恋時雨
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
日曜日、約束の時間に藤沢駅で松野くんを待っていると、遠くから、バイクの甲高い音が聞こえた。
神奈川は昔から族が多かった為にその名残っていうのもあり、未だにそこら辺を族車が走っている。コールもバンバン鳴らしているし、夜中にパトカーと鬼ごっこしてる時もある。上手いならまだしも、下手くそなコールを夜な夜な聞かされる一般人の身にもなって欲しい。ただの騒音でしかないのだ。ドラえもんとかサザエさんとか夜中にコールしないで欲しい。本当にうるさいったらありゃしない。なんて、心の中で毒づいていると、その甲高い音は徐々に近づいている事に気付き、顔を上げる。すると、目の前に真っ黒なバイクが1台目の前に止まった。
おっと…?心で毒づいていた事が本当は口に出ていたか?まさか、聞こえてしまったのか?コレは輩に絡まれるやつか?と焦りを感じた。
バイクの持ち主は、バイクから降りてヘルメットを外した。
その持ち主の顔見た瞬間に身構えていた、力が一気に抜けた。
「よっ。待たせたな」
「いや、あの…は?」
あの馬鹿デカイ排気音のバイクの持ち主は松野くんだったらしい。「乗れよ」と顎で後ろを指してくるが、私は一歩も動けずにいた。
「早く乗れって」
「超絶嫌です」
「何で?」
「だって、無免でしょ?それに私のヘルメットないから、ノーヘルで捕まるの嫌」
「ヘルメットならオレの貸すし、免許なくても中学ん時から乗ってから慣れてるし、仮に追い掛けられても巻ける自信ある。大丈夫だ」
何が大丈夫なのだろうか。そんな真顔で言われても、なら大丈夫か!とはならない。そこまで、松野くんを信用していない。良い人なのは分かってはいるけどね。それとこれは、別の信用だ。
「…はぁ。頭痛い」
「風邪か?馬鹿は風邪引かねぇって言うのに珍しいな」
「松野くんのせいだから!それに、バカは風邪を引かないんじゃなくて、風邪を引いても気付かないだけじゃないの?」
「おぉ。なるほど。ホンモノの言うことは説得力あるな」
納得したようで、いい笑顔でいう松野くんの背中をパシンと叩く。「いいから、乗れよ」と促されるが、断固拒否した。乗れ、嫌だのやり取りを何度か繰り返した後、先に折れたのは松野くん。
「オマエ、マジで頑固だな」
「自分の命は自分で守るって小学校で習ったでしょ?」
「死なねぇっつーの」
ため息をつきながら、バイクを押し始めた。
「家、どっち?」
「こっち」
2人で並んで家までの道のりを歩く。駅から家までは歩いて5分も掛からないので、直ぐに到着した。
家に着くなり、松野くんは「すっげぇ!」と声をあげた。
「なに?」
「これ!誰の?」
「あぁ、お父さんのだよ」
松野くんがこれと言うのは、お父さんのバイク。
興奮しながらジロジロとそのバイクを見ていると、家の玄関が開き、お父さんが出て来た。私たち、いや、松野くんを見た瞬間にお父さんは目付きを鋭くさせた。
「…誰だ」
「同じクラスの松野 千冬くん。今日は、家で勉強しようと思って」
「そのバイクはキミのか?」
「はい。オレのです」
お父さんは、松野くんのバイクに近寄り、ジッと見詰め「ゴキか」と呟いた。
「兄ちゃんが手入れしてるのか?」
「あ、はい。オレがやってます」
「細かい所まで念入りに手入れしてるんだな」
「はい。命より大事なものなので」
「そうか」
家の父は気難しい所もあるので、2人のやり取りにドキドキしてしまう。その後、黙り込んでゴキを見ているお父さんに松野くんは声を掛けた。
「あの、このバイク、Z-IIですよね?」
「あぁ。昔、オレが乗ってたヤツだ」
「すっげぇ。マジでかっけぇ…!」
私の父は昔、暴走族で足を洗った後も結局、旧車會に所属していたらしい。現在は抜けてはいるらしいが、休日には昔の仲間たちとツーリングに行ったりしている。
バイク好きとしては、自分のバイクを褒められるのは嬉しいのだろうか。あの、お父さんが少し嬉しそうだ。
松野くんはキラキラした目でバイクを見つめていた。何がそんなに凄いのだろう。私にはよく分からない。
その後、お父さんはゆっくり見ていっていいぞと言い残し、その場を後にした。松野くんは父が去った後もずっとバイクを見て、すげぇ、かっけぇと声を漏らしていた。
「そんなに良いの?ソレ」
「バッカ!カワサキは男なら絶対ぇ、憧れんだぞ」
「へぇ」
「キョーミなさそうだな」
「えぇ、まぁ」
「勿体ねぇなぁ。オレ、旧車好きなんだよな。うわ〜、一日中ずっと眺めてられるな」
「勉強しに来たんでしょ」
「…分かってるっての」
名残惜しそうに後目で見ながらも、中に入って勉強を開始する事になった。
「で?わからない所は?」
「コレとコレと、後、アレとソレも。あ、コレも分かんねぇな」
「…ねぇ。それ全部だよね?」
「おう!全部分かんなかったわ」
爽やかな顔で言われても全然清々しくないし、寧ろ軽くイラッと来てしまったよ。松野さんよ。
「はぁ…。とりあえず、ソレ要点まとめたノートだから、これを見て頭に叩き込んで」
私の手からノートを受け取り、パラパラと捲って、おぉ…と小さな歓声をあげていた。
「すげぇ見やすいな、コレ。授業中にこんな綺麗にノート取ってんだな」
「それは、松野くん用に昨日作ったの。あげるから、家でもちゃんと勉強してよね」
「え、いいのか!?」
「うん」
「オマエ、良い奴だな!」
ニッと笑ってそう言う彼に私も釣られて、口角が上がってしまった。
「さっ!集中して勉強しよ!」
「おう!」
その後、何度も寝かけた松野くんをひっぱ叩いて起こしながら、夕方までみっちり勉強をした。
神奈川は昔から族が多かった為にその名残っていうのもあり、未だにそこら辺を族車が走っている。コールもバンバン鳴らしているし、夜中にパトカーと鬼ごっこしてる時もある。上手いならまだしも、下手くそなコールを夜な夜な聞かされる一般人の身にもなって欲しい。ただの騒音でしかないのだ。ドラえもんとかサザエさんとか夜中にコールしないで欲しい。本当にうるさいったらありゃしない。なんて、心の中で毒づいていると、その甲高い音は徐々に近づいている事に気付き、顔を上げる。すると、目の前に真っ黒なバイクが1台目の前に止まった。
おっと…?心で毒づいていた事が本当は口に出ていたか?まさか、聞こえてしまったのか?コレは輩に絡まれるやつか?と焦りを感じた。
バイクの持ち主は、バイクから降りてヘルメットを外した。
その持ち主の顔見た瞬間に身構えていた、力が一気に抜けた。
「よっ。待たせたな」
「いや、あの…は?」
あの馬鹿デカイ排気音のバイクの持ち主は松野くんだったらしい。「乗れよ」と顎で後ろを指してくるが、私は一歩も動けずにいた。
「早く乗れって」
「超絶嫌です」
「何で?」
「だって、無免でしょ?それに私のヘルメットないから、ノーヘルで捕まるの嫌」
「ヘルメットならオレの貸すし、免許なくても中学ん時から乗ってから慣れてるし、仮に追い掛けられても巻ける自信ある。大丈夫だ」
何が大丈夫なのだろうか。そんな真顔で言われても、なら大丈夫か!とはならない。そこまで、松野くんを信用していない。良い人なのは分かってはいるけどね。それとこれは、別の信用だ。
「…はぁ。頭痛い」
「風邪か?馬鹿は風邪引かねぇって言うのに珍しいな」
「松野くんのせいだから!それに、バカは風邪を引かないんじゃなくて、風邪を引いても気付かないだけじゃないの?」
「おぉ。なるほど。ホンモノの言うことは説得力あるな」
納得したようで、いい笑顔でいう松野くんの背中をパシンと叩く。「いいから、乗れよ」と促されるが、断固拒否した。乗れ、嫌だのやり取りを何度か繰り返した後、先に折れたのは松野くん。
「オマエ、マジで頑固だな」
「自分の命は自分で守るって小学校で習ったでしょ?」
「死なねぇっつーの」
ため息をつきながら、バイクを押し始めた。
「家、どっち?」
「こっち」
2人で並んで家までの道のりを歩く。駅から家までは歩いて5分も掛からないので、直ぐに到着した。
家に着くなり、松野くんは「すっげぇ!」と声をあげた。
「なに?」
「これ!誰の?」
「あぁ、お父さんのだよ」
松野くんがこれと言うのは、お父さんのバイク。
興奮しながらジロジロとそのバイクを見ていると、家の玄関が開き、お父さんが出て来た。私たち、いや、松野くんを見た瞬間にお父さんは目付きを鋭くさせた。
「…誰だ」
「同じクラスの松野 千冬くん。今日は、家で勉強しようと思って」
「そのバイクはキミのか?」
「はい。オレのです」
お父さんは、松野くんのバイクに近寄り、ジッと見詰め「ゴキか」と呟いた。
「兄ちゃんが手入れしてるのか?」
「あ、はい。オレがやってます」
「細かい所まで念入りに手入れしてるんだな」
「はい。命より大事なものなので」
「そうか」
家の父は気難しい所もあるので、2人のやり取りにドキドキしてしまう。その後、黙り込んでゴキを見ているお父さんに松野くんは声を掛けた。
「あの、このバイク、Z-IIですよね?」
「あぁ。昔、オレが乗ってたヤツだ」
「すっげぇ。マジでかっけぇ…!」
私の父は昔、暴走族で足を洗った後も結局、旧車會に所属していたらしい。現在は抜けてはいるらしいが、休日には昔の仲間たちとツーリングに行ったりしている。
バイク好きとしては、自分のバイクを褒められるのは嬉しいのだろうか。あの、お父さんが少し嬉しそうだ。
松野くんはキラキラした目でバイクを見つめていた。何がそんなに凄いのだろう。私にはよく分からない。
その後、お父さんはゆっくり見ていっていいぞと言い残し、その場を後にした。松野くんは父が去った後もずっとバイクを見て、すげぇ、かっけぇと声を漏らしていた。
「そんなに良いの?ソレ」
「バッカ!カワサキは男なら絶対ぇ、憧れんだぞ」
「へぇ」
「キョーミなさそうだな」
「えぇ、まぁ」
「勿体ねぇなぁ。オレ、旧車好きなんだよな。うわ〜、一日中ずっと眺めてられるな」
「勉強しに来たんでしょ」
「…分かってるっての」
名残惜しそうに後目で見ながらも、中に入って勉強を開始する事になった。
「で?わからない所は?」
「コレとコレと、後、アレとソレも。あ、コレも分かんねぇな」
「…ねぇ。それ全部だよね?」
「おう!全部分かんなかったわ」
爽やかな顔で言われても全然清々しくないし、寧ろ軽くイラッと来てしまったよ。松野さんよ。
「はぁ…。とりあえず、ソレ要点まとめたノートだから、これを見て頭に叩き込んで」
私の手からノートを受け取り、パラパラと捲って、おぉ…と小さな歓声をあげていた。
「すげぇ見やすいな、コレ。授業中にこんな綺麗にノート取ってんだな」
「それは、松野くん用に昨日作ったの。あげるから、家でもちゃんと勉強してよね」
「え、いいのか!?」
「うん」
「オマエ、良い奴だな!」
ニッと笑ってそう言う彼に私も釣られて、口角が上がってしまった。
「さっ!集中して勉強しよ!」
「おう!」
その後、何度も寝かけた松野くんをひっぱ叩いて起こしながら、夕方までみっちり勉強をした。