1話
名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今日は、人生で一番最悪な日かもしれない。
今までは教卓の前、つまり最前列のど真ん中の席にいた。
そして、待ちに待った席替え。幸運の女神が私に微笑んでくれたと思った。窓際から2列目の一番後ろの席をゲットした。
私は上機嫌で机を動かす。机を指定の位置に置いて隣は誰かと見てみると、そこには衝撃的な人物が目に飛び込んで来た。
あぁ、女神様。なんて事だ。なんて、残酷なんだ。
私は、天を見つめながらそんな事を心の中で呟く。
そう、私の隣はなんと、不良で有名な三ツ谷隆だったのだ。彼は、暴走族だと噂で聞いた事がある。バイクで暴走したり、喧嘩したりは当たり前の日常茶飯事。
そんな人が隣りの席なんて、カツアゲされるか、パシリか機嫌が悪い時にはサンドバッグ代わりにされるんじゃないかとか、嫌な考えが頭を過る。
はぁ…どれも最悪。ついてないなぁ。
そんな風に思いながらも、隣の三ツ谷くんの横顔を眺めて見る。
よくよく見れば、端正な顔立ち、長い睫毛、くっきりとした二重。そして、綺麗な銀髪が窓から差し込む日差しに照らされて輝いて見えた。
同じクラスだったが、今まで怖くてマジマジと見た事はなかったけれど、美少年という言葉が似合う顔立ちをしている事を知った。
私が思わず凝視してしまったせいで、その視線が居心地悪かったのか「何?」とチラッと私を見て低い声でそう聞かれてしまった。
「い、いえ!なんでもありません!」
慌てて顔の前で手をブンブンと横に振って否定すれば「じゃあ、そんな見んなよ」と言われてしまった。
その瞬間に、さぁっと血の気が引く感覚がした。
これは、ガン飛ばしてんじゃねぇよって思われてるの?いいえ、ガン飛ばしてなんかいません。
なんて、怖くて言葉に出来ず、ただ一人、ひっそりとため息を漏らす事しか出来なかった。
次の席替えの時まで、ひたすら静かに石のように過ごす事を心に決め、早く次の席替えが来るようにと心の中で女神様に祈りを捧げた。
こうして、席替えによって最悪な学校生活がスタートしたのだった。
*
次の日の朝、教室に着くともう既に三ツ谷くんは来ていた。不良なのに朝から来てるいるとは、珍しいな。だなんて思っていれば、三ツ谷くんが私の方を見て来た事によってバッチリ目が合ってしまった。
また見てんじゃねぇよって言われるかもしれない。睨んでんじゃねーよって思われてるのかもと思ったが、バッチリ目が合ってしまったのに、無視する訳にもいかず、引き攣った笑顔を貼り付けて話し掛けた。
「お、おはよう」
「おはよ」
とりあえず、しどろもどろになりながらも三ツ谷くんに挨拶をしてみると意外にも普通に挨拶を返してくれた。驚きで固まっていると、三ツ谷くんは私の前まで来て、ポケットからスっと何かを取り出した。
「これ、名前さんの?」
そう言って、見せて来たのは昨日、学校に持って来ていたはずの私のお気に入りのこびとづかんのハンカチだった。
「あ、それ私の!」
「やっぱり。昨日、机の横に落ちてたから名前さんのだと思ったんだよね」
「拾ってくれたんだ。ありがとう!」
お礼を言ってから受け取るとハンカチが妙に綺麗になっている事に気づいた。
「あれ、なんか綺麗じゃない?このハンカチ」
「あぁ、一応洗濯してアイロン掛けておいたから」
「え?三ツ谷くんが!?」
「そうだけど?」
「案外、家庭的なの…?」
「案外って失礼だな」
少しだけ頬を赤く染めて苦笑いを漏らして、頭を人差し指で掻きながら、そう言う三ツ谷くんはなんだか可愛く見えてしまう。
「洗濯とアイロンまでありがとう」
「別にそのくらいなんて事ねーよ」
なんて事ないなんて、サラッと言ってしまう辺り、なんだか噂とは違って本当は優しかったりするのかもしれないと、徐々に思い始めて来ていた。
「てか、そのキャラ何?キモくない?」
「え?可愛いでしょ?カクレモモジリ」
「いやいや、隠れきれてなくね?その顔面。主張激しいし」
「そう言う、由来じゃないと思うけど…」
「そうなの?」
「ちなみに、私の最推しはこれよ。リトルハナガシラ」
こびとづかんのファンでもある私は、この話題を振ってくれた事が嬉しくて、ついつい力説してしまう。
今日持って来ていた、リトルハナガシラのハンカチを取り出して三ツ谷くんに見せつけると、彼は若干引きつった表情を見せた。
「趣味悪っ…」
「え?嘘でしょ?」
私が信じられないと言わんばかりの表情を見せれば、三ツ谷くんは顔をクシャッとしながら、声を上げて笑った。
「おもしれぇヤツ!」
そう言って、ケラケラと笑い声を上げる彼を見ているとやっぱり、噂とは違うと思ってしまう。
人は見かけによらないとは、こういう事だろう。怖いと思っていた暴走族の三ツ谷隆は本当は家庭的で顔をクシャクシャにしてよく笑う人だと言うことを今日、知った。
今までは教卓の前、つまり最前列のど真ん中の席にいた。
そして、待ちに待った席替え。幸運の女神が私に微笑んでくれたと思った。窓際から2列目の一番後ろの席をゲットした。
私は上機嫌で机を動かす。机を指定の位置に置いて隣は誰かと見てみると、そこには衝撃的な人物が目に飛び込んで来た。
あぁ、女神様。なんて事だ。なんて、残酷なんだ。
私は、天を見つめながらそんな事を心の中で呟く。
そう、私の隣はなんと、不良で有名な三ツ谷隆だったのだ。彼は、暴走族だと噂で聞いた事がある。バイクで暴走したり、喧嘩したりは当たり前の日常茶飯事。
そんな人が隣りの席なんて、カツアゲされるか、パシリか機嫌が悪い時にはサンドバッグ代わりにされるんじゃないかとか、嫌な考えが頭を過る。
はぁ…どれも最悪。ついてないなぁ。
そんな風に思いながらも、隣の三ツ谷くんの横顔を眺めて見る。
よくよく見れば、端正な顔立ち、長い睫毛、くっきりとした二重。そして、綺麗な銀髪が窓から差し込む日差しに照らされて輝いて見えた。
同じクラスだったが、今まで怖くてマジマジと見た事はなかったけれど、美少年という言葉が似合う顔立ちをしている事を知った。
私が思わず凝視してしまったせいで、その視線が居心地悪かったのか「何?」とチラッと私を見て低い声でそう聞かれてしまった。
「い、いえ!なんでもありません!」
慌てて顔の前で手をブンブンと横に振って否定すれば「じゃあ、そんな見んなよ」と言われてしまった。
その瞬間に、さぁっと血の気が引く感覚がした。
これは、ガン飛ばしてんじゃねぇよって思われてるの?いいえ、ガン飛ばしてなんかいません。
なんて、怖くて言葉に出来ず、ただ一人、ひっそりとため息を漏らす事しか出来なかった。
次の席替えの時まで、ひたすら静かに石のように過ごす事を心に決め、早く次の席替えが来るようにと心の中で女神様に祈りを捧げた。
こうして、席替えによって最悪な学校生活がスタートしたのだった。
*
次の日の朝、教室に着くともう既に三ツ谷くんは来ていた。不良なのに朝から来てるいるとは、珍しいな。だなんて思っていれば、三ツ谷くんが私の方を見て来た事によってバッチリ目が合ってしまった。
また見てんじゃねぇよって言われるかもしれない。睨んでんじゃねーよって思われてるのかもと思ったが、バッチリ目が合ってしまったのに、無視する訳にもいかず、引き攣った笑顔を貼り付けて話し掛けた。
「お、おはよう」
「おはよ」
とりあえず、しどろもどろになりながらも三ツ谷くんに挨拶をしてみると意外にも普通に挨拶を返してくれた。驚きで固まっていると、三ツ谷くんは私の前まで来て、ポケットからスっと何かを取り出した。
「これ、名前さんの?」
そう言って、見せて来たのは昨日、学校に持って来ていたはずの私のお気に入りのこびとづかんのハンカチだった。
「あ、それ私の!」
「やっぱり。昨日、机の横に落ちてたから名前さんのだと思ったんだよね」
「拾ってくれたんだ。ありがとう!」
お礼を言ってから受け取るとハンカチが妙に綺麗になっている事に気づいた。
「あれ、なんか綺麗じゃない?このハンカチ」
「あぁ、一応洗濯してアイロン掛けておいたから」
「え?三ツ谷くんが!?」
「そうだけど?」
「案外、家庭的なの…?」
「案外って失礼だな」
少しだけ頬を赤く染めて苦笑いを漏らして、頭を人差し指で掻きながら、そう言う三ツ谷くんはなんだか可愛く見えてしまう。
「洗濯とアイロンまでありがとう」
「別にそのくらいなんて事ねーよ」
なんて事ないなんて、サラッと言ってしまう辺り、なんだか噂とは違って本当は優しかったりするのかもしれないと、徐々に思い始めて来ていた。
「てか、そのキャラ何?キモくない?」
「え?可愛いでしょ?カクレモモジリ」
「いやいや、隠れきれてなくね?その顔面。主張激しいし」
「そう言う、由来じゃないと思うけど…」
「そうなの?」
「ちなみに、私の最推しはこれよ。リトルハナガシラ」
こびとづかんのファンでもある私は、この話題を振ってくれた事が嬉しくて、ついつい力説してしまう。
今日持って来ていた、リトルハナガシラのハンカチを取り出して三ツ谷くんに見せつけると、彼は若干引きつった表情を見せた。
「趣味悪っ…」
「え?嘘でしょ?」
私が信じられないと言わんばかりの表情を見せれば、三ツ谷くんは顔をクシャッとしながら、声を上げて笑った。
「おもしれぇヤツ!」
そう言って、ケラケラと笑い声を上げる彼を見ているとやっぱり、噂とは違うと思ってしまう。
人は見かけによらないとは、こういう事だろう。怖いと思っていた暴走族の三ツ谷隆は本当は家庭的で顔をクシャクシャにしてよく笑う人だと言うことを今日、知った。
1/1ページ