食がダメなら洋風でいってみようか。
「アクアパッツァとか言えば良かったのでしょうか?」
「アク…?ンだよそれ」
「魚介類をトマトとオリーブオイルで煮込んだ、イタリアン料理です」
「いや、似合わねぇわ」
難しい…。私に似合う料理とはなんだろか。今晩、考えてみよう。
「三ツ谷は?」
「オレはキンピラかな」
「渋いですね」
「泉さんと一緒だな」
楽しそうに笑う彼は凄く輝いて見えた。人の笑顔ってこんなにキラキラしているんだ。それじゃあ、能面の私なんかと居たって気持ちが沈んでしまって、つまらないと言われるのも無理はない。
「そういやぁ、今日って早帰りだろ?放課後、カラオケ行かねぇ?」
「お、いいぞ」
「三ツ谷と泉さんは?」
「私は塾があるので、すみません」
「オレも晩メシの支度あるから、パス」
「夕ご飯、三ツ谷くんが作るんですか?」
「母ちゃん、仕事で居ねぇからさ」
「そうなんですね」
不良の見た目で家事をするんだ。エプロン姿を少し想像してみたが、ミスマッチな気がした。
「泉さんってカラオケ行ったことあんの?」
「ありません」
「人生損してるぜ?塾がない日にでもオレらと行こーぜ。オレの美声聞かせてやるよ」
「デスボイスじゃなくて?」
「ざけんなっ!そう言う、三ツ谷は歌えんのかよ!?」
「まぁ、それなりに」
「ほーん、それは楽しみだなぁ」
言い合いを始めてしまった2人を他所にパーちんは持参したであろう、ポテチを食べていた。
朝からポテチ…。そう思いながら、見ていると視線に気付いたのか、「欲しいのか?」と聞いてくるパーちんに首を横に振った。物欲しそうな顔に見えたのだろうか…。
「パーちんはよくカラオケに行くんですか?」
「ぺーやんによく連れられて」
「仲良いんですね」
「まぁな」
なんの躊躇いもなく、肯定できるって凄い。今の私じゃ、この3人と仲良しだねって言われて、躊躇わず肯定は出来ないだろう。まだ、自信がない。
いつか、そう言える日は来るのだろうか。
「泉さんはどっか行ってみたい所とかないの?」
「どこかですか?」
「ほら、ゲーセンとかカラオケとか」
「ゲームセンター、バッティングセンター、ボーリング、後、プリクラも撮ってみたいですし、パンケーキというのも食べてみたいです。生クリームどっさりのやつ」
「意外と女みてぇなヤツがやりてぇんだな」
「泉さんは女の子じゃん」
「まぁ、そーだけどよぉ。イメージ的に、神社巡りとか滝見に行ったり、山登りのイメージあんだよなぁ」
「はい、好きですよ。流石に山登りはしませんけど」
「いや、予想通りかよ」
歴史や自然に触れるのは好きだ。新しい知識を増やす事も出来るし、癒される。でも、たまには同級生達と同じように遊んでみたいと思うのも本音で…
今までは、そういう所に付き合ってくれる友達が居なかったから、行っていないだけだ。後は、勉強ばかりしてたと言うのもあるけど。
「パンケーキなら、オレ付き合うぞ」
「え゙…?パーちん、マジかよ?」
「ウメェじゃん」
「生クリームどっさりは…」
「それが良いんだろ?」
「理解出来ねぇよ…」
心底嫌そうな顔でそう言う、ぺーやんにパーちんは不思議そうな顔をしていた。
「オレも行こうかな」
「は?オマエまで?」
「パンケーキ食ってみてぇし」
「食った事、ねぇのかよ」
「男だけじゃ、あんな店入りづらくね?」
「まぁな」
今日も着々と事が進んでいく3人の会話を聞いている。こんな風にサラッと誘うものなんだね。断られたらどうしようとか思って、気軽に誘える気がしない。というか、コレって、私も行っていいんだよね…?3人で行くって話かな。
「泉さんの行きたい所、全部行こーぜ」
「全部…ですか?」
「中学生活始まったばかりだぜ?1つずつ、やりてぇ事、やって行こうよ」
「…ありがとうございます」
三ツ谷くんはとても優しい人、そして面倒見がとても良い人だ。三ツ谷くんのような性格になりたいと思った。初めて、こういう風になりたいって思った。ずっと、どうせ私には…って諦めてたから。
「その代わりさ、滝と神社巡り付き合ってよ」
「興味あるんですか?」
「うん。楽しそうだって思ったよ」
「じゃあ、是非、ご一緒に」
そう答えれば、三ツ谷くんはニッコリ笑った。
その笑顔を見たら、私もなんだか一緒に笑ってみたくなって、口角をキュッとあげてみる。
だけど、やっぱり、ぺーやんに「不気味」と言われてしまった。自然と笑えるようになるまでの道のりはまだまだ、長そうだ。
予定の時間より少し早めに家を出て、学校に着き、教室に入ると3人はまだ居なかった。そこで気が付いた。彼らは不良だ。真面目に学校へ来るかどうかも怪しい。
来ないような気がして来た。毎日、会えるわけではないかもしれないと思うと少し気分が沈んだ。
自分の席について、教科書を取り出して授業の予習を始めた。周りからは、能面がまたやってるよ、勉強出来るアピールかよとヒソヒソ言っているのが聞こえた。別にそういうつもりじゃない。何故、こうも自分のする行動は周りに不快感を与えてしまうのだろう。自己嫌悪に陥りながらも、教科書の文字をひたすら目で追っていた。
「オウ!朝から頭痛くなるような事してんな」
そんな声がして顔を上げれば、そこには三ツ谷くんとぺーやんとパーちんが居た。3人ともちゃんと学校に来た…と少し嬉しく感じる。
「教科書なんて貰ったか?」
「家に届いてたろーよ」
「はぁ?オレん家にも届いてねーぞ」
「オマエらが見てねぇだけだろ」
そんな会話をしている3人を見ていれば、パチっと三ツ谷くんと目があった。そして、三ツ谷くんは「おはよ」と笑った。
「おはようございます」
深々と頭を下げて挨拶をすれば、「だから、堅ぇっての!」とぺーやんに言われてしまう。
どうすれば、友達と打ち解けられるのだろうと昨日の夜、必死に考えた。そこで思い付いた事がひとつあったのを思い出して、鞄の中からゴソゴソと探して、手に取りぺーやんに1つ渡した。
「これ、凄くよく効くのど飴です。喉痛いと声出しづらいですよね。良かったらどうぞ。パーちんと三ツ谷くんもどうぞ。美味しいですよ」
そう言って、2人にものど飴を差し出せば、三ツ谷くんとパーちんは吹き出して爆笑をして、ぺーやんは顔を真っ赤にしてワナワナと震えていた。
「地声だっつーの!」
「え…?」
「喉痛めてる訳じゃねぇわ!」
「ごめんなさい。てっきり、風邪かと」
「バカは風邪引かねぇって言うし、ぺーやんが風邪はねぇな」
「オイ、三ツ谷、表出ろや」
「やだね」
隣で怒りをあらわにしているぺーやんを無視して三ツ谷くんはのど飴をヒョイっと口に放り込んだ。
失敗してしまった。良かれと思ってした事だったが、どうやら見当違いだったようだ。人付き合いって難しい…
「本当だ、のど飴なのに美味いな」
「はい、それ、私のお気に入りなんです」
「へぇ。他に好きなの食いモンとかあんの?」
「切り干し大根ですかね」
私の答えに3人はまた笑った。何か変な事でも言っただろうか。切り干し大根だよね、あれ。別の言い方でもあるのかな…。
「切り干し大根なんて、中1の女の口から聞いた事ねぇよ!」
「そうなんですか?」
「オレは肉が好きだ」
「パーちんっぽいわ」
ぺーやんに散々の言われようだ。その人っぽい食べ物とはなんだろうか。確かに、パーちんはお肉好きそうなイメージはある。じゃあ、私はなんだろう。和食がダメなら洋風でいってみようか。
「アクアパッツァとか言えば良かったのでしょうか?」
「アク…?ンだよそれ」
「魚介類をトマトとオリーブオイルで煮込んだ、イタリアン料理です」
「いや、似合わねぇわ」
難しい…。私に似合う料理とはなんだろか。今晩、考えてみよう。
「三ツ谷は?」
「オレはキンピラかな」
「渋いですね」
「泉さんと一緒だな」
楽しそうに笑う彼は凄く輝いて見えた。人の笑顔ってこんなにキラキラしているんだ。それじゃあ、能面の私なんかと居たって気持ちが沈んでしまって、つまらないと言われるのも無理はない。
「そういやぁ、今日って早帰りだろ?放課後、カラオケ行かねぇ?」
「お、いいぞ」
「三ツ谷と泉さんは?」
「私は塾があるので、すみません」
「オレも晩メシの支度あるから、パス」
「夕ご飯、三ツ谷くんが作るんですか?」
「母ちゃん、仕事で居ねぇからさ」
「そうなんですね」
不良の見た目で家事をするんだ。エプロン姿を少し想像してみたが、ミスマッチな気がした。
「泉さんってカラオケ行ったことあんの?」
「ありません」
「人生損してるぜ?塾がない日にでもオレらと行こーぜ。オレの美声聞かせてやるよ」
「デスボイスじゃなくて?」
「ざけんなっ!そう言う、三ツ谷は歌えんのかよ!?」
「まぁ、それなりに」
「ほーん、それは楽しみだなぁ」
言い合いを始めてしまった2人を他所にパーちんは持参したであろう、ポテチを食べていた。
朝からポテチ…。そう思いながら、見ていると視線に気付いたのか、「欲しいのか?」と聞いてくるパーちんに首を横に振った。物欲しそうな顔に見えたのだろうか…。
「パーちんはよくカラオケに行くんですか?」
「ぺーやんによく連れられて」
「仲良いんですね」
「まぁな」
なんの躊躇いもなく、肯定できるって凄い。今の私じゃ、この3人と仲良しだねって言われて、躊躇わず肯定は出来ないだろう。まだ、自信がない。
いつか、そう言える日は来るのだろうか。
「泉さんはどっか行ってみたい所とかないの?」
「どこかですか?」
「ほら、ゲーセンとかカラオケとか」
「ゲームセンター、バッティングセンター、ボーリング、後、プリクラも撮ってみたいですし、パンケーキというのも食べてみたいです。生クリームどっさりのやつ」
「意外と女みてぇなヤツがやりてぇんだな」
「泉さんは女の子じゃん」
「まぁ、そーだけどよぉ。イメージ的に、神社巡りとか滝見に行ったり、山登りのイメージあんだよなぁ」
「はい、好きですよ。流石に山登りはしませんけど」
「いや、予想通りかよ」
歴史や自然に触れるのは好きだ。新しい知識を増やす事も出来るし、癒される。でも、たまには同級生達と同じように遊んでみたいと思うのも本音で…
今までは、そういう所に付き合ってくれる友達が居なかったから、行っていないだけだ。後は、勉強ばかりしてたと言うのもあるけど。
「パンケーキなら、オレ付き合うぞ」
「え゙…?パーちん、マジかよ?」
「ウメェじゃん」
「生クリームどっさりは…」
「それが良いんだろ?」
「理解出来ねぇよ…」
心底嫌そうな顔でそう言う、ぺーやんにパーちんは不思議そうな顔をしていた。
「オレも行こうかな」
「は?オマエまで?」
「パンケーキ食ってみてぇし」
「食った事、ねぇのかよ」
「男だけじゃ、あんな店入りづらくね?」
「まぁな」
今日も着々と事が進んでいく3人の会話を聞いている。こんな風にサラッと誘うものなんだね。断られたらどうしようとか思って、気軽に誘える気がしない。というか、コレって、私も行っていいんだよね…?3人で行くって話かな。
「泉さんの行きたい所、全部行こーぜ」
「全部…ですか?」
「中学生活始まったばかりだぜ?1つずつ、やりてぇ事、やって行こうよ」
「…ありがとうございます」
三ツ谷くんはとても優しい人、そして面倒見がとても良い人だ。三ツ谷くんのような性格になりたいと思った。初めて、こういう風になりたいって思った。ずっと、どうせ私には…って諦めてたから。
「その代わりさ、滝と神社巡り付き合ってよ」
「興味あるんですか?」
「うん。楽しそうだって思ったよ」
「じゃあ、是非、ご一緒に」
そう答えれば、三ツ谷くんはニッコリ笑った。
その笑顔を見たら、私もなんだか一緒に笑ってみたくなって、口角をキュッとあげてみる。
だけど、やっぱり、ぺーやんに「不気味」と言われてしまった。自然と笑えるようになるまでの道のりはまだまだ、長そうだ。