恋時雨
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きっちり夕方まで勉強をして、夕日が部屋に差し込んで来た頃、そろそろお開きにしようと言う事になった。
途中まで見送ろうと一緒に玄関まで行くと、リビングからお父さんが出て来て、「松野くん」と声を掛けた。ムスッとした表情をしているお父さんを見て、少しハラハラする。松野くんは真っ直ぐにお父さん目を見てしっかりと返事をしていた。
「また、バイクでも見にいつでも遊びに来なさい」
「…!はい!」
松野くんは嬉しそうに笑って頷き、頭を下げた。その様子に私もホッと胸をなでおろした。お父さんに「二度と来るな!」とか言われなくて良かったよ。
「娘をよろしく頼む」
「ちょ、お父さん!恥ずかしいからやめてよ!?」
「はい!」
「松野くんもはい!じゃないでしょ!」
恥ずかしくなり、慌てて松野くんの背中を押して逃げるように家から飛び出した。
「もう…お父さん変な事言わないでよね」
「まぁ、いーじゃん?大事にしてんだろ」
「いや、まぁ。そうだけどさぁ」
そんな話をしながら、2人で歩いていると松野くんは「今日は楽しかったな」と言った。
「久しぶりにバイクの話をした気がするわ」
「そうなの?」
「あぁ、いつもは場地さんと一緒に話してたんだ」
「場地さん?」
「オレの一番大事な人。屋上で話したろ?めちゃくちゃカッケェ人なんだよ」
「え?その人って男の人だったの!?大事な人とか言うから、てっきり元カノとかそう言う感じかと」
「はぁ?違ぇよ、場地さんはなぁ!」
それから、松野くんは場地さんとやらの話を永遠としていた。このままじゃ、朝日が昇ってしまいそうな勢いだ。
「うん、場地さんカッコイイね!」
「だろ!?オマエ、分かるヤツだな〜」
「ははっ…。ありがとう…」
松野くんの話は、その時場地さんがバーッと来て、ガッとやって相手がバタバタっと倒れて!みたいな擬音ばっかりだったから、イマイチ内容が分からなかった。だけど、そうでも言わないと永遠に話していられそうだったから、とりあえず合わせておいたのは、正解だったようだ。
そして、今、確信したのは松野くんは日本語が下手という事。これは、現代文も追加した方が良さそうだな。
「来週は現代文もやろうか」
「は?何、いきなり」
「なんとなく」
「変な奴」
それはあなただよと声を大にして言いたいよ。
そんな会話をしているうちに、住宅街を抜け、あと少しで大通りへ出る道まで来た。もうそろそろ、ここら辺でお見送りは良いかなと思っていると、松野くんはピタッと足を止めた。
「どうしたの?」
「まだ時間大丈夫か?」
「え、うん。大丈夫だけど」
「ちょっと、寄って行かね?」
指さしたのは、公園。公園と言っても、ベンチとブランコと滑り台しかない、本当に小さな公園だ。
一瞬、迷ったが断る理由も見つからなかったので、私が頷けば、松野くんは何も言わずに公園に入って行った。彼の背中を追いかけ、私も公園へと足を踏み入れた。私たちは横に並び、ベンチへ腰掛けた。
「平野さぁ、今、何考えてんの?」
「え?何が…?」
「オマエ、何か変。いつも変だけど、今日は特に変」
「失礼ね。どういう意味よ?」
「外に出た瞬間、すっげぇソワソワしてね?」
その言葉にビックリして、松野くんの顔を見る。彼は真剣な瞳で私をジッと見据えていた。綺麗な碧が私を捕え、一瞬たりとも目を離せない気がした。
何もかもを見透かしたような、透き通った瞳が少し怖くなる。
「まぁ、別に言いたくなきゃいーけどさ」
「…屋上で、誰も私を知らない所で一から始めたいって言ったの覚えてる?」
「うん。覚えてる」
「私、中学の同級生と会うの怖いんだよね。だから、県外の高校に通ってるし、地元だから何処で遭遇するかも分からないから、外に出るのも少し怖い」
「…なんで?」
その問いに中学の時の記憶を思い返す。思い返すだけで、寒気がして身体が震える。恐怖に飲み込まれそうになってしまう。目をギュッと瞑り、震える身体を抱き締めるように腕で抑えていれば、頭に何が触れる感触がした。ゆっくりと目を開け、顔をあげれば、松野くんが少し申し訳なさそうに眉を下げ、私の頭に手を乗せていた。
「何か、悪ぃ。聞いちゃイケない話だったな」
「ごめんね」
「オマエが謝る事じゃねーだろ」
「…うん。ありがと」
松野くんは小さく笑って、私の頭を乱暴に撫でて、髪をぐしゃっとさせた。
「ちょっと…!もっと、優しく出来ないの?」
「ははっ!鳥の巣みてぇ!」
「松野くんのせいじゃん!」
「似合ってんじゃん」
ニシシといたずらっ子のように笑う松野くんを見たら、毒気を抜かれたように肩の力が抜けた。
この時、松野くんになら、話しても大丈夫かもしれないと思ってしまった。一瞬でも、彼になら心を許せるってそう思えた。だって、松野くんの表情や声、仕草全てから、優しさを感じるから。松野くんからは、泣きたくなるくらいに優しい感情が伝わってくる。
「やっぱり、聞いて貰っても良い?」
「大丈夫なのか?」
目を軽く瞑って深呼吸してから、目をしっかりと開け松野くんの目を見た。やっぱり、彼は優しい瞳をしているのを見て、大丈夫だと思えた。
そして、私はゆっくりと口を開いた。
途中まで見送ろうと一緒に玄関まで行くと、リビングからお父さんが出て来て、「松野くん」と声を掛けた。ムスッとした表情をしているお父さんを見て、少しハラハラする。松野くんは真っ直ぐにお父さん目を見てしっかりと返事をしていた。
「また、バイクでも見にいつでも遊びに来なさい」
「…!はい!」
松野くんは嬉しそうに笑って頷き、頭を下げた。その様子に私もホッと胸をなでおろした。お父さんに「二度と来るな!」とか言われなくて良かったよ。
「娘をよろしく頼む」
「ちょ、お父さん!恥ずかしいからやめてよ!?」
「はい!」
「松野くんもはい!じゃないでしょ!」
恥ずかしくなり、慌てて松野くんの背中を押して逃げるように家から飛び出した。
「もう…お父さん変な事言わないでよね」
「まぁ、いーじゃん?大事にしてんだろ」
「いや、まぁ。そうだけどさぁ」
そんな話をしながら、2人で歩いていると松野くんは「今日は楽しかったな」と言った。
「久しぶりにバイクの話をした気がするわ」
「そうなの?」
「あぁ、いつもは場地さんと一緒に話してたんだ」
「場地さん?」
「オレの一番大事な人。屋上で話したろ?めちゃくちゃカッケェ人なんだよ」
「え?その人って男の人だったの!?大事な人とか言うから、てっきり元カノとかそう言う感じかと」
「はぁ?違ぇよ、場地さんはなぁ!」
それから、松野くんは場地さんとやらの話を永遠としていた。このままじゃ、朝日が昇ってしまいそうな勢いだ。
「うん、場地さんカッコイイね!」
「だろ!?オマエ、分かるヤツだな〜」
「ははっ…。ありがとう…」
松野くんの話は、その時場地さんがバーッと来て、ガッとやって相手がバタバタっと倒れて!みたいな擬音ばっかりだったから、イマイチ内容が分からなかった。だけど、そうでも言わないと永遠に話していられそうだったから、とりあえず合わせておいたのは、正解だったようだ。
そして、今、確信したのは松野くんは日本語が下手という事。これは、現代文も追加した方が良さそうだな。
「来週は現代文もやろうか」
「は?何、いきなり」
「なんとなく」
「変な奴」
それはあなただよと声を大にして言いたいよ。
そんな会話をしているうちに、住宅街を抜け、あと少しで大通りへ出る道まで来た。もうそろそろ、ここら辺でお見送りは良いかなと思っていると、松野くんはピタッと足を止めた。
「どうしたの?」
「まだ時間大丈夫か?」
「え、うん。大丈夫だけど」
「ちょっと、寄って行かね?」
指さしたのは、公園。公園と言っても、ベンチとブランコと滑り台しかない、本当に小さな公園だ。
一瞬、迷ったが断る理由も見つからなかったので、私が頷けば、松野くんは何も言わずに公園に入って行った。彼の背中を追いかけ、私も公園へと足を踏み入れた。私たちは横に並び、ベンチへ腰掛けた。
「平野さぁ、今、何考えてんの?」
「え?何が…?」
「オマエ、何か変。いつも変だけど、今日は特に変」
「失礼ね。どういう意味よ?」
「外に出た瞬間、すっげぇソワソワしてね?」
その言葉にビックリして、松野くんの顔を見る。彼は真剣な瞳で私をジッと見据えていた。綺麗な碧が私を捕え、一瞬たりとも目を離せない気がした。
何もかもを見透かしたような、透き通った瞳が少し怖くなる。
「まぁ、別に言いたくなきゃいーけどさ」
「…屋上で、誰も私を知らない所で一から始めたいって言ったの覚えてる?」
「うん。覚えてる」
「私、中学の同級生と会うの怖いんだよね。だから、県外の高校に通ってるし、地元だから何処で遭遇するかも分からないから、外に出るのも少し怖い」
「…なんで?」
その問いに中学の時の記憶を思い返す。思い返すだけで、寒気がして身体が震える。恐怖に飲み込まれそうになってしまう。目をギュッと瞑り、震える身体を抱き締めるように腕で抑えていれば、頭に何が触れる感触がした。ゆっくりと目を開け、顔をあげれば、松野くんが少し申し訳なさそうに眉を下げ、私の頭に手を乗せていた。
「何か、悪ぃ。聞いちゃイケない話だったな」
「ごめんね」
「オマエが謝る事じゃねーだろ」
「…うん。ありがと」
松野くんは小さく笑って、私の頭を乱暴に撫でて、髪をぐしゃっとさせた。
「ちょっと…!もっと、優しく出来ないの?」
「ははっ!鳥の巣みてぇ!」
「松野くんのせいじゃん!」
「似合ってんじゃん」
ニシシといたずらっ子のように笑う松野くんを見たら、毒気を抜かれたように肩の力が抜けた。
この時、松野くんになら、話しても大丈夫かもしれないと思ってしまった。一瞬でも、彼になら心を許せるってそう思えた。だって、松野くんの表情や声、仕草全てから、優しさを感じるから。松野くんからは、泣きたくなるくらいに優しい感情が伝わってくる。
「やっぱり、聞いて貰っても良い?」
「大丈夫なのか?」
目を軽く瞑って深呼吸してから、目をしっかりと開け松野くんの目を見た。やっぱり、彼は優しい瞳をしているのを見て、大丈夫だと思えた。
そして、私はゆっくりと口を開いた。