場地さん
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一体、何故こうなったのだろう。壁に追いやられ、私の顔の横には手が置かれ、逃げ場がない。そして、目の前には様相の悪い場地くんの顔。
私、カツアゲでもされてるのでしょうか。
「これ、どういう状況?」
「あ?」
「あ?じゃなくて、この状況は何ですかって聞いてるの」
「見て分かんねぇの?」
「カツアゲ?」
「はぁ?どっからどう見ても壁ドンっつーやつだろーが」
「…はい?」
なんの事か分からず、聞き返す。壁ドンってアレだよね?少女漫画とかでよくある、あの胸きゅんするって言う、あの壁ドン。
「女は壁ドンっつーのが好きなんじゃねぇの?」
「好きじゃないって事が今、分かりました。場地くんがやると怖いし、早く退いて」
そう言えば、場地くんはスっと手を退かした。そのまま、離れてくれるかと思えば、今度は私の腰辺りの壁に彼の右足がドンッと置かれた。
「コレは…」
「足ドン」
「余計に怖いんですけど」
「はぁ?ンだよ、アイツら嘘つきやがって」
場地くんは不機嫌丸出しの顔で舌打ちをした。あぁ、コレは誰かに吹き込まれたヤツだと理解する。
確かに、場地くんが壁ドンだの足ドンだの知ってるとは思えない。そう言うのには疎そうだし。
「アイツらって誰?」
「マイキーとエマ」
マイキー…。私の頭の中にはあの欧米の某猫のキャラクターが頭に浮かんでしまう。分からないので、その猫の顔をした男の子をマイキーくんとしよう。
「エマって子は?」
「マイキーの妹」
あの某猫のキャラクターの顔にリボンを付けた女の子をエマちゃんとしよう。
…うん、怖い兄妹だ。見てみたいかもしれない、と少しだけ興味が湧いてしまった。
場地くんは、壁に置いていた足を退かして、頭をガシガシと掻きながらため息をついた。
「ドラケンがやってた時は上手くいったんだけどなぁ」
「ドラケンって?」
「あー、金髪辮髪のデクノボー」
金髪辮髪のデクノボーに場地くんは壁ドンされて、トキメいたのか。ほう、凄い趣味だ。
「場地くんって男の子でもアリなんだね…」
ドン引きしながら彼にそう言えば、心底イラッとしたような表情を見せ、私を睨み付けた。
「相手はオレじゃねぇよ!エマにだっつーの!」
さっきから、私がその方々を知ってるかのようにポンポンと名前を出してくるが、全く知らないし、分からない。そんな人たち、ウチの学校に居ただろうか。学校に金髪辮髪のデクノボーが居れば、普通気付くハズだ。頭をフル回転させるが、一向に分からないので考えるのはやめた。
「アイツは顔真っ赤にして喜んでたのに、何でテメェはビビってんだよ」
「え?まさかの逆ギレですか?」
突然、壁ドンやら足ドンをして来た挙句、最後は逆ギレ。本当にこの人は自分勝手だ。暴君で困ってしまう。呆れていると、場地くんは視線だけを私に寄越して、「オマエ、何したらオレに惚れんの?」と言った。
「何されても惚れませんけど」
「はぁ?」
「だって、場地くん、タイプじゃないし」
「オマエのタイプって?」
「まず、短髪の人が好き。それから、笑った顔が素敵で優しい人が好きなの」
「あっそ」
自分が聞いてきた癖に答えたら、つまんなそうな顔をして、ポケットに手を突っ込み、その場を立ち去って行った。その後ろ姿を見送りながら、本当に自分勝手!と心の中で文句を言った。
*************
放課後、園芸部の活動を終え、帰路につく。いつもと同じ道を歩いていると、金髪や銀髪の人が数人集まっているのが視界に入った。凄いなぁと見ていると、銀髪の人と目が合ってしまい、パッと目を逸らす。絡まれても嫌なので、下を向きながら静かに横を通り過ぎようとすると、「おい」と声を掛けられ、ドキッと胸が鳴った。さっき、目が合ってしまったからだろうかと、恐る恐る顔を上げ、声のした方を見れば、見知った顔で瞬時に体の力が抜けた。
「場地くん…」
「今、帰りかぁ?」
「うん。部活帰り」
「ふーん。オレ、コイツ送って来るわ」
「「「「は?」」」」
一緒に居た人達は一斉に驚きの声をあげて、挙句にはヒソヒソと「あの場地が?」と言っているのが聞こえる。すると、金髪の女の子が「あ!もしかして、昨日、場地が言ってた子!?」と声を上げて、キラキラと期待をしたような瞳で見つめて来た。
「えっと…なんの話しでしょうか?」
そう問いかけると、金髪の背の小さな男の子は「あぁ、噂の盆栽女?」と言った。
その言葉を聞いた瞬間に、場地くんをジロリと睨み付けた。何の話をしたのかは知らないけど、盆栽とか適当に説明したに違いない。本当に失礼な男だ。
「おいおい、盆栽って…。園芸部だろ?」
そう言ってくれたのは、銀髪の男の子。そして、金髪の背の高い人は「気を悪くさせちまったら、ごめんな」と謝罪してくれた。眉毛が途中で無かったり、頭にドラゴンの刺青が入ってたりと、完全に不良の見た目なのだが、優しそうな人たちだ。
多分、このドラゴンの刺青の人がドラケンさんなのはすぐに分かった。金髪辮髪のデクノボーだ。
後の3人はよく分からず、混乱していれば場地くんが「左から、エマ、マイキー、ドラケン、三ツ谷」
と教えてくれた。
ほぉ、エマちゃんとマイキーくんはあの某猫のキャラクターとは全然違って、可愛らしかった。2人ともお人形さんみたいで、勝手に不気味な兄妹だと想像して申し訳なくなった。
「で?で?壁ドンはどうだった!?」
「カツアゲかと思いました」
「足ドンは?」
「余計に恐怖でした」
興奮気味に聞いて来たエマちゃんとマイキーくんに素直な感想を伝えれば、2人ともガックリと肩を落としていた。
「難攻不落だねぇ…」
彼女がそう呟くと、場地くんは「ナンコーフラクって何だぁ?」と言っていて、三ツ谷さんとドラケンさんは呆れた顔で場地くんを見ていた。
「場地の何がダメなの?」
「何がって…」
「まず、タイプじゃないんだとよ」
「えぇ?どんな人がタイプなの?」
何故、初対面の人たちとはこう、私のタイプについて語り合わなければならないのだろうか。こういう、恋愛トークというものは、仲良くなってからするものじゃない?答えずらくて黙っていると、場地くんが勝手にペラペラと話してしまった。
それを聞いた、エマちゃんが「三ツ谷とか!?」と言ったので、三ツ谷さんを見てみる。うん、まぁ、短髪だね。笑った顔が素敵かどうかは分からないが、優しそうなのは確かだ。かと言って、三ツ谷さんがタイプかって言われたら、それはまた別問題のような気もする。
それを見て、マイキーくんが「場地、失恋だな」と小馬鹿にしたものだから、場地くんはマイキーくんに怒って取っ組み合いを始めてしまった。…もう、帰っていいだろうか。
「もう、帰りますね」
「場地が送って行くんじゃねぇのか?」
「だって、喧嘩してますし…」
「もう少しで終わるから、待っててやってよ」
ドラケンさんと三ツ谷さんにそう言われてしまったので、2人の喧嘩が終わるのを待つ事にした。2人とも激しいなぁと思って見ていれば、ドラケンさんが「アイツ、あぁ見えて良い奴だからさ」と言ってきた。ドラケンさんの方を見れば、彼はニッと笑った。
「本当は、アイツが良い奴な事知ってるんじゃねぇの?」
確かに、場地くんは自分勝手な男だけど、良い部分もあるのは知っている。悪い人じゃないのも分かっている。
「アイツの事、頼むわ」
いやいや、そんな爽やかな笑顔で頼むと言われましても。そう言おうと思った所でドラケンさんは、喧嘩してる2人に声を掛け、早く私を送ってやれと言ってくれた。2人はピタッと喧嘩を止めて、場地くんが私の元へ来て腕を掴んで、引き摺るように歩き出した。
「…オマエ、三ツ谷がタイプなのかよ?」
「いや、違うけど。三ツ谷さんとだったら、ドラケンさんの方が好き」
「はぁ!?ドラケンは短髪じゃねぇぞ!?」
「うん。でも、優しいし、笑った顔が素敵だった」
「…クソっ!!」
シンプルに感想を述べただけなのだが、場地くんは私がドラケンさんを好きと思ったようだ。
タイプと実際、好きになる人は違うって言うし、ドラケンさんを好きになる事はないと思う。
「よりによって、アイツかよ」と焦っている様子の場地くんが面白いのと、少しだけ可愛いと思ってしまったので、今は、否定せず黙っていようと思う。