場地さん
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場地くんが花壇に人の顔面を埋めて、花を潰してしまったあの日から約1ヶ月。その花は元気にスクスク成長している。
元気になったのだから、もう私との約束の水やりに来なくても良いんだけど場地くんは相変わらず、律儀に毎朝7:30に中庭にやって来る。
ほら、今日も来た。
「よぉ」
場地くんは眠たそうに目をゴシゴシと擦りながらやって来た。
「眠そうだね」
「あぁ、昨日、千冬と夜中まで遊んでたんだよ」
「千冬?」
「知らねぇ?」
「いや、知ってるよ。松野千冬でしょ」
知らないわけないじゃない。場地くんと同じであれだけ悪目立ちしていれば知りたくなくても耳に入ってくる。ただ、夜中まで遊ぶほど仲良いんだと思っただけで、知らなくて聞き返した訳では無い。でも、それはそうか。不良同士気が合うのだろう。
「アイツ、オレん所の副隊長」
「へぇ」
「興味無さそうだな」
「全くありませんね」
「千冬のヤツ、可哀想に」
「イヤイヤ、松野千冬も場地圭介も東京卍會も興味ないですけど?」
「ひでぇ奴。オマエは盆栽にしか興味ねーの?」
「盆栽じゃなくて、園芸よ!」
「どっちも一緒だろ」
「場地くんだって、私の趣味に興味ないじゃない」
「間違いねーや」
場地くんは八重歯をニッと見せながら笑ってそう言った。
場地くんは不良から花を守ってくれたし、花に水やりをしてくれるから嫌いじゃない。八重歯を見せて無邪気に笑う顔は可愛いと思うし、好きだ。でも、花の方が好きだけど。
そんな事をぼんやりと考えていると場地くんは「なぁ」と言って私を見ていた。
「なに?」
「どうやったら、興味持ってくれんの?」
「は?」
この人は何、言ってんだ?眉間にシワを寄せてしまった。
「私、暴走族とかよく分からないし、東卍に興味持つ事はないかと…」
「は?」
「は?」
場地くんは私の答えに目を見開き、聞き返して来たので私も思わず聞き返してしまった。
「東卍じゃなくて、オレに」
「はい?」
「だから、どうやったらオレに興味持ってくれんの?」
「どうって言われても…」
「1ミリも興味ねぇ?」
「いや、そんな事はないけど」
「なら、いーや」
場地くんは少し安心したように笑った。
何だろう、モヤモヤする。分かりそうで分からないこの感情。場地くんの笑顔を見たらソワソワして落ち着かなくなるし、朝、場地くんが来ると少し嬉しい。何で?と聞かれたら答えられないけど。
「わっかんないなぁ」
「なにが?」
「独り言だから気にしないで」
「独り言増えると年取った証拠って言うよな」
場地くんは意地悪そうにニヤリと笑った。
「場地くんって色んな笑い方するね」
「そうかぁ?」
「うん。見てて楽しい」
「意味わかんねー。オマエはもっと笑えばいいのに」
「面白ければ笑うよ」
「そりゃそうだ」
場地くんがまた笑ったので今度は私もつられて一緒に笑った。
「おっ、オマエ、やっぱり笑った顔の方がいーじゃん」
場地くんは私の頭にポンっと手を優しく乗せた。
突然の行動にポカーンと口を開けていると「どうしたぁ?」と不思議そうに顔を覗き込んできた。
「べ、別に何でもないっ!」
頭をポンなんて両親以外にされた事ないんですけどっ!?こんなにナチュラルに他人にやるもんなの?近頃の子は!?
「つーか、時間ヤべぇんじゃねーの?」
「はっ!?」
場地くんに指摘され、時計を見るとチャイムが鳴る2分前だった。
「うっそ!また遅刻!?場地くん、行こう!」
「オレはいいよ、遅刻したって」
「ダメ!行くよ!あぁ!また場地くんせいで遅刻だ〜!!」
「何でまたオレのせいなんだよ」
大騒ぎしながら、全く急ぐ気のない場地くんの腕を掴んで必死に引っ張っていると、何が面白いのかケタケタと笑っていた。
「もう、何が面白いのよ!早く走ってよ!」
そう言った瞬間にチャイムが鳴り響いた。
「あぁ!?完全に遅刻じゃん!」
そう叫べば、場地くんは更に笑った。
「もう!場地くんのバカー!!」
「もう、2人でサボればいーだろ」
「は?」
「ほら、行くぞぉ」
今度は場地くんが私の手を握って、引っ張って校舎とは反対方向へと歩き出す。
「ちょ、ちょ、ちょーーー!!!」
言葉にならない叫びをしながら抗おうとはしてみるが、適わずに引きづられて行った。
強引すぎる…!やっぱりこの人、やだっ!!
「離してぇぇぇ!!」
私の声が静かな中庭に響き渡った。
そして、そんな私たちを青空が優しく見ていた。