恋時雨
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テストに向けて着々と勉強を進めている私たち。テスト当日まで明後日というところまで迫ってきた。
先月から学校でも話すようになったので、週末だけではなく、放課後も教室で一緒に勉強している。
松野くんは、頭悪いのではなく、やれば出来る人だった。今まで、やらなかっただけだ。集中力もあるし真剣に取り組めばすぐに理解して問題を解いていた。高校にもなれば中学のように5教科だけではなく、9教科に項目は増えた。それでも、テスト範囲は大体頭に入ったようで、私が作った小テストも難なくクリアしていた。
「松野くん、ここまで出来るなら何で留年しそうになるの?そもそも、うちの学校って赤点取っても補習とか救済処置あるよね?」
「あー、バックれた。そしたら、次のテスト赤点取ったら即留年だってさ」
「それは、松野くんが悪いね」
「間違いねぇな」
ケラケラ笑う彼は本当に反省はしているのだろうか。
「でも、今回のテストは大丈夫そうだね?」
「おう。それに、デートがかかってるし」
「は?」
「は?」
驚きのワードが飛び出たものだから、思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。彼もその声に驚いたのか同じような声をあげた。2人で顔を見合わせて、間違い探しを始める。
「えっと、デート?」
「忘れてんのかよ?留年回避したらどっか行くって約束したろ?」
「うん。それはした。でも、デートって…」
「男女が2人で出掛けるならそれはもうデートだろ?」
その答えに無言でみつめる。ただただ、みつめる。
「ンだよ…。その顔やめろ!」
「その顔とは?」
「ドン引きした顔してんじゃねーよ!」
「あぁ、ごめん。心の声が顔に出ちゃったみたい」
「そんなに嫌かよ」
「デートのつもりは1ミリもなかったので。あくまでお礼でしょ?お、れ、い!」
「…ウッス」
圧を掛けた言い方をすれば、松野くんは小さく頷いた。本来なら自分に好意を抱いている人と2人で出掛けるというのはいかがなものかと思う。私は、彼の気持ちに応えられない。今はまだ、恋は怖いものだと思うし、愛なんて言語道断。専ら信用していない。そんな心境で応えられる筈もない。
だから、松野くんの好きは場地さんへの好きと同じが良いって思ってしまう。そうすれば、松野くんは友達で居てくれる。彼が離れていくのも嫌だという、自分勝手な感情で逃げているのは分かっている。だけど、今はこのままが良いって思うんだ。
「どっか行きてぇとこあんの?」
「いや、私は特に。松野くんは?」
「んー、江ノ島とか?」
「定番のデートスポット…」
「だから、その顔やめろっての!!」
また顔に出てしまったようだ。いけない、いけない。せめて、笑顔でかわせるくらいにしないとですね。ニコッと笑えば、今度は「胡散臭ぇ」と言われてしまった。
「何で江ノ島?」
「平野の生まれた場所を見てみたい。平野が見てきた景色や空気を感じれば、少しでもオマエの事分かるかなって」
「そんな良い場所ではないよ。嫌な思い出しかないし」
「だからだよ」
「…どういう事?」
「楽しい思い出に塗り替えられたらいいなって」
優しい声、表情でそんな風に言われてしまうと、無性に泣きたくなる。私の為にそんな事言ってくれる人は誰も居なかったから。
「…言っとくけど、私、江ノ島で生まれた訳じゃないからね?」
泣きそうになるのを堪えていると、どうしても口は可愛げのない事を言ってしまうようだ。
まぁ、事実なのだが。
「は?江ノ電走ってたじゃん。江ノ島の中を走ってるのを江ノ電って言うんじゃねーの?」
「違います。藤沢駅から鎌倉駅まで走ってるよ?」
「…マジかよ」
今までずっと勘違いしていたのが恥ずかしいのか、江ノ島じゃなかった事が残念だったのか分からないが、彼は項垂れていた。
「まぁ、江ノ島も藤沢市だから地元って言ったら地元なのかも…」
「だろ!?そうだと思ったんだよ!」
オレ、間違ってねぇだろ!?と言いたげな表情に思わず笑ってしまった。すると、松野くんは恥ずかしそうに睨み付けて来た。
「笑ってんじゃねーよ」
「ごめん、ごめん。でも、ありがとね。私の為にそこまで考えてくれて」
「…おう」
「私、江ノ島行きたい」
「本当か?」
「うん。松野くんとなら良い思い出に出来そう。でも、まずは目の前のテストを何とかしなきゃね」
「余裕」
ニッと笑う彼に私も一緒になって口元が緩む。
「うっし。まずは、勉強頑張んねぇとな」
「うん。あ、そこ違うよ」
「え?マジ?」
「って、そっちも違うし!」
「はぁー?嘘だろ!?」
「…ちょっと不安になってきた」
「大丈夫、大丈夫。多分」
「はぁ~、やり直し!」
この後も、日が暮れるまで松野くんに勉強を教えた。
先月から学校でも話すようになったので、週末だけではなく、放課後も教室で一緒に勉強している。
松野くんは、頭悪いのではなく、やれば出来る人だった。今まで、やらなかっただけだ。集中力もあるし真剣に取り組めばすぐに理解して問題を解いていた。高校にもなれば中学のように5教科だけではなく、9教科に項目は増えた。それでも、テスト範囲は大体頭に入ったようで、私が作った小テストも難なくクリアしていた。
「松野くん、ここまで出来るなら何で留年しそうになるの?そもそも、うちの学校って赤点取っても補習とか救済処置あるよね?」
「あー、バックれた。そしたら、次のテスト赤点取ったら即留年だってさ」
「それは、松野くんが悪いね」
「間違いねぇな」
ケラケラ笑う彼は本当に反省はしているのだろうか。
「でも、今回のテストは大丈夫そうだね?」
「おう。それに、デートがかかってるし」
「は?」
「は?」
驚きのワードが飛び出たものだから、思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。彼もその声に驚いたのか同じような声をあげた。2人で顔を見合わせて、間違い探しを始める。
「えっと、デート?」
「忘れてんのかよ?留年回避したらどっか行くって約束したろ?」
「うん。それはした。でも、デートって…」
「男女が2人で出掛けるならそれはもうデートだろ?」
その答えに無言でみつめる。ただただ、みつめる。
「ンだよ…。その顔やめろ!」
「その顔とは?」
「ドン引きした顔してんじゃねーよ!」
「あぁ、ごめん。心の声が顔に出ちゃったみたい」
「そんなに嫌かよ」
「デートのつもりは1ミリもなかったので。あくまでお礼でしょ?お、れ、い!」
「…ウッス」
圧を掛けた言い方をすれば、松野くんは小さく頷いた。本来なら自分に好意を抱いている人と2人で出掛けるというのはいかがなものかと思う。私は、彼の気持ちに応えられない。今はまだ、恋は怖いものだと思うし、愛なんて言語道断。専ら信用していない。そんな心境で応えられる筈もない。
だから、松野くんの好きは場地さんへの好きと同じが良いって思ってしまう。そうすれば、松野くんは友達で居てくれる。彼が離れていくのも嫌だという、自分勝手な感情で逃げているのは分かっている。だけど、今はこのままが良いって思うんだ。
「どっか行きてぇとこあんの?」
「いや、私は特に。松野くんは?」
「んー、江ノ島とか?」
「定番のデートスポット…」
「だから、その顔やめろっての!!」
また顔に出てしまったようだ。いけない、いけない。せめて、笑顔でかわせるくらいにしないとですね。ニコッと笑えば、今度は「胡散臭ぇ」と言われてしまった。
「何で江ノ島?」
「平野の生まれた場所を見てみたい。平野が見てきた景色や空気を感じれば、少しでもオマエの事分かるかなって」
「そんな良い場所ではないよ。嫌な思い出しかないし」
「だからだよ」
「…どういう事?」
「楽しい思い出に塗り替えられたらいいなって」
優しい声、表情でそんな風に言われてしまうと、無性に泣きたくなる。私の為にそんな事言ってくれる人は誰も居なかったから。
「…言っとくけど、私、江ノ島で生まれた訳じゃないからね?」
泣きそうになるのを堪えていると、どうしても口は可愛げのない事を言ってしまうようだ。
まぁ、事実なのだが。
「は?江ノ電走ってたじゃん。江ノ島の中を走ってるのを江ノ電って言うんじゃねーの?」
「違います。藤沢駅から鎌倉駅まで走ってるよ?」
「…マジかよ」
今までずっと勘違いしていたのが恥ずかしいのか、江ノ島じゃなかった事が残念だったのか分からないが、彼は項垂れていた。
「まぁ、江ノ島も藤沢市だから地元って言ったら地元なのかも…」
「だろ!?そうだと思ったんだよ!」
オレ、間違ってねぇだろ!?と言いたげな表情に思わず笑ってしまった。すると、松野くんは恥ずかしそうに睨み付けて来た。
「笑ってんじゃねーよ」
「ごめん、ごめん。でも、ありがとね。私の為にそこまで考えてくれて」
「…おう」
「私、江ノ島行きたい」
「本当か?」
「うん。松野くんとなら良い思い出に出来そう。でも、まずは目の前のテストを何とかしなきゃね」
「余裕」
ニッと笑う彼に私も一緒になって口元が緩む。
「うっし。まずは、勉強頑張んねぇとな」
「うん。あ、そこ違うよ」
「え?マジ?」
「って、そっちも違うし!」
「はぁー?嘘だろ!?」
「…ちょっと不安になってきた」
「大丈夫、大丈夫。多分」
「はぁ~、やり直し!」
この後も、日が暮れるまで松野くんに勉強を教えた。