恋時雨
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しばらくの間、涙が止まらなくて泣き続けた間も松野くんは黙って隣に居てくれた。それだけでも凄く有難く感じたのだが、涙が止まった頃、松野くんは「その顔、何とかしてから教室来いよ」と言い残して屋上から出て行った。泣き面も酷いのに泣き終わった後の顔なんてもっと最悪だ。目は腫れて、鼻も真っ赤の不細工な顔になっている事だろう。それを見られなくて済む事は女子としてとても有難かった。意外と、そういう気遣い出来る人なのだろうか。それとも、単純に泣いてる女の隣に居るのが居づらかったのかもしれないが。
いかにも泣きましたと言わんばかりの顔で教室に戻ったらクラスメイトの視線が痛いだろう。松野くんの言う通り、少し落ち着いてから教室へ戻る事にした。
今更ながらだが、戻ったら先生に怒られるのでは…?とビクビクしながら教室へ戻ると、先生は私の顔を見るなり、「災難だったな」と肩に手を置き、哀れみの目を向けて来た。
何の事だろうと思っていれば、すまなかったと頭を下げた。
「えっ?何ですか?」
「松野と2人で廊下に立たせて悪かった。松野に無理矢理連れて行かれて、怖くて泣いたんだってな」
「えっとぉ…」
あながち間違いではないが、泣いた理由は違う。なんて答えれば良いか迷っていれば、再度先生が口を開いた。
「松野から全部聞いたよ」
「松野くんから…?」
「泣かせちゃったから、平野は戻ってくるの遅くなるって聞いてな。松野には罰として、放課後に資料室の掃除して貰うことにした」
「…そうですか」
こうして、私は松野くんのおかげで怒られずに済み、周りからも同情をされて平凡ライフは失われずに済んだ。これで良かったと思うけど、胸のモヤモヤは晴れず、その後の授業中は空席になった隣を何度も見てしまい、ずっと上の空になっていた。
**********
放課後、意を決して資料室へと向かい、中に入って見れば窓枠に腰を掛け、外を見ている松野くんを見つけた。声を掛けようとすると、ドアが開いた音で気付いたのか、こちらを振り返った。
「お、平野。どーした?」
「松野くん、私が先生に怒られないように庇ってくれたの?」
「無理矢理連れて行ったのは事実だろ?」
「まぁ、そうだけど」
「だから、別に庇ったとかじゃねーよ」
「そっか。でも、ありがとう」
「被害者のくせに礼を言うなんてオマエ、変だな」
「そうかもね」
私が笑えば、彼も同じように笑った。
「本当は松野くんのせいだけど、一応、庇ってもらったからお礼に手伝いに来たんだ。感謝してね」
「恩着せがましいのは良くねーぞ」
「じゃあ、手伝わない。帰る!」
「あー、嘘嘘。手伝わなくてもいーから、頼みを1つ聞いてくんねぇ?」
「頼み?変なのじゃなきゃいいけど」
松野くんは真剣な表情で真っ直ぐに私を見つめた。その真剣な眼差しに少しだけ、ドキッと胸が鳴った。「オレさ…」と緊張したような声色で言うので更に胸が鳴った。
「留年しそうだって言っただろ?勉強教えてくんねぇ?」
「…は?」
「マジでそろそろヤベぇ気がすんだよなぁ」
「確かに、キミの頭はヤベぇ」
「今のは聞かなかった事にしてやるから、頼むよ」
「1発殴っていいなら、いいよ」
「なんでだよ!?」
私のドキドキ返せ。勉強教えてくれって言うのに、そんな真剣な表情で間を作って言ってこないで欲しい。流石に、告白だとかは思っては無かったけど、勉強教えてくれなんて来るとも思わなかった。
「よし、帰ろうぜ」
「え?掃除は?」
「掃除とかよくわかんねーから、全部ここにあるもの捨てた。キレイになったろ?」
「はっ?バカじゃないの?」
「さっ、帰るぞ」
またもや、廊下の時のように腕を掴まれ、引き摺られるように教室を連れ出された。離せと抵抗はしてみるものの、なんの意味もなさない。掴む手は優しい癖に、強引なのがムカつく。松野くんが優しいのが掴まれた腕から伝わるから、強く振り解けないじゃん。
「バカだとは思ってたけど、ここまでバカだったとは!」
「オレは案外、頭いーんだぜ」
「どこが!?」
「オレは虎を書ける」
「あ、やっぱりバカだ。呆れて言葉が出ない」
「それは静かになって丁度いいな」
「はぁ!?」
「デケェ叫び声だな。動物園かと思ったわ」
「誰のせいだと…!!」
松野くんはゲラゲラと笑いながら「オマエ、バカだなぁ〜」と言った。松野くんにバカと言われたらもうこの世の終わりだよ。
「そんなバカに勉強見てもらう必要ないでしょ?自分でやりなよ」
「全部捨てたのバレたら怒られるだろうな〜。オレは別に良いとして、普通の生徒で通ってる平野はどうなるだろうなぁ?」
「松野くん…?何を…?」
「一緒に居たって目撃情報出たら、大変だろうな〜」
「ちょ、ちょっと待って。嘘でしょ?」
「今回はオマエから、ここに来たんだからな。もう庇ってやんねーぞ」
「わぁぁ!ごめんなさい、ごめんなさい!勉強見ますぅ!!」
「よし、決まりな」
してやったりと言わんばかりの顔でニヤッと笑う松野くんに一筋の汗が垂れるのが分かった。
完全に嵌められたと気付いた時にはもう遅い。
「女に二言はねぇよな?」
「…ないです」
こうして、私は松野くんの留年を避ける為の家庭教師に任命されてしまった。
いかにも泣きましたと言わんばかりの顔で教室に戻ったらクラスメイトの視線が痛いだろう。松野くんの言う通り、少し落ち着いてから教室へ戻る事にした。
今更ながらだが、戻ったら先生に怒られるのでは…?とビクビクしながら教室へ戻ると、先生は私の顔を見るなり、「災難だったな」と肩に手を置き、哀れみの目を向けて来た。
何の事だろうと思っていれば、すまなかったと頭を下げた。
「えっ?何ですか?」
「松野と2人で廊下に立たせて悪かった。松野に無理矢理連れて行かれて、怖くて泣いたんだってな」
「えっとぉ…」
あながち間違いではないが、泣いた理由は違う。なんて答えれば良いか迷っていれば、再度先生が口を開いた。
「松野から全部聞いたよ」
「松野くんから…?」
「泣かせちゃったから、平野は戻ってくるの遅くなるって聞いてな。松野には罰として、放課後に資料室の掃除して貰うことにした」
「…そうですか」
こうして、私は松野くんのおかげで怒られずに済み、周りからも同情をされて平凡ライフは失われずに済んだ。これで良かったと思うけど、胸のモヤモヤは晴れず、その後の授業中は空席になった隣を何度も見てしまい、ずっと上の空になっていた。
**********
放課後、意を決して資料室へと向かい、中に入って見れば窓枠に腰を掛け、外を見ている松野くんを見つけた。声を掛けようとすると、ドアが開いた音で気付いたのか、こちらを振り返った。
「お、平野。どーした?」
「松野くん、私が先生に怒られないように庇ってくれたの?」
「無理矢理連れて行ったのは事実だろ?」
「まぁ、そうだけど」
「だから、別に庇ったとかじゃねーよ」
「そっか。でも、ありがとう」
「被害者のくせに礼を言うなんてオマエ、変だな」
「そうかもね」
私が笑えば、彼も同じように笑った。
「本当は松野くんのせいだけど、一応、庇ってもらったからお礼に手伝いに来たんだ。感謝してね」
「恩着せがましいのは良くねーぞ」
「じゃあ、手伝わない。帰る!」
「あー、嘘嘘。手伝わなくてもいーから、頼みを1つ聞いてくんねぇ?」
「頼み?変なのじゃなきゃいいけど」
松野くんは真剣な表情で真っ直ぐに私を見つめた。その真剣な眼差しに少しだけ、ドキッと胸が鳴った。「オレさ…」と緊張したような声色で言うので更に胸が鳴った。
「留年しそうだって言っただろ?勉強教えてくんねぇ?」
「…は?」
「マジでそろそろヤベぇ気がすんだよなぁ」
「確かに、キミの頭はヤベぇ」
「今のは聞かなかった事にしてやるから、頼むよ」
「1発殴っていいなら、いいよ」
「なんでだよ!?」
私のドキドキ返せ。勉強教えてくれって言うのに、そんな真剣な表情で間を作って言ってこないで欲しい。流石に、告白だとかは思っては無かったけど、勉強教えてくれなんて来るとも思わなかった。
「よし、帰ろうぜ」
「え?掃除は?」
「掃除とかよくわかんねーから、全部ここにあるもの捨てた。キレイになったろ?」
「はっ?バカじゃないの?」
「さっ、帰るぞ」
またもや、廊下の時のように腕を掴まれ、引き摺られるように教室を連れ出された。離せと抵抗はしてみるものの、なんの意味もなさない。掴む手は優しい癖に、強引なのがムカつく。松野くんが優しいのが掴まれた腕から伝わるから、強く振り解けないじゃん。
「バカだとは思ってたけど、ここまでバカだったとは!」
「オレは案外、頭いーんだぜ」
「どこが!?」
「オレは虎を書ける」
「あ、やっぱりバカだ。呆れて言葉が出ない」
「それは静かになって丁度いいな」
「はぁ!?」
「デケェ叫び声だな。動物園かと思ったわ」
「誰のせいだと…!!」
松野くんはゲラゲラと笑いながら「オマエ、バカだなぁ〜」と言った。松野くんにバカと言われたらもうこの世の終わりだよ。
「そんなバカに勉強見てもらう必要ないでしょ?自分でやりなよ」
「全部捨てたのバレたら怒られるだろうな〜。オレは別に良いとして、普通の生徒で通ってる平野はどうなるだろうなぁ?」
「松野くん…?何を…?」
「一緒に居たって目撃情報出たら、大変だろうな〜」
「ちょ、ちょっと待って。嘘でしょ?」
「今回はオマエから、ここに来たんだからな。もう庇ってやんねーぞ」
「わぁぁ!ごめんなさい、ごめんなさい!勉強見ますぅ!!」
「よし、決まりな」
してやったりと言わんばかりの顔でニヤッと笑う松野くんに一筋の汗が垂れるのが分かった。
完全に嵌められたと気付いた時にはもう遅い。
「女に二言はねぇよな?」
「…ないです」
こうして、私は松野くんの留年を避ける為の家庭教師に任命されてしまった。